22.お疲れ様会
「やっぱり僕らは帰るよ。あとは頑張って」
「困ったら呼びなさいよね」
T字路に辿り着いた時、天ノ河と癒月は別の道へ進もうとする。こんな遅い時間に子供だけで大丈夫だろうか——そう思った矢先。
「ゴマ、また会いましょ」
癒月が、突然
「何だテメエ、馴れ馴れしいにも程があるぞ!」
「……そのうち分かるわよ。じゃね」
自信ありげな顔をして、癒月は天ノ河と共に反対側の道の歩道へと向かう。
「いいのか? 未成年を夜道に放り出しちまって」
「何なんやアイツ。ゴマは渡さへんで」
不機嫌な
天ノ河も癒月もいざとなったら“ピア・チェーレ”に変身出来るし、大丈夫かと無理やり思い直し、ベストカップルの後ろ姿と、その向こうに潤むウキョーの街明かりをボーッと眺める
「何ボーッとしてんだ。もう少ししっかりしろよ、勇者ミオン様」
眠りに落ちそうなアルス王子の手を引く
♢
ウキョー・プリンスホテルへ到着した
空腹と眠気に耐えながらロビーでしばらく待っていると、サラーがエスカレーターをゆっくりと下ってくる。
「サラー!」
「あらー、みんな無事で良かったわー」
久しぶりに聞く、サラーの呑気な声。
「サラーさん、お腹が空きました……」
「じゃあそこのレストランに行きましょー」
「まあ、まず荷物を置いてからにしよーぜ!」
サラーに案内され、エレベーターに乗って予約した部屋へ。人数が多いことを見積もって、302号室、303号室が予約されていた。とは言え、男部屋と女部屋に分けるとのことだったので、男が圧倒的に多い現在、また騒がしい夜になるに違いない、と小さくため息をつく
♢
「かんぱーい! いただきまーす!」
ひとまずお疲れ様、ということでみんなして盃を交わす。
「しばらく飲んでないうちに、お酒、無理になったかもしれません……」
「お前は元々弱いくせに、無理して飲んでたからだろうが。だから胆石なんかになるんだよ」
そう言う
ラデクは未成年なので、美味しそうにワインを飲むサラーを羨ましげに見ている。
アルス王子は意外にもお酒は強く、
料理は、ステーキにハンバーグ、パスタにオムライス——それも絶品揃い。
疲れた体に沁み渡る旨さだが、代金は大丈夫だろうか——それだけが
(また、適当に魔物を倒さなきゃいけませんね。その場で
腹と心を満たし、大浴場で疲れた体も癒し、
「ミオン様、船のことだけどさ」
騒ぐ男衆の声を、ドアで遮断したラデク。
「そうでした……。船はちゃんと受け取れるのでしょうか……?」
「大丈夫だよ。イングズと会う約束をしておいたんだ。翌日、朝10時に【フシミ港】に来てくれ、って」
「フシミ港……ですか。また地図を見ておきます。ありがとうございます」
明日、いよいよ船が手に入る。
新たな旅が始まるのだ。
————
『あ、あとね! 夢の世界で一晩寝て起きたら現実世界に戻ってた、みたいなことは多分もう無いと思うわ。これも夢と現実が1つになってきてるからなんだけど……。まあもし起きてから現実世界に戻ってたら、またあたしを呼んで。……まだ何が起こるか分からない。くれぐれも気をつけてね!』
————
ミランダの言葉が脳裏によぎる。
今、眠ることで現実世界に戻ることはないようだが、今後どうなるのかは分からない。
もしかすると、夢の世界と現実世界を突然行き来出来なくなる、なんてこともあるかもしれない。
不安だったが眠気には抗えず
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます