24.新・合体技、炸裂!


 猫月ゴマはダウンしているので、戦闘には参加できない。

 優志ミオンは駆けつけ、魔法を放つ。


「“サンデー”!」


 “サンデー”は、魔王軍の呪われし魔法。分かってはいる。しかし、真っ赤な体の巨大カニは巨岩のようなハサミで今にもラデクを叩き潰そうとしているので、躊躇している暇などない。

 “サンデー”は巨大カニの脚部にヒット。バランスを崩し、動きが鈍った。


 体勢を立て直したラデクは、“プラチナソード”と“プラチナシールド”を構え、巨大カニから距離を取った。

 

「ミオン様、ありがとう! あれは……【キラーキャンサー】だ! 攻撃力がめちゃくちゃ高いから気をつけて!」


 “キラーキャンサー”は再び動き出し、挟まれると即死しそうな巨大な2つのハサミを構える。

 さらに悪いことに——“キラーキャンサー”の後ろから、長さ5メートルはあるであろう巨大なウミヘビが、ウネウネとうねりながら2匹。

 

「【シーナーガ】だ! 毒を持ってるから近づかないで! アイツは弱点属性はないけど、氷とかの冷たいものを浴びせれば、動きを止められるよ!」

「じゃあ、僕の出番だね!」


 氷の魔法を得意とするアルス王子は嬉々として声を弾ませ、2匹の“シーナーガ”に狙いをつけた。

 直後、2つの大雪玉が“シーナーガ”に1つずつヒット。徐々に動きを止める2匹の海蛇。


「“エクスプロージョン”!」


 今がチャンスとばかりに、優志ミオンは魔法を詠唱。

 砂浜を抉る大爆発が、2匹の“シーナーガ”を瞬く間に灰にする。


 あとは“キラーキャンサー”だけかと思いきや、気を抜く暇もなくまた別の魔物が現れる。

 海面が泡立ち始めたと思えば、ザバーッと音を立てながら、高さ2メートルほどの巻き貝を背負った巨大なヤドカリが現れた。


「わわ……お化けヤドカリです……」

「【ビックヤドラー】だ。あれも、氷漬けにすれば動きを止められるよ。弱点は光属性だ!」


 次々と湧いて出る魔物たち。

 顔を歪める優志ミオンたちとは対照的に、嬉しそうに笑う稲村リュカが駆け寄ってきた。


「金稼ぎのチャンスじゃねえか、ガハハ! そら、パワーアップしてやるぜぃ!」


 稲村リュカは全身を光に包むと、優志ミオン、ラデク、サラー、アルス王子に、攻撃力強化魔法を施した。


 全身に力が湧いてくる。攻撃力は2倍になった気分だ。


「ミオン様、僕に合わせて!」

「アルスさん……?」


 アルス王子は両掌に冷たさを感じる青白い光を蓄えていた。優志ミオンはアルス王子の真似をするように、“サンデー”を撃つべく構える。

 迫り来る“ビックヤドラー”。


「行くよ! せーのっ!」

「「【ラムネサンデー】!!」」


 青白い魔弾と黄金色の魔弾が空中で一つになり、“ビックヤドラー”に直撃。キラキラと氷の破片が飛び散る。

 “ビックヤドラー”は動きを止めた直後、爆散。光となって天へと昇っていった。

 

 続いて優志ミオンは、ラデクとサラーに声をかけられる。


「ミオン様! 久しぶりに俺たちでやるよ! “キラーキャンサー”の弱点は火属性だ!」

「私たちの力ー、思い知らせてあげましょー」


 懐かしい。コハータ村で最初に出会い、みんな病を抱えながら“竜の洞窟”を一緒に冒険した最初のパーティー——。

 

「はい! あれから私も含め皆さん、強くなりましたもんね!」


 ラデクは素早い足捌きで“キラーキャンサー”に駆け寄る。サラーは“ウィザードスタッフ”を構え、炎の力を集める。

 そして優志ミオンは、“獅子の剣”を翳した。

 

「行きましょう……【トライ・ミオン・フィニッシュ】です!!」

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