38.その頃、猫戦士たちは
ニャンバラ郊外の森にある、星猫戦隊コスモレンジャーの基地——。
ソールたちはあらゆる手段を使い、失踪したポコ、ヴィーナス、マーキュリーを探していた。
だがミランダも知らないと言うし、何も手掛かりはない。
ソールは、会議室で頭を抱えていた。
「このままだと、もし何かあった時が大変だ。みんな、早く帰ってきてくれ……」
少なくともマーキュリーとヴィーナスが揃わないと、星猫戦隊コスモレンジャーの初期メンバー5匹の守護神が合体した【スター・マジンガ】さえ使えないことになる。
“ニャイフォン
隣の席でマーズは、
「やっぱり連絡が取れない。今度は誰が連れ去られるんだ!? 俺か?」
「落ち着けマーズ。私がいる限り、そのようなことは絶対にさせん」
「……ハハ、レアはやっぱり肝が据わってるな」
ポコ、マーキュリー、ヴィーナスは失踪した当時、仮説基地の中にいたはずなのに、行方をくらませているのだ。
ソールとムーンも、不安げな表情を隠せないでいる。
「流石に僕がいなくなるのはまずい。誰かが寝ている間は、番をしよう」
「そうですね。なるべく、1匹だけにならないようにしましょう」
だんだんと外が暗くなる。
一度休憩を取ろうかと、一同が思った時であった——。
会議室の外で、足音が響く。
「ん? 誰だ!!」
マーズが会議室を飛び出し、扉を開けた。数秒も経たぬうち、彼の大声が響き渡る。
「あれ、ポコ!? お前! どこ行ってたんだ!」
「……ポコくん!?」
ソールも、ムーンと共に駆けつけた。
確かに、黒猫のポコだった。帰ってきたばかりなのか、泥で服が汚れている。
ポコはおどおどとしながら、声を震わせた。
「心配かけてごめん……。その、ちょっと……野暮用でね」
「連絡ぐらい返せよ! 心配したじゃねーかよ」
「ポコ。一家の主人なんですから、きちんとしなくてはダメですよ」
マーズがポコの肩を揺すり、ムーンさんは穏やかな口調でポコを諭す。
ああ、本当に良かったと心底思ったソールは、ゆっくりとポコに歩み寄った。
「ポコくん、無事で本当に良かった。ひとまず会議室に入ろう」
「皆さん……ごめんなさい」
会議室に入ってからも、マーズはポコの前脚を掴み、捲し立て続けている。
「帰ってきたのはお前だけか!? ヴィーナスとマーキュリーは知らねえのか!?」
「ヴィーナス……さんは……ごめん、知らない。マーキュリーさんは本当に知らない」
申し訳なさそうにするポコをこれ以上詰めるのは可哀想だと思ったのだろう。マーズはそれ以上、何も言わなかった。
「ポコくん、君には聞きたいことが色々とあるんだが……疲れてるだろうし、まずはゆっくり休むかい?」
「……うん。そうさせてもらうよ」
ポコは俯いたまま、自室へと向かった。
その直後、ポコと入れ違うようなタイミングで、明るく勢いのある声が廊下に響いた。
「ただいまー! マーズ先輩ー!」
ソアラの声だ。
「ソアラくん! 無事だったか!」
「ソアラ、相変わらず騒々しいな。夢の世界とやらはどうだったんだ?」
マーズと共に出迎えると、ソアラは部屋の隅にある物体に視線を向けた。
「ちょっと待って下さい! ……何ですかあの生き物!?」
「ん? ああ、あの子は【ミール】だ。ずいぶん大きくなっただろう?」
ソールたちが預かった、“パン=デ=ミール”の遺した卵から生まれた竜の赤ちゃん、“ミール”。
生まれた当時は肉球サイズだったが、今は猫3匹分ほどの体格となっている。深緑色の体、長い首、立派な羽。
会議室の隅で丸くなって、竜の子は眠っていた。
♢
サーシャを倒し、船も手に入り、“生命の巨塔”も修復した。
冒険がひと段落したので、
「今はね……、夢の世界と現実世界の融合がかなり進んでいて、そのうち現実世界の地球に、グランアースの島が現れたりするかもしれないわ」
ミランダはワープゲートを出す前に、今の夢の世界と現実世界の関係について説明を始めた。
「また、現実世界で眠りについて夢の世界に行くことはあっても、夢の世界で眠りについた時に現実世界に戻ることは難しくなってるみたい。つまり、一度夢の世界に行くと、あたしを呼ばない限り元の世界に戻れない……それが、今の状況だわ」
現実世界の地球と、夢の世界グランアースが一体化してしまうと、世界はきっと大混乱になる——。
帰還してまずはしっかり英気を養い、また冒険に出よう。
そう決意した
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