17.モミモミ祭り


「山頂へ向かいましょう、皆さん!」


 優志ミオン猫月ゴマは、ゼリーのようなぷるんぷるんの地面に何度も足を取られながら山頂へと急いだ。後から稲村リュカたちもついてくる。


 山頂へと到着。

 赤い月に照らされた突起状の岩から、乳白色の“生命の水”がチョロチョロと少しだけ湧き出しているのが見える。


「悠木さん! アルスさん!」

「飛田さーん! これ、すっごく美味しいよ!」


 優志ミオンは、岩から滲み出す白い水をうまく両手に掬い、口に持っていった。

 程よい冷たさと、まろやかな喉越し。みるみるうちに元気が湧き出てくる。まるで、体の細胞が大喜びしているかのよう。

 思わず笑ってしまう優志ミオン


「ぷはぁー! 生き返りました……」

「美味えな! 湧き立ての“生命の水”、こいつは酒よりもよっぽど美味いぞ!」


 稲村リュカたちも“生命の水”を両手に掬っては、喉を潤している。


「揉んで、揉んで、もっと揉んでぇ〜!」

「せーの! モミモミ! そーら! モミモミ!」


 街の人々の声が近づいてくる。どんどん人が増えてきているようだ。数多くの懐中電灯の光が、サーチライトのように暗闇を踊っている。

 人々は、リズムの良い掛け声と共にぷるんぷるんの山肌を、ひたすらに揉みしだいているらしい。


 山頂も先ほどからユッサユッサと揺れているが、みんな揺れには少し慣れてきたようだ。


「これは……! 古文書に書いてあったんだ……!」


 アルス王子が周囲を見回しながら、口を開く。


「かつて前魔王“ガロア”率いる魔王軍が、双子山の“生命の水”を涸らせた時、『真心のこもった多くの人の手にて、双子山の土を揉みしだくべし』とのお告げがあったんだ。人々が2つの山に集まって山肌を揉みしだくと……双子山の山頂から、再び“生命の水”が湧き出した……と」


 きっと谷の向こうの“ヒエイ山”にも、多くの人が集い、山肌を揉みしだいているのだろう。


 岩から湧き出す“生命の水”の勢いが、少しずつ増してくる。


「さあさ! 勇者様ご一行もご一緒に!」

「みんなでモミモミしましょ!」


 山頂にやってきた街の人たちが、汗に塗れた笑顔を見せながら優志ミオンたちに声をかけた。


「はい! では皆さん、モミモミ……しますか!」

「おう! 揉むテクニックなら任せろ!」

「楽しそうー! 友莉フレンズ、やろやろー!」

愛音ラヴィング、はしゃぐと転ぶわよ。ほんと、歩きにくい、この地面……」


 乗り気な稲村リュカ悠木ラヴィング雪白フレンズ


「えへへ! いっぱいモミモミするぞ!」

勇美ブレイヴ、あんたが言うと何かヤラシイのよ……」

「おら! ゴチャゴチャ言ってねえで揉みしだくぞ!!」


 天ノ河ブレイヴ癒月ヒーリング、そして猫月ゴマも、山頂から斜面へと移動し、街の人々に混ざっていった。



 みんなで、ひたすらに“アタゴ山”の山肌を揉みしだく。


「揉んで、揉んで、もっと揉んでぇ〜!」

「せーの! モミモミ! そーら! モミモミ!」

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