第12話ホテル側の対応

杉浦美和は、夜の9時に柿崎孝太のアパートを後にした。

「妹さんの入院で準備するものは任せて」

「私は明日の8時半にここに寄るから」

「寝ていないで、起きていなかったらぶっとばす」


柿崎孝太は、やっと苦笑。

「ああ・・・ごめん」と言葉を返すのが精一杯。



杉浦美和が去った後、柿崎孝太は、深いため息。

「着替えとか下着は・・・確かにわからん」

「美和もなかなか冷静だ、気がつく・・・と言うよりは俺が動転しているだけか」

ただ、柿崎孝太は、自分自身、疲れ切っていた。

結局、風呂だけは入り、そのまま眠ってしまった。


翌朝、柿崎孝太が病院に提出する書類にサインなどをしていると、確かに8時半に杉浦美和がアパートに来た。

杉浦美和は持って来た荷物を床に置き、少し難しい顔。

「親父に聞いたんだけど、昨日ね、吉田さんと鈴木さんと深田美紀でトラブル」

「支配人室まで巻き込んでね」

「そこで吉田さんと鈴木さんが、どこかの親分さんとか夜道が何とかって」

「ほぼ脅しね」


柿崎孝太は、難しい顔で聞く。

「あの二人と・・・どこかの親分さんの関係って」

「聴いたことがあるような、ないような」


杉浦美和は苦笑いしながら頷く。

「うん、孝太、でもそれについては、心配いらない」

「副支配人が、もう手を打ったよ」

「警察庁の馴染みの幹部に連絡」

「その警察庁の幹部が、温泉ホテルの親分に因果を含めたらしい」

「何しろ、このホテルも、いろんなヤバいネタを持っているし」

「警察庁の秘事も、大物政治家の悪事を含めて」


柿崎孝太は、少し驚いた顔。

「仕事早い・・・」

「そうなると?」


杉浦美和は厳しい顔に変わった。

「あの二人は、懲戒解雇、その後は警察に」

「その後任は募集する、当分はイタリアンとフレンチのシェフに手伝ってもらう」


柿崎孝太は下を向く。

「まあ・・・今さら俺が口を出せる身分でもないし」

「正直、悪いとは思っているけれど」


杉浦美和は、そんな柿崎孝太の肩をポンと叩く。

「さあ、妹さんのお見舞いに行く」

「さっさと立って」


そのまま「ああ・・・」と立ちあがった柿崎孝太の腕を引く。

「お見舞いの後は、実家のパン屋にも行きたい」

杉浦美和は、にっこりと笑っている。

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