32.宿敵の復活


 マイルスの家を後にした優志ミオンたち。

 猫月ゴマたちを迎えに行こうかと思案していた時、突如、虹色の光が優志ミオンたちの前に現れる。


「よお。ミランダから聞いたぜ。ボクが提案した作戦、うまくいったみてえだな」


 猫月ゴマが虹色に輝くワープゲートから姿を現すと、続いて蒼天ソアラ暁月スピカが歩み出てくる。

 3人とも人間の姿。蒼天ソアラ暁月スピカも、もうすっかり具合は良さそうだ。


 優志ミオン猫月ゴマたちにも、マイルスから教わったことと今後の方針について説明した。

 まずは船で“チャイ大陸”へと向かうこと。

 “シジョー神殿”で、“転職”が可能であること。


「ひとまずシジョー神殿に行ってから、チャイ大陸に向かえばいいんじゃない?」

「そうしましょー」

「僕はそれでいいよ」

「俺も賛成!」

「ボクもそれでいいと思うぜ」

「オレもー!」

「ウチも異議なしや!」


 ラデクの提案に、一同は声を揃える。

 今後の方針は決まった。


 ♢


「おい、優志まさし


 少し息抜きするためモヤマを散策することになったのだが、人気の少ない場所に来た時、優志ミオン猫月ゴマに呼び止められた。


「ゴマくん、どうしました?」

「ちょっと、そこの露店でチョコレート買ってきてくれねえか?」

「チョコレート、ですか。猫はチョコレートは確か苦手なのでは……?」

「人間の姿だと食えるんだぜ。でも別に。とにかく目いっぱいのチョコを買ってきてくれ」

「誰が食べるのか知りませんが、あんまり食べると、糖尿病になりますよ」

「いいから! 早く買わねえと売り切れちまうだろうが!」


 回転寿司があるくらいだからチョコレートもあるだろうと思いつつ、優志ミオンはしぶしぶ、露店へと向かった。

 簡素な造りの、祭り屋台のような露店。白Tシャツを着て麦わら帽子をかぶった中年の店主の前に、カラフルな飴玉が入ったプラスチックの箱が並べられている。近くはビスケットなどの入った紙箱も積まれている。


 チョコレート——あった。現実世界にも存在するメーカーの板チョコが、ずらっと並べられている。


「板チョコでいいですかね。すみません、2枚くださ……」

「足りねえ。20枚だ」


 猫月ゴマが勝手に板チョコを取り、有無を言わせず優志ミオンの手に積み上げられた。


「じ、じゅうまい……」

「まいどあり! 2,000ゴールドいただきまぁす」


 優志ミオンはしぶしぶ、金貨20枚を店主に渡すと、10枚ずつ両手に板チョコを積んで露店を後にした。

 こんなに誰が食べるのだろうか。みんなで食べるにしても、さすがに多すぎる——。

 首を傾げつつ、待っているみんなの所へと戻った。


「ゴマあんたなあ、みんなで共有のお金やで?」

「相棒! そんなに買ってどーすんだ! 分量を考えろよな!」

 

 文句を言われながら、猫月ゴマはペリペリと板チョコの包装紙を剥がし始めた。


「ボクが食うわけじゃねえ。まあ見てろって」


 板チョコの包装紙を順番に剥いていく猫月ゴマ。ベンチの上に包装紙を広げ、板チョコ並べていく。

 優志ミオン猫月ゴマの意図がわからず、ただじっと見ているしかできなかった。


 10枚の板チョコを並べ終えた猫月ゴマは、自身の目を赤く光らせた。


「チョコレートよ! 我が傀儡くぐつとなれ!」


 猫月ゴマが言葉を発した瞬間だった。

 チョコレートが自発的に動き出し、合体を始める。瞬く間に丸々とした形になると、眩い紫色の光を放った。


「な……何ですかこれは……!」


 優志ミオン稲村リュカたちも、信じられぬ光景に一歩後退あとずさる。


 光が消えると、チョコレートは完全に姿を変えていた。

 鉛色の丸いボディ。クリクリとした2つの目。そして自身の身体より大きな盾。


「あー! お前は!!」


 蒼天ソアラが大声と共に指をさす。


「あれ? 僕ちゃん、何してたんだビー!?」

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