8.ピア・チェーレ、大奮闘!


「1人でワタクシに勝てるとお思いですの?」


 サーシャは“ロリータ・ホワイトステッキ”から3発、魔弾を放つ。

 それらは空中で弧を描くと、急加速して悠木ピア・ラヴィングの方へと向かっていった。


「悠木さん! “サンデー”!!」


 咄嗟に優志勇者ミオンは盾を構え、悠木ラヴィングの前に踊り出て魔弾を3発とも防御。

 こちらの攻撃の機会チャンスを作らねば……!

 矢継ぎ早に、“サンデー”を放つ。

 油断していたサーシャに、それは直撃した!


「くうっ!」


 怯むサーシャ。

 そこに、友莉ピア・フレンズが駆けつける。


「ラヴィング、行くわよ」

「うん! 飛田さん、ありがと!」


 優志ミオンは数歩退がり、悠木ラヴィング雪白フレンズを見守った。


(頑張ってください、悠木さん、雪白さん……!)


 悠木ラヴィングのサポーター——“ミューズ”が光に包まれながら出現し、ピョコンと飛び跳ねながら、悠木ラヴィングの武器“ドリーム・ハーモニカ”を手渡す。


「いくよ! “ドリーミング・ボサ・ノヴァ!”」

「みゅー! レッツゴー、ラヴィング!」


 悠木ラヴィングが“ドリーム・ハーモニカ”を吹き始める。ゆったりとしたリズムに乗せた甘いメロディが、響き渡った。

 すると、サーシャは戦意を喪失。力なく甲板に舞い降りると、その場にへたり込んだ。

 

 続いて、雪白フレンズのサポーター——“ピノ”が水色の光の中から現れると、雪白フレンズの武器“パッション・ギター”をちっちゃな体で必死に持ち上げ、雪白に手渡す。


「次は私ね。“ダンシン・イン・サンバ!”」

「フレンズ、やっちゃえぴのー! どっかーん!!」


 雪白フレンズが“パッション・ギター”を掻き鳴らし始める。

 情熱的なアップテンポの曲につられたサーシャは立ち上がると、腰をクネクネと振りながら怪しげな踊りを披露し始めた。


「な……何ですのぉぉぉ!? 嫌ですわ、ワタクシのこんな姿を見られるなんて……!」


 踊り狂い、“ロリータ・ホワイトステッキ”も甲板の上に落としてしまう。隙だらけになったサーシャ。


 そこへ、天ノ河ピア・ブレイヴのサポーター——“ロウ”が出現。

 毛むくじゃらの体で跳ね回り天ノ河ブレイヴの元へ近づくと、天ノ河ブレイヴの武器、“アドヴァンス・トランペット”を大きな口から出した。


「僕もいくよ! “チアリー・ファンファーレ”!」


 今度は天ノ河ブレイヴが、“アドヴァンス・トランペット”を吹き鳴らす。

 すると——ロウが光を放ち始め、みるみるうちに姿を変えていく!


「ロウ、行け! モード・銀狼シルヴァーウルフ!!」


 ロウは毛むくじゃらの丸々とした体から、体長2メートルほどの立派なオオカミの姿へと変化を遂げた。

 艶やかな鈍色にびいろの体毛が、風になびく。


「ガルオォォォン……! 見せてやろう、俺様の力ァ!!」


 銀狼ぎんろうと化したロウは大きく吠えると、ジャイアント・ディックの甲板を駆け抜け、空高くジャンプ。

 真っ赤な月に、銀狼の影が映る——。


「な……!?」


 踊り狂っていたサーシャは、避けることができない。

 空中から急降下したロウは、ガブリとサーシャに噛みつき、彼女を口に咥える。


「いやあああ! 放しなさい!!」

 

 牙が刺さり、紫色の血が甲板に滴る。

 ロウは首をブンと振って口を開け、サーシャを放した。

 勢いよく飛ばされたサーシャは——暗闇に沈む谷間へと飲み込まれていく。


「こ、これで倒せた……のでしょうか?」


 優志は息を飲みつつ、暗闇の底へと落ちていくサーシャを見つめていた。

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