17.モミモミ祭り
「山頂へ向かいましょう、皆さん!」
山頂へと到着。
赤い月に照らされた突起状の岩から、乳白色の“生命の水”がチョロチョロと少しだけ湧き出しているのが見える。
「悠木さん! アルスさん!」
「飛田さーん! これ、すっごく美味しいよ!」
程よい冷たさと、まろやかな喉越し。みるみるうちに元気が湧き出てくる。まるで、体の細胞が大喜びしているかのよう。
思わず笑ってしまう
「ぷはぁー! 生き返りました……」
「美味えな! 湧き立ての“生命の水”、こいつは酒よりもよっぽど美味いぞ!」
「揉んで、揉んで、もっと揉んでぇ〜!」
「せーの! モミモミ! そーら! モミモミ!」
街の人々の声が近づいてくる。どんどん人が増えてきているようだ。数多くの懐中電灯の光が、サーチライトのように暗闇を踊っている。
人々は、リズムの良い掛け声と共にぷるんぷるんの山肌を、ひたすらに揉みしだいているらしい。
山頂も先ほどからユッサユッサと揺れているが、みんな揺れには少し慣れてきたようだ。
「これは……! 古文書に書いてあったんだ……!」
アルス王子が周囲を見回しながら、口を開く。
「かつて前魔王“ガロア”率いる魔王軍が、双子山の“生命の水”を涸らせた時、『真心のこもった多くの人の手にて、双子山の土を揉みしだくべし』とのお告げがあったんだ。人々が2つの山に集まって山肌を揉みしだくと……双子山の山頂から、再び“生命の水”が湧き出した……と」
きっと谷の向こうの“ヒエイ山”にも、多くの人が集い、山肌を揉みしだいているのだろう。
岩から湧き出す“生命の水”の勢いが、少しずつ増してくる。
「さあさ! 勇者様ご一行もご一緒に!」
「みんなでモミモミしましょ!」
山頂にやってきた街の人たちが、汗に塗れた笑顔を見せながら
「はい! では皆さん、モミモミ……しますか!」
「おう! 揉むテクニックなら任せろ!」
「楽しそうー!
「
乗り気な
「えへへ! いっぱいモミモミするぞ!」
「
「おら! ゴチャゴチャ言ってねえで揉みしだくぞ!!」
みんなで、ひたすらに“アタゴ山”の山肌を揉みしだく。
「揉んで、揉んで、もっと揉んでぇ〜!」
「せーの! モミモミ! そーら! モミモミ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます