34.病魔の奇襲
「そんな……僕ちゃんが……。それにヴィットも……。サーシャに操られてただなんて、知らなかったビー」
ショックを受け、その場に座り込むチビサクビーを見た
「チョコレートがある限り、魔王軍たちは何度でも生き返らせることが出来るのですか……」
「でもこの
サーシャは死んだという
「でもさ、サーシャ以外にもその
「まーどっちにしろ、ブッ潰せばイイだけだ。ニャハハハ!」
ラデクの忠告を、
チョコレートがある限り、魔族は復活する。一体どうすればいいのか。
ふと、
以前の戦いでサーシャが紫色の血を流していたのを、
おそらく、サーシャは本物の魔族なのだろう。
「チビサクビーさん、サーシャに作られた後のこと、よかったら話してくれませんか?」
「チビは余計だビー……。まあ、作られた存在だって分かった以上、魔王軍に従う理由はないビー。順序立てて話すからちゃんと聞くビー」
少しほっとした
チビサクビーは、丸々とした手をぴょこぴょこと振りつつ、魔王軍にいた時の記憶を語り始める。
「僕ちゃんは作られたことなんか知らなかったから、いつの間にか当たり前のように魔王軍で働いてた……というのが正直なところだビー」
「その時のサーシャさんの様子などは、覚えてたりしませんか?」
サーシャはどんなふうにサクビーたちを作り、操っていたのか。サーシャ以外にもチョコレートで操り人形を作る者はいるのか。
何とかして聞き出したいところである。
「全然、操られてるような感覚はなかったビー。それにサーシャの奴、記憶喪失になったとか言ってたビー」
「記憶喪失……ですか」
「もしかして、チョコレートでお前らを作ったこと、忘れてんじゃねえか!?」
「分からないビー。サーシャの奴、
「んー、サーシャ以外にチョコ人形を作る能力のある奴がいるかどうかは分かるか!?」
「そんなの分かるわけないビー! それよりお前、本当にソアラだビー?」
チビサクビーが話題を変えようとしたところで、
「……あ。ソアラのことは後にするビー。“邪竜パン=デ=ミール”ももう倒したんだビー?」
「はい、もう随分前に、倒しました」
「サーシャも死んで、魔王ゴディーヴァ様……いや、ゴディーヴァも相当お怒りだろうと思うビー」
「ゴマくんが操ってるとはいえ、サクビーさん自身は……私たちと一緒にいていいのですか?」
チビサクビーがまた魔王軍として悪さをしないか確かめておこうと、
「さっきも言ったけど、僕ちゃんが魔族じゃないと分かった以上、魔王軍として戦う意味はないビー。さっさとゴディーヴァを倒して、平和な世界にしてほしいビー」
その言葉にホッとした時だった。
突然、
「ソアラさん!? どうしたのですか!?」
「おいソアラ! 大丈夫かよ!」
「ちょ、どないしたん!? しっかりしいや!」
「あー!! ソアラだビー! ……ソアラ! お前どうしたビー!? しっかりするビー!」
チビサクビーがちょこちょことソアラの元へと駆けつける。
「へへ……お前とまた勝負したかったんだが……それは叶わなさそうだ……!」
ソアラはぐったりと体を横たえ、ヒゲを動かしながら弱々しく言葉を発した。
「どーいうことだビー! そんなの許さないビー!」
「ちゃんと説明するぜ……!」
「無理なさらず……! 話すなら落ち着いてから、話してください……」
息が整ってから、体を横たえたままソアラは説明を始めた。
「オレ……“肥大型心筋症”っつう、命に関わる病気にかかってるんだ……! 不治の病だ! もう先は長くない……! みんな、黙ってて、悪かったな……!」
1つ言葉を発するたび、息を整えるソアラ。
絶句するパーティーメンバー。
「いつ終わっても、おかしくねえ命なんだ……!」
だから、瘴気を食らったときに、意識を失うほどにまで重症化したのか——。
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