15.勇者のメロディ


 アッシュグレーのヘルメット式マスク、同じくアッシュグレーの装甲、新たな剣、盾が優志ミオンの周囲に出現し、装着されていく——。


『Let's Go! ミオンWWWトリプルダブリューCT30Nシーティースリーオーエヌ2100ツーワンオーオー


 銀色に輝く装甲で全身を覆われた優志ミオン—— ミオンWWWトリプルダブリューCT30Nシーティースリーオーエヌ2100ツーワンオーオーの登場である。


「す……凄いです! 力がもりもり湧いてきます!」

「行け! サーシャとやらをぶっ潰して来い!」


 猫月ゴマはそれだけ言うと、その場であぐらをかいた。


「あの、ゴマくんは戦わないんですか?」

「ボクは後でサーシャの能力をいただくから、ここで待ってる。だからさっさと潰して来い」


 ミオンWWWトリプルダブリューは頷くと、崖の近く、稲村リュカたちのいる場所へ急いだ。

 足を踏みしめるたび、ガシャガシャと装甲の音がする。


優志ミオン! その格好は……?」

「いなちゃん! この力で……今のうちにサーシャさんを倒してきます! 見ててください!」

「そうか! よおし……」


 稲村リュカは立ち上がると、彼の全身が琥珀色に包まれ始めた。


「お前ら全員、パワーアップしてやる! ギリギリ残った魔力を全部使うから、一発で決めろよ!」


 稲村リュカは、ミオンWWWトリプルダブリュー悠木ラヴィング雪白フレンズ天ノ河ブレイヴ癒月ヒーリングに、オレンジ色の輝きを伴った攻撃力強化魔法を施す。


「いなちゃん、ありがとうございます!」

優志ミオン、そろそろ言おうかと思ってたんだが、ここではいなちゃんじゃなくてリュカだ!」

「ああ、そうでした! すみません……」

「ほら、さっさと行ってこい!」


 奇声が、夜の峡谷に響いていた。

 ミオンWWWトリプルダブリューは、イカれた金切り声の方へと目を向ける。声の主はサーシャである。破壊されていく“ジャイアント・ディック”を見て、頭を抱えながら狂ったように喚き声を上げていた。


 攻めるなら、今——!


「“ピア・チェーレ”の皆さん……! これで決めます! 力を、貸してください!」

「うん! 任せて!」

「ええ、これで決めるわよ」

「一発で行くよ! 準備いいかい?」

「絶対に、外しはしない!」


 崖の上から、空中で頭を抱えて叫んでいるサーシャに、狙いを定める。


「鳴り響いて下さい……! 平和のメロディ!」

「愛のメロディ!」

「友情のメロディ」

「勇気のメロディ!」

「癒しのメロディ」


 5つの旋律が重なり、壮大な歌となる——!


「みゅー!」

「ぴのー!」

「ガウルルー!」

「くまー!」


 その響きはエネルギーと転化し、清涼な色をした光り輝く玉が出現。それはみるみるうちに巨大化、サーシャが繰り出した“パフェ”よりも巨大な水色の球体となる。

 周囲が真昼の如く、眩く照らされる——。


「「「「「【メロディ・オブ・ミオンライト】!!」」」」」


 青白く光を放つ球体に、可愛らしいくりくりとした2つの目が現れる。そして閃光を放ちながら、突撃。

 球体は瞬く間に、サーシャを飲み込む。直後、超新星の如く爆散。シャラララという美しい響きと共に、虹色の光が辺りに広がる。


「あああああああああああ!!」


 やがて光が薄らいでいくと、体から煙を上げながら宙をフラフラと舞い、落ちていくサーシャの姿が残った。

 血液が、彼女の全身から流れ落ちている。


「やりましたか……!?」


 ミオンWWWトリプルダブリューは、ゆっくりと落下するサーシャを見つめる。

 その時、背後から猫月ゴマの声が響いた。


「サーシャとやら! お前の能力スキル……もらったぞ!」


 すみれ色をした光の靄が、サーシャを包み込む——。


「!? そんな、ワタクシの飛行能力が! いやあ あ あ あ あァァァァ」


 猫月ゴマに“飛行能力”を奪われたサーシャは——暗闇に沈む谷へと、吸い込まれるように真っ逆様に落ちていった。


「ああ、サーシャさんが!」


 アルス王子の声。

 振り向くと、犬から元の姿に戻ったアルス王子の姿があった。

 アタゴ山側の崖上で、茫然と立ち尽くしている。


「アルスさん、無事でしたか!」

「アルスくん! 良かった、元の姿に!」


 悠木ラヴィングは桃色の光を振り撒きながら、アルス王子の元へ向かう。

 ミオンWWWトリプルダブリューも背中にあるジェット噴射を利用し、アタゴ山側の崖上へと降り立った。


「勇者ミオンさん……なの……?」

「もう大丈夫ですよ、アルスさん。さあ次は、奪われた“生命の水”を取り戻しましょう!」

「アルスくん、私の手を握って! 私と一緒に休める場所を探そ!」


 変身した優志ミオンだとすぐには分からなかったようなので、ミオンWWWトリプルダブリューは腰のバックルからメダルを抜き取り、変身を解いた。

 装甲が、光と共に宙へと消えていく。


 悠木ラヴィングはアルス王子を連れ、山頂の開けた場所を目指した。


「これでサーシャもオダブツだな」


 頭上から、猫月ゴマの声。

 サーシャから奪った能力スキルで空中をフワフワと漂っていた猫月ゴマは、優志ミオンの目の前に着地。黒い髪が夜風に靡き、得意げな顔を覗かせた。

 

 雪白フレンズ天ノ河ブレイヴ癒月ヒーリング、そして稲村リュカも、優志ミオンの元へと集まった。


 ♢


 無事、サーシャを倒した。

 地殻変動も止まった。

 “ジャイアント・ディック”は完全にひしゃげてしまい、機能停止したらしい。


「ひとまず、強敵を倒せましたね。万歳しましょう!」

「「ばんざーい! ばんざーい!!」」


 優志ミオン稲村リュカ天ノ河ブレイヴは喜びの声を上げるが、横から入ったしゃがれ声が、明るい空気を遮断する。


「喜んでる場合じゃねえ。ソアラ相棒が……! 早く“生命の水”とやらを取り戻さなきゃいけねえ!!」


 猫月ゴマは、顔を歪めた。



————


※ お読みいただき、ありがとうございます。


 急げ、優志ミオン! 瀕死のソアラくんを助けなければ……!


楽しんでいただけましたら、

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【次週予告】


☆突然、アタゴ山の地面がプリンのようにぷるんぷるんに!?


☆そしてみるみるうちに巨大化する双子山——。


16.山肌モミモミ

17.モミモミ祭り

18.双子山、巨大化

19.急げ!!

20.喪いたくない


どうぞ、お楽しみに!

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