第1話 車好きの青年

人車一体とは違う何か。

『仲間』『相棒』がしっくりくる。



地方中都市N市の大学生、寺西修。

僕の愛車、インテグラDA6 VTEC。


車はただの利便性を高める機械を超えた

不思議な存在で、魅了されている。

ステアリングを握ると包まれるような

安堵と高揚感が自然と沸く。



海辺の眩い日差し。

フェンダーにもたれ、煙草の煙が

海風に流れる様を、ただ眺めた時間。


悔しさと、どしゃ降りの雨音の中。

ワイパーの規則的な音だけが響く静寂。


好きな音楽と、流れる風景に身を任せる

時間が欲しくて、ドライブしてるのかも知れない。

嬉しさも寂しさも、インテグラと共に感じる

日々。



車好きが高じて、ジムカーナも始めた。

年数回、ショップ主催の走行会と

県シリーズのビギナークラスに参加し

モータースポーツをかじる程度だが。


ブレーキ、ショック、クラッチ、LSD

ジムカーナの最低限のチューンだけはしている。



車仲間に教えてもらった、お気に入りのコースがある。

シーサイドライン手前の狭い林道。


タイトコーナー続くレイアウトが

ジムカーナに似ている。


誰にも邪魔されない

夏の深夜から夜明けの時間に

練習がてら、ラインを確認しながら

何度も往復した。



インテグラと共に駆ける喜びが欲しくて

走りたいのかも知れない。

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