5.船出へ
消滅し、光となって天に昇っていったヴァンニー・ヴァンヴァニディーロ。その光は数多くの金貨となり、地面に降り注いだ。合計10,000
そして残りの光がひとまとまりになると、何かを形作った。
それは、ややカーブした刀身の剣となり、ゆっくりと舞い降りてくる。
「これは……!」
「これは【
「……これからの船出に、ちょうどいいですね。海にもやはり、魔物がいるんですね」
武器の種類も増えてきた。全部を持ち歩くのも大変なので、
「ミランダさん!」
見慣れた光に包まれながら、ミランダが8の字を描いて姿を現す。
「使わない剣を
「あ……私の部屋は窓ガラスが割れてますからセキュリティが不安ですから……ラデクくんの宿屋に預けるのはどうでしょう?」
ラデクは「いいよ!」と言って、こくりと頷く。
ミランダが「じゃあまた何かあったらいつでも呼んでね」と言って消えた時、遠くから住民たちの声が聞こえてきた。
「勇者様たち、ありがとうございます」
「おかげで、あの大ナマズに港町を壊される心配は無くなりました!」
駆け寄る住民たちに、眩しい笑顔を向けられる。
ドヤ顔をしている
「いえ、あれを止めなければ私たちも旅を続けられませんでしたから……。これから私たちは、この船で島を出ます——」
「これを、持って行ってください」
町長らしき老人が歩み寄ると、
さらに、食糧——日持ちする乾燥野菜、ドライフルーツ、冷凍肉、魚の缶詰など——の入った手押し車が3台ほど用意されていた。
「本当に、助かります。ありがとうございます」
「船の中に積み込まなきゃな。
“グランキャスター号”の搬入口をラデクが開くと、そこに向けて食糧を載せた手押し車を順次搬入する。
「これ、結構きついですね……」
「オレに任せとけ!」
横から
「はあ、はあ……!」
「ソアラさん、息切れが……」
「オレは大丈夫だ! 気にすんな……! ゼエ、ハア……!」
ふと思い出す。
止めようとしたその時、先に
「バカやろソアラ。お前はやっぱり大人しく入院しろ。とりあえずハールヤのジジイんとこ連れてくぞ」
「そうですね。ハールヤさんなら信頼できます」
「バカいえ! これくらい何てこと……!」
抵抗する
「ウチも心配やし、一緒に連れてくわ。
先程の戦いの疲れもあり、既に
その時、街道から女の子2人の声が聞こえた。
「あー! ここだここだ! 迷っちゃったあー」
「遅れてすみません。
その後ろからは、彼女たちのサポーター——ミューズとピノが、飛び跳ねながら悠木と雪白を追う。
「悠木さん、雪白さん!」
「これが船かー! すごーい!」
「愛音、はしゃがないの」
悠木たちを迎えた少し後、王子アルスも姿を現す。青いマントを翻しながら、
「父から許しをもらえたから、一緒に行くね!」
「アルスさん! どこ行ってたんですか……。もちろん大歓迎ですが、急にいなくなって心配でしたよ」
「ごめんね。シジョー神殿に行く時に、はぐれちゃって。1人でお城に帰ってたよ」
子犬のようにアルス王子がまとわりつくので、
そして悠木のテンションは爆上がり。推しの
「で……では、乗り込みましょうか」
「その前に、運転手どうすんだ。
「あ……」
肝心なことを忘れていた。
非日常なことが続くあまり、大事なことに意識が向いていない優志。
船を運転するだけでなく、海を渡るための知識、知恵なども皆無のまま、船旅に出ようとしていたのだ。
だがその時、タバコの匂いが
「……この煙……イングズさん!」
“グランキャスター号”の元船長、イングズが、笑いながら
「勇者ミオン、いよいよ出発だな。こいつは船の操縦士だ。10,000
「あ、はい。喜んで!」
先程倒した、ヴァンニー・ヴァンヴァニディーロから得た10,000
いよいよ、“チャイ大陸”を目指して船出である。
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