14.奇跡のゴマ
「オホホホホホホ……。騙されているとも知らずに、あなたは勇者の技だと勘違いして、その技を使い続けていたのですわ! “ドルチェ”、“サンデー”、“パフェ”は、魔族の技でしてよ。勇者ミオンさん、あなたはとうの昔に……魔族の呪いにかかっておりましたのよ!」
高笑いするサーシャの声が、暗闇の峡谷に響き渡った。
「まさか……、そんなはずは……。マーカスさんは確かに、勇者の技だって言ってました……」
「あーら、【予言の書】でもお読みになったのかしらね。それも、ワタクシたち魔族が書き換えたとも知らず……オホホホホホ……!」
「そんな……」
夢の世界“グランアース”に来た時から、既に魔族の呪いにかかっていた——。
膝をつく
「
「分かってる! おーい、ピアなんちゃら……だっけ、もう一度バリアを張るぞぉ!!」
「指図しないでちょうだい」
言いつつも、再び指先から黄金色の光を放ち、魔法のドームを作り出す
「な……魔力切れかよ!」
「ちょっと! しっかりしなさいよね! ……と言いたいけど、私もダメみたい」
「ダメって、じゃあどうすんだよ!!」
「うるさいわね。もうおしまいなのよ……」
「ふ……2人とも! 諦めないでください! 信じていれば、奇跡は起きるはずです……!」
諦めかけている2人に、
が、
信じていれば奇跡が起きる——こんなありきたりの言葉、届くはずもない。でも——。
「もうバリアは張れないようですわね。では、もう一度“パフェ”をお見舞いしてあなた方を潰し、アルス様をお父様のところへ連れて行きます。ごきげんよう、さようなら」
「“デス・アースクエイク”!!」
遥か遠くから響いてきたのは——
数秒後。
鈍い地響きののち、何かが爆発したかような音が突如として鳴り響き、繰り返し谷間にこだました。
「わ、わわわわ! 地震です! 皆さん、しっかり掴まってください!」
思わず姿勢を崩し、這いつくばる
「気をつけろ!! 振り落とされるぞ!」
「きゃあーー!?」
絶え間なく続く地鳴りとともに大地が激しく揺り動かされ、“ジャイアント・ディック”も大きく傾く。
「な……何が起きてますの……!?」
サーシャの慌てた声が響く。放とうとしていた“パフェ”の光は、消えていた。
ミシミシと響く、不吉な音。
左右の崖が、目に見えて互いに迫ってきている。不吉な音の正体は、崖に挟まれていた“ジャイアント・ディック”が、少しずつ押し潰され始めた音だったのだ。
装甲がひしゃげ、ヒビが入る——。
「リュカ、掴まって。脱出するわよ」
「お……俺、重いけど大丈夫なのかよ!」
「気合いで何とかするわ」
そんな中、
「ああああ! 飛田さんとアルスくんを置いてっちゃった!」
「……大丈夫です。自力で行けます!
やがて翠色の光に包まれ、勢いよく“ジャイアント・ディック”の甲板を飛び出した。エメラルドグリーンの彗星となった
直後、谷間からはいくつもの破裂音がこだまし、土煙が上がる。
“ジャイアント・ディック”のバナナ形の装甲は、歪な形に潰れてゆく。
後方で合体している、さくらんぼ形飛行物体の2つの実は、原型を止めぬほどに完全にひしゃげてしまっていた。
ニャハハハ、と豪快に笑う声が近付いてくる。
「どんなもんだ。ボクが地形を変えてやったぜ。これでその変な戦艦もオダブツだな、ニャハハ!!」
「ゴマくん!」
「ボクが“デス・アースクエイク”をブチかましたら、2つの山がデッカく膨らみ始めたんだ」
崖が互いに迫ったのは、
「ありがとうございます……! 助かりましたよ、ゴマくん!」
「やるなら今だぜ。あとはあの女をギャフンと言わせてやれ!」
「はい!」
大地の揺れは、収まる気配がない。
「行きましょう! 皆さん……」
「待て、
「わっ……!」
「な……何でしょう……?」
「最後の一撃は、お前が決めろ」
「こ……これは……? ゴマくんが変身に使うアイテムでは……? なぜ私に……?」
「
「ま……まさか……」
「急げ!」
「へ……変身っ!」
思い切って口にすると、
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