第16話柿崎孝太の戸惑いとフランス語会話

柿崎孝太は、杉浦美和にはかまわず、早速、父の仕入れ先を調べ出す。

「小麦粉、塩、卵・・・」


しかし、途中で戸惑った。

「ノートには仕入先が書いてあるけれど」

「原則的には同じ店から仕入れるべき、同じ味を出すのなら」

「でも、何も考えず、盲目的に同じ店から同じ材料を仕入れるのは・・・」


柿崎孝太は腕組みをして考える。

「それと、パン屋をすぐに再開できるわけでもないのに、届けろというのも、不遜な態度」

「こちらから、仕入先に伺って、親父のお礼をする、それからでもいいかも」

「パン焼窯の掃除も店の掃除も必要、ずっと使っていないから」

「店の帳簿や、確定申告も見ないと、仕入れの量もわからない」

「勢いで再開するのはリスクが高過ぎる」

「少し冷静にならないといけない」


ブツブツと悩み始めた柿崎孝太の様子を見ていた杉浦美和は、ようやく口を出す。

「で、孝太君、どうするの?」


柿崎孝太は、ようやく我に返った。

そして手に取ったのは、ホウキと塵取り。

「まずは、店内部の掃除かな」


その柿崎孝太に驚いたのは、田中祥子。

「・・・あ・・・それは、そうね・・・」

「手伝うよ」


しかし、杉浦美和は気に入らない。

「田中さん、お店はいいの?」

「ほったらかし?」


田中祥子はムッとした顔。

「ご心配なさらずに、父がおりますから」


柿崎孝太は田中祥子の言葉に反応した。

「・・・そうだった」

「お父さんにもご挨拶をしないと」

「それと、ここでパン屋をやるとなると、ご近所にも」


杉浦美和がまたしても焦っていると、柿崎孝太のスマホが鳴った。

柿崎孝太は電話をかけて来た相手を見て、驚いた顔。

そのまま、フランス語で会話を始めている。

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