21.ドタバタ復活劇
ソアラくんは無事だろうか——?
恐る恐る開いた診察室の扉。しかし
乳白色の“生命の水”で、診察室は水浸しである。ベッドも、水が滴るほどびしょ濡れであった。
すでに意識を取り戻し、起き上がって唖然としている猫の姿のソアラに、「おらー!これでもか!」と
必死に
慌てふためいてニャーニャー鳴いている、猫の姿のスピカ。
様々な感情が渦巻き、
「あーもう!! ゴマ! やめーい!」
「ふぎゃっ!?」
スピカは185センチメートルはある
獣医師は「猫が喋った!?」と驚きの声を上げるや尻餅をつき、水溜まりで白衣を濡らす。
スピカは怪しまれないため、普通の猫のフリをしていたのだろうか。
「あれ!? オレは……!? ……って、何だ、この状況は!?」
びしょ濡れのソアラが周囲を見回しながら、ようやく口を開く。
「ソアラ! テメエよく無事だったな! 良かった、良かったぜ!」
「うわわ! 相棒、オレ……もうダメだと思ったんだが……! 助けてくれたのか!」
ソアラは
獣医師は座り込んだまま、「猫って、喋るの……? これは……夢……?」とうわ言のように呟いている。
「ソアラくん、本当に良かったです! スピカさんも、もう元気そうですね。安心しました」
「
「ウチもまだ多少しんどいけど、多分平気や。
獣医師はようやく立ちあがり、冷静さを取り戻したようなので、2匹を彼の元へと運んだ。
「ゴマくんったらもう……」
ラデクはため息をつきながら、モップで濡れた床を拭いている。
改めて診察した結果、ソアラもスピカもしっかりと休養を取れば問題無いとのことなので、このまま退院することとなった。
「そういえば、サラーさんはどこへ行かれたのでしょう……?」
「サラーは、先にホテルに行ってるよ。後でみんなで向かおう」
ロビーから、後から来た
変身を解いた悠木、雪白、天ノ河、癒月は疲れたのか、ソファで互いにもたれ合いながら眠りに落ちていた。アルスもくうくうと寝息を立てている。元気いっぱいなのは
「おう! ソアラもスピカも、無事だったようだな!」
「
壁掛け時刻を見ると、21時を過ぎていた。
♢
「ふわあ……まず、悠木さんと雪白さん……を帰さねばなりませんね……」
————
『あのね、今はまだ夢の世界と現実世界の時間はズレてるけど、だんだん同じ時間の進み方になってきてるの。どんどん夢と現実が1つになろうとしてるからよ』
————
現在、ここ“夢の世界”と現実世界は、時刻がシンクロしている可能性がある。中学生である悠木たちを、まずは早く帰さないといけない。
「あ、天ノ河さんと癒月さんも帰らないといけないですよね。お家はどこでしょう?」
「ぼ……僕らは自力で帰れるから、後でいいよ!」
「ほっといてちょうだい」
何かを誤魔化すような態度の天ノ河、癒月。
ミランダを呼ぶと、いつものように光に包まれながら現れる。
「ミランダさん、2人をお家に帰してあげてください」
「ねむいよぉ〜……。そういえば癒月ちゃんって子、友莉にちょっと雰囲気似てた! もっと仲良くなりたいなー……」
「私は何か苦手、あの子。それより早く帰って課題やらなきゃ」
ワープゲートに悠木、雪白が消えていくのを見届けると、引き続き
「これからホテルに向かうんですが、ソアラくん、スピカさんをまた人間にしてあげてもらえますか?」
「分かったわ。ほんと、今回はお疲れ様ね! あたしも含めて、みんな無事で良かったわ!」
ソアラを再び“
今いるメンバーは……。
初期からの勇者パーティー——
人間となった猫たち——
美少女魔法戦士“ピア・チェーレ”——
そして、アルス王子。
みんなして、サラーの待つホテルへと向かった。
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