26.僧侶、白院との出会い


「サミュエルには、ついて行かないことにしたよ。サミュエルは確かに強いけど、自分勝手だもん。……でも、王子アルス様とユーリちゃんがついて行っちゃった」


 ラデクは頭の後ろに手をやりながら、ため息混じりに言う。


「ユーリちゃんって、雪白さんですよね。心配です……。今頃、どこにいるんでしょう……」

「サミュエル好き好きーって感じだったからね。まだ一緒にいるんじゃない?」

「彼女、まだ高校生だったはずです。見つけ出して、サミュエルさんに話をつけて連れ戻しましょう。……メイメイさんの手当てもしなきゃですね。サラーさん、背負わせてしまってすみません」


 サラーは、まだ気を失っているメイメイを背負いながら「仕方ないわよー」と笑いかけた。優志ミオンの現在の体調では、女性1人を背負うこともきつかった。


 現在優志ミオンたちは、メイメイを診察してもらうため、“シェイシェイ”に病院か医院がないかと探し回っていた。

 看板に描かれた地図の文字をスマートフォンで翻訳するも、この小さな街に医療施設はなさそうだ。

 

 歩き回っているうち、優志ミオンは次第に、体の怠さと息苦しさが増す。


「うぐ……」


 吐き気をもよおし、優志ミオンはその場に座り込んだ。

 脇腹に鈍い痛みが走る。


「ちょ、ミオン様、大丈夫!?」

「たいへーんー。この街にお医者さんはないみたいだしー。隣街までは遠いしー。どうしようー」


 体内を、毒蛇が這いずり回るような気持ち悪さが駆け巡る。歩くことも難しそうだ。

 優志ミオンはしゃがみ込んだまま、声を絞り出した。


「ミランダさんを呼んで、一度元の世界に帰ります……。病院に行きます……。メイメイさんも、連れて行きましょう……」


 ハア、ハアと息を切らせつつ、ミランダを呼ぼうとした、その時だ。


「ハロー! ハロハロー!! ヘイユー! そこの方ぁ!?」


 突然、声をかけられた。

 男性のようだが、明るく甲高い声。耳にするだけで心躍るような声だ。


「ちょ、びっくりしたあ! 誰だよ、いきなり!」


 ラデクは、不審そうにその男を見る。

 優志ミオンも顔を上げてその男の姿を確かめたが、口調と見た目のギャップのあまり、銅像のように固まってしまった。


「マイ、ネームイズ! 【白院びゃくいん】!」


 坊主頭に、長く伸びた真っ黒の眉毛、そして口髭。

 広く深い黒色の袖の袈裟に、掛絡からを身につけている。禅僧だろうか。

 雰囲気は60〜70代で恰幅の良い体型だが、肌はピチピチ、皺もなく、仕草はキビキビとしている。


 親指、人差し指、小指を立てる、いわゆる“パリピポーズ”を決めながら、大きく股を開きつつウインクしてみせる白院。

 服装に似合わぬポーズに、優志ミオン、ラデク、サラーは言葉を失う。


「あなたが……白院さん……」


 ようやく優志ミオン口から言葉が出てきたのは、3分ほど経ってから。その間、白院は、ずっと舌を出したまま“パリピポーズ”でウインクをしたままだった。


 優志ミオンは、謎の老人、かなえから、白院と会うように言われていたことを思い出す。

 まさか、こんな時に会うとは。


「ミーは僧侶であり! 医者ドクターだぁ! ユーとそこのレイディーが患者かーい、ベイビー? ひとまず、私の家にカモン! カモン!」


 テンションについていけないが、優志ミオンたちは一人で勝手に喋り続ける白院の話を聞いていた。

 白院の自宅は“ファンファン”にあり、そこで患者の診察も行なっているという。


「ヘイユー! ワッチュアネーム?」

「あ、マイネームイズ……まさし……じゃなくて、ミオンです」

「ミオン! ユーの最近の食生活、テルミー!」


 日本語は通じるようだ。

 優志ミオンは、最近までリンリンが作った塩分、糖質、脂肪たっぷりのご馳走を、毎日お腹いっぱい食していたことを白院に伝えた。

 そして、短時間に一気食いをして、気絶するように眠る“ドカ食い気絶”中毒に陥っていたことも。


「ドカ食い気絶ー!? ヘイミオン! そんなことをしてちゃあ……早死にしちまうぜベイベェ!! さあ、早くミーの家にカモンカモン! ヒァウィーゴー!!」


 白院が叫んだ直後。

 ピーポーピーポーというサイレンが近づいてくる。

 救急車だろうか。違う。上からだ。

 強い風が吹き、バラララという音と共にそれは、広場に着陸する。

 ヘリコプターだ。

 その見た目は、ヘリコプター型救急車。白いボディには赤十字マーク。赤色灯を明滅させている。

 

 あれよあれよという間に優志ミオン、ラデク、サラー、メイメイは、ヘリコプターの後部席に乗せられる。


「そ、空飛ぶの初めてだ! すげー!」

「ちょっと怖いわねー」


 はしゃぐラデクとサラーを他所に、優志ミオンは前方の席に目を遣る。

 操縦桿が無い。どうやら自動操縦のようだ。

 そんな事を気にする暇もなく、白院はハイテンションで声を上げる。


「レッツゴー! トゥマイハウス! ゴーゴゴー!!」




 ラデクと仲直りをした勇者ミオン——飛田とびた優志まさし

 再び初期メンバー——勇者ミオン、ラデク、サラーで、冒険を再開しようとしたところ、優志ミオンはまたも病に倒れる。


 胆石症がせっかく治ってきたのに、食生活のせいでまた不健康になってしまった優志ミオン

 そこで、白院びゃくいんという医者と出会った——。


 優志ミオンは再び健康を取り戻し、勇者としての使命を果たすことが出来るのだろうか。



 バラバラとなった仲間たち——。


 パーティA——

 飛田優志=勇者ミオン

 ラデク

 サラー


 パーティB——

 サミュエル

 アルス王子

 雪白友莉(=ピア・フレンズ)とピノ(ミランダのワープゲートで帰宅へ)


 現実世界へ帰宅——

 稲村誠司=僧侶リュカ

 悠木愛音(=ピア・ラヴィング)とミューズ

 ゴマ(稲村家に帰った? 星猫戦隊コスモレンジャーの基地に帰った?)


 ニャンバラの病院——

 ソアラ(入院治療中)

 スピカ

 チビサクビー


 星猫戦隊コスモレンジャーの基地——

 星猫戦隊コスモレンジャーのメインメンバー(ソール、ムーン、マーズ)

 ポコ(天ノ河勇美=ピア・ブレイヴ)とロウ

 その他のメンバー(ライム、グレなど)


 行方不明——

 マーキュリー

 ヴィーナス(癒月星愛=ピア・ヒーリング)とクマーン(ゴマを追い続けている?)

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