27.“生命の巨塔”復活作戦


 現状、“生命の巨塔”を復活させる手段は分からない。しかし、悠長に構えている暇はない。

 一か八か、双子山の山頂から噴き出す“生命の水”を持ち帰り、破壊された“生命の巨塔”にぶっかけるという、猫月ゴマの案に賭けることにした。


「でも、大量の“生命の水”が必要ですよね。どうやって“生命の巨塔”にまで持っていけばいいのでしょう……」


 呟いた時、突然優志ミオンたちの目の前に、虹色に輝く光が現れる。


「クマーンたちに任せてくま」

「ガウー!」


 光の中から、クマーンとロウが出現した。後からミランダも姿を現す。


「わわ……! びっくりしました……」

「クマーンたちが山の上にワープゲートを作って、“生命の巨塔”に繋ぐくま。そこから“生命の水”を出せばいいくま」

「ガウルル!」


 楽しげに飛び跳ねながら提案するクマーンを見て、優志ミオンは以前のことを思い出しながら首を傾げる。

 クマーンとロウが、勝手にミランダの魔力を奪ってワープゲートを作り出していたからだ。


「……いいんですか? ミランダさん」

「今度はちゃんと許可したから、大丈夫よ!」


 8の字を描いてウインクするミランダを見て安心した優志ミオンは、“生命の巨塔”復活作戦の決行を決意した。


 ひとまず、蒼天ソアラ暁月スピカはまだ体調は万全ではないので、猫月ゴマが付き添う形でフシミ港の宿屋で安静にしていてもらうことにし、残りのメンバー——稲村リュカ、ラデク、サラー、アルス王子で、作戦に取り組むこととなった。


「じゃあな優志まさし! お前ドジだからちょっと心配だが、なんとかして上手くやってくれ!」

「ありがとうございます、ゴマくん。必ず成功させます!」


 猫月ゴマ蒼天ソアラ暁月スピカは、港町の宿屋へと向かって行った。


「じゃあ早速行くくまー。クマーンはアタゴ山の上へ行くから、、ロウはヒエイ山へ向かうくま。そこでワープゲートを開いて、“生命の水”をワープさせるくま」

「ガウ!」


 いよいよ作戦開始。

 クマーンとロウは、飛び跳ねながらワープゲートに消えていった。


「さあ、優志まさしくんたちも行くわよ!」

「はい! 皆さん、準備はよろしいですか?」


 ミランダは、“生命の巨塔”行きのワープゲートを、地面に作り出す。


「おう! 今度こそ、完全に直すんだ、“生命の巨塔”を!」

「きっとうまくやれるわー。今までどんなピンチも乗り越えてきたんだものー」

優志ミオン! さっさと終わらせちまおうぜ!」


 ラデク、サラー、稲村リュカの表情を見ると、上手くいくと確信できる。今や彼らからは、そんな頼もしさを感じる。


「ミオン様……! “生命の巨塔”のことも、古文書に書いてあったのを思い出したよ。着いたら話すね!」

「ほんとですか! じゃあ詳しく教えてください……!」


 アルス王子が言うであろうヒントに期待し、一行はワープゲートで“生命の巨塔”へと向かった。


 ♢


「これはひどいです……。あの自然いっぱいの森が……」


 “生命の巨塔”の近くにある、ダイゴの森。生命力が溢れていた森の木々の葉は枯れ、幹が腐り落ちているものもある。


 そして無惨な姿の“生命の巨塔”。かつて50メートルの高さを誇っていたその塔も、破壊されたことで何と全体が萎えるように縮こまってしまい、今は高さ50センチメートル、直径は20センチメートルにも満たない。

 塔の左右には金色の輝きを放つ“ゴールデン・オーブ”があるのだが、それらも光沢を失ったただの小さな2つの鉛の玉となり、虚しく地面に転がっている。


「もう少ししたら、クマーンくんたちがワープゲートを繋げてくれるはずよ。そこから、“生命の水”を出してくれるはず」


 ミランダが喋ってる間に、塔の真上10メートルほどの所に虹色の光が2つ出現。

 そこから突然、“生命の水”が滝のようにドザーッと流れ落ち始めた。


 “生命の”鉄砲水が、優志ミオンたちをも襲う!


「うわわわ、やりすぎですー!」

「ちょっと! このままじゃ大洪水だよー!」


 あっという間にずぶ濡れになった優志ミオンたち。

 クマーンたちもやり過ぎだと気づいたのであろう、すぐにワープゲートから出ていた“生命の水”の水勢は緩やかになっていく。


「……あ、見てください。塔が!」


 ずぶ濡れになった“生命の巨塔”が、少しずつムクムクと大きくなっている。


「やった! このままどんどん大きくなれー!」

「これでー、解決ねー」


 ラデクとサラーは、歓喜の声を上げた。

 だが塔は、1.5メートルほどの大きさになったところで、徐々に巨大化の勢いが弱まる。ラデクたちの表情も曇っていく。


「あれ……止まっちゃいました」


 駆け寄って塔をよく見ると、今度は段々と小さく萎み始めていることに気付く。

 どうして良いか分からなくなった優志ミオンはあたふたとして、ラデクたちの方に目をやった。


「やっぱりダメだったのかな……」

「そんなー、解決したと思ったのにー」

「もっと“生命の水”をかけた方がいいんじゃねえか?」


 みんなして肩を落としていると、アルス王子が駆け寄ってくる。

 彼は目を瞑りながら、塔の外壁を両手でそっと触れた。その体勢のまま、優志ミオンに伝える。


「古文書に書いてあったんだ。“生命の巨塔”を復活させるには、ばいい」

「しごく!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る