第11話支配人室

支配人室に呼び出された吉田パテシィエと鈴木パテシィエは、洋菓子厨房の録画を見せられても、全く悪びれない。


吉田パテシィエ

「懲戒解雇?警察に突き出す?できるものならどうぞ」

「ただし、その後は知りませんよ」

「マスコミも騒ぐだろうし・・・ね・・・」


鈴木パテシィエは含み笑い

「よくご存じの組の組長の息がかかった温泉ホテルに伝手があるので・・・」

「前科があろうとなかろうと、親分は気にしないから」

「ただし、俺たちを、もし、警察に突き出すなら、ここのホテルも・・・」

「それと支配人やパテシィエ長のご家族も、夜道には充分、ご用心を」


結局、杉浦支配人は黙り込み、決断を下すことはしない。

松田パテシィエ長も「よくご存知の組長」の言葉以降は、吉田パテシィエと鈴木パテシィエと視線を合わせない。


そんな様子を薄ら嗤いで見ていた吉田パテシィエ

「じゃあ、お咎めなしですな」と席を立つ。

鈴木パテシィエも席を立ち

「そこまでお嫌いなら明日から温泉ホテルに行こうかな」

「あ・・・退職金はきっちりいただきますよ」

と。クックと嗤う。


憤然とするしかない深田美紀をヘラヘラと笑いながら吉田パテシィエと鈴木パテシィエは支配人室を後にした。



支配人室がしばらく絶望感に包まれていると、ドアがノックされ、副支配人の田村が入って来た。


田村

「モニター室で全て録画しておりました」

「それでは手を打ちますか?」


杉浦支配人は頷く。

「程度の悪い思い上がりだ」

「夜道が怖くなるのはあいつらだ」


その言葉を聞いた松田パテシィエ長は、顔を青くして杉浦支配人を見つめている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る