14.謎の老人との出会い
「ゴマくん……」
目の前にいる彼が、唯一の味方のように思えた。
不安になりながらも、
「……何考えてやがんだ! ラデクの奴……。ボクほどじゃないにしても、
「あっ、ゴマくん! そっちは逆方向です……! ラデクくんはこっちへ行きました!」
地面にはパーティー共通の荷物——
確かめもせず、ラデクは飛び出して行ってしまったようだ。
申し訳なくなりながらも、
その時。
「あ、あの子は……癒月さん?」
後を追うが、彼女の足は予想外に速かった。
代わりにそこにいたのは、“ウツボカズラ”の群れ。
「はあ、はあ……。このぐらい、今の私には何てことは無いです……! “フォルテ”!」
食虫植物の魔物の群れが、瞬く間に一掃される。
が、しばらくするとまた何処からともなく、ウツボカズラの群れが現れる。
息が上がり、その場に座り込む。
まだ残党が数匹。あと少しだ。
フラフラになりながらも立ちあがろうとした、その時——。
「もし、そこのお方。もしや、勇者ミオンか」
ハキハキとした男性の声が、
直後、男性の「ぬん!」という掛け声と共に、ウツボカズラの残党が瞬時にして葬り去られる。
半ば呆然としつつ、
「はい、そうですけど……私は勇者と名乗っていいものか……」
「私の名前は、
叶と名乗る初老の男性が、
腰のあたりまである紺色の長い髪。口髭とあご髭も、同じく紺色だ。道着のような服には、黒い帯が締められている。
「は、はい……」
「魔王を倒すため、強くならねばならん。そういった重圧と、長らく戦っているのか」
「それもありますが……。情けないことに、先ほどチームを追放されたところでして……」
みなまで言わずとも叶は全て理解したかのように、コクリと頷く。
そして遠くに視線を向けながら、口を開いた。
「この地に、飲めば最強になれると言われる、【
最強になれる——。
目の前にいる謎の男が口にした、希望の言葉。
ラデクたちを見返すチャンスだ——。
「仙丹……ですか! それを探せばいいのですね……!」
「だが、仙丹には手を出すな」
「えっ」
紹介しておいて、それに手を出すなとはどういう事か。
せっかく
「そんなものに頼らず、地道に試行錯誤しながら、己を磨くのだ。それ以外に強くなる方法など、無い」
強くなるのに、裏技や近道など無い。
目を瞑りながら淡々と語る叶の表情は、厳しくも温かみを感じさせるものだった。
地道に己を鍛え強くなるのは大事だ。しかし
「とはいえ、この歳ですから……。もうすぐ39歳です。若い人のような体力もありません。本当に今から鍛えて強くなれるのでしょうか……」
「なら、この私はどうなる。見よ……!」
叶は白髪混じりの青髪を
目の前にいる初老の男から、近づき難いほどの気迫が感じられる。
「
一喝するような大声でと共に、何が起きたか。
「うわあッ!?」
叶の目の前にあった、高さ1メートルほどもあった大岩が、バリンと音を立てて爆発するように砕け散ったのである。
飛んでくる破片から身を守るべく、
触れてもいないのに、岩が砕け散った。
「す……凄いです。魔法では……ありませんよね?」
「これは、“
「氣……。初めて知りました……」
「氣はまた、健康の源でもある。体内の氣を滞りなくしっかり流すことで、人は健康になれるのだ。私は60年生きたが、このとおり私は元氣だ」
「年齢など、関係ない、と……」
叶は再び目を瞑り満足げにコクリと頷くと、ジャングルの奥へと続く小道を指差した。
「【
「分かりました。あの、ありがとうございます……。よろしければまた色々教え……」
「縁があればまた会おう」
言い残し、忍者の如き素早い動きで去って行く叶であった。
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