第10話事件発生

少しして、深田美紀は泣きながら語りはじめた。

「吉田さんと、鈴木さんなんです」

「ずっと我慢して来たけれど・・・もう我慢できなくて」

「今日は孝太さんの悪口ばかりで、仕事なんて何もしない」

「悪口って言っても、腕を鼻にかけている、おれたちと飲まない、馬鹿にしているのか、いなくなって清々するとか、そんな程度の悪い話ばかり」

「あまりにもうるさいから、仕事しないなら帰ってくださいって言ったら、二人で逆ギレ」

「腕を掴まれて、そんなに孝太がいいのか?とか」

「おれたちとは飲まないけど、孝太とは飲むのか?とか」

「そんなんじゃありませんって返したら」

「鈴木さんに蹴飛ばされて」

「何するんですかって文句を言ったら。吉田さんに頬を張られて」

「この世界、先輩に文句なんて許されないって、怒られて」


杉浦支配人が厳しい顔、松田パテシィエ長の顔が赤くなる。

深田美紀は続けた。

「時々、禁止されている煙草を隠れて吸っていますし」

「仕入れの業者と長話ばかりで」

「仕事が忙しいとか、お構いなしに」


松田パテシィエ長は、深田美紀と杉浦支配人に頭を下げた。

「申し訳ない、俺の管理不足、指導不足で」


杉浦支配人は苦しそうに首を横に振る。

「まずセクハラ、暴行事件で警察に通報、業務規程違反で懲戒解雇になる」

「警察の考えしだいでは、マスコミに流される」

「・・・そうなれば、このホテルの名誉も失墜、悪い影響は免れない」


少し間があった。


杉浦支配人は、洋菓子厨房内等の監視カメラで、深田美紀への暴行等を確認した。

そして厳しい顔になり、内線で吉田パテシィエと鈴木パテシィエを呼び出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る