29.ピア・ブレイヴとピア・ヒーリングの正体
モヤマへ到着した
ここは真夜中の、フシミ港。
波の音と夜風の音が混ざり合う桟橋の上で、柵の上に手をかけながら話している2人組がいた。
「
「……寝ても覚めても、やっぱりゴマのことばかり考えてしまうわ」
「所詮、付き合ってからの恋愛感情なんて、90日が限界よ。今のゴマとスピカは、はっきり言って倦怠期に入ってる」
癒月はゴマのことが好きだ。しかしゴマは既にスピカと付き合っている。打ちのめされるようなその現実に風穴を開けてやるかのように口をついて出てきた言葉を、癒月は少し悔いる。
「妬いてんでしょ、スピカに」
「妬いてなんかないわ。……彼女がいようが、そんなの関係ない。私がゴマにとって必要な、そして特別な存在になるだけよ。私はスピカみたいに、一時の感情なんかで付き合う気なんかない。お互い、冷静な頭でずっと信じ合える……そんな関係を目指してるの」
遠くに輝く白い星に視線を固定させ、想いを口にする。隣にいる黒髪の女子に言ったところで、何か変わるわけではないけれど。
「珍しくよく喋るね、
「別にあんたに理解して欲しいなんて、思ってないんだから」
「くまー」
いつの間にか帰ってきたクマーンがバッグから顔を覗かせるが、気にも留めない。
天ノ河は返事をせずにクスッと笑い、視線を夜空に向けた。ひんやりとした夜風に、艶やかな黒髪が
「仲良い友達だったら、自分のこと優先させるじゃない。私はゴマに私の全部をあげ……って何言わせんのよもう!」
「君が勝手に喋ってるんじゃないか。フフッ、ほんとにゴマのこと愛してるんだね」
天ノ河は澄み切った瞳で癒月を見ると、子供のように笑って返事した。
沈黙が嫌で、ゴマへの止められぬ想いをどうしても口にしてしまう。
「……フン、簡単に愛してるなんて言うんじゃないわよ」
「ふーん。恋に関しては僕の方が先輩だよ?」
「うっさい。あーもう、余計なこと喋りすぎたわ……」
すっかり気も抜けてしまったのであろう。
癒月も天ノ河も——頭から猫耳、腰の辺りから尻尾が、ピョコリと出ていることに気づく。しかし周りには誰もいないので、気に留めることはなかった。
「それにしても……」
天ノ河は、頭から出た黒い猫耳を片方だけぴょこぴょこと動かしながら、恥ずかしげに視線を逸らす。
「まさか僕らが美少女魔法戦士になるなんてね……。
「そういえばあんた、結婚してたわね。サビ柄のユキって子だったかしら。全く、あんたのどこに惚れたのかしらね。それから、この辺りにはもう誰もいないから普通に呼びなさい、ポコ」
「そうだね、ヴィーナス……さん」
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