第24話隣の田中珈琲豆店で試食

残りのコッペパンは、隣の田中珈琲豆店で試食することになった。


店主の田中保も、コッペパンを口に入れる。

そして笑顔。

「さすがだね、孝太君、親父さんの味に近い」

「充分に売り物になる」


柿崎孝太は、苦笑。

「お世辞が過ぎます、試作品です」


しかし、田中保はコッペパンを切って、店に来ていた客にも試食をさせる。

「どうですか、隣の柿崎パン屋さんのご子息が焼きました」


試食をした客の評判も好評。

「うん、いいね、懐かしい、パン屋さんが休みになっていて心配していたよ」

「私も子供の頃から通っていたから、再開してくれるといいなあと」

「ご子息なら、期待できるかなあ」


柿崎孝太は、その客たちの顔に、少しだけ記憶がある。

「近所の人たちか」

「もしかすると、試食のために、わざわざ呼んでいた?」

しかし、そんなことを聞くことは出来ない。

だから、ただ「ありがとうございます」と返すのみ。


田中祥子は柿崎孝太に笑いかける。

「みんな期待しているんだよ」


柿崎孝太は、昔馴染みの客たちの前なので、頭を下げる以外にはなかった。


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