7.怒りのサーシャ
「あなた、軽いわね。もっと食べなさい」
「……それ、よく言われます。割と食べてるんですがね……」
気づいた
「飛田さん! アルスくんが!!」
「悠木さん! 無事でしたか……!」
アルス王子はやわらかなピンク色の光に包まれたまま、座り込んでいる。
「チッ……来ましたわね。ごきげんよう、勇者ミオン」
空中からサーシャの声。振り向く優志。
サーシャの後ろでは、巨大な桃形飛行物体がホバリングしている。
「面倒ですわ……。みんな仲良く、毒殺してさしあげましてよ!!」
怒りの滲んだサーシャの声と共に、桃形飛行物体の中央部を縦に走る割れ目から、再び赤黒い瘴気が吐き出され始めた——。
「ううっ……へくしっ! ひくしっ! か、花粉症があああ」
「く……肩こりが……腕が動かない……」
「うう……何だか、戦うのが怖くなったよぅ……」
「
「いなちゃん! 大丈夫ですか……! ぐ……!」
そして、症状を治す“生命の水”は、この場には無い。
「へっくし、ひっくし!! ア……アルスくんは、何で平気なの!?」
アルス王子は相変わらずピンク色の光に包まれながら眠っているが、苦しげにする様子はない。
「オホホホ……愛しのアルス様は、
サーシャは自身の武器“ロリータ・ホワイトステッキ”を翳し、魔力を集め始めた。
禍々しい光が集まっていく。
「アルスくんは……私の最推しは……渡さないよ! ぶえっくし!」
「悠木さん! 危ないです!」
「飛田さん! ダメっ! きゃああ!!」
サーシャは杖の先から、巨大な魔弾を
ところが!
「任せなさい。“レスト・ハープ!” “ヒーリング・ミュージック”!」
瞬時に、ドーム状の黄金色に輝くバリアが、
魔弾はバリアに弾かれ、虚しくも消滅。
「助かりました! あれ……体が楽になりました」
「わあ、くしゃみが止まったよ!」
「あ……肩が楽になった。ていうか、誰……あの子?」
「おおっ! 勇気がもりもり湧いてきたぞーっ!」
「うお、何だ何だ? 俺以外にも癒しの力を使える奴がいるのか?」
彼女の癒しの力が、ピンチを救ったのである。
「別にあんたたちを助けたかった訳じゃないから。サーシャの悔しそうな顔が見たかっただけ。分かったんなら、さっさと戦いなさい」
「オ……オホホホ。お仲間が増えて楽しそうですこと。なら、1人ずつ潰して差し上げますわ。まずは……愛しのアルス様を付け狙うピア・ラヴィング! あなたからですわよ!」
サーシャは不敵な笑みを浮かべ、
「アルスくんには近づかせない! 私の推しは、私が守る!」
「悠木さん! 1人で戦ってはダメです……!」
優志は忠告したが、
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