10.ワンコ王子


 サーシャは、強張らせていた表情を綻ばせた。頬が赤く染まる。


「まさか両想いでしたなんて……。ワタクシ、今とっても……幸せですわーーーー!!」


 ピンク色のバリアに包まれるアルス王子に、一歩、そしてまた一歩、歩み寄るサーシャ。


「オホホホ……ワタクシ、低身長男子には目がありませんの。その中でもやはりアルス様は……。ワタクシの好み、ド・ま・ん・な・か、ですわー!!」


 身長165cmのアルスは照れくさそうに両手で顔を隠すが、身長170cmのサーシャは遠慮無しにアルスのフワフワとした茶髪をひと撫でする。


 が、その後ろから身長175cmの優志ミオン、身長180cmの稲村リュカが迫る——。

 

「ん……? あなたたちは、お呼びではありませんのよ!!」

「うわああっ!」

「ぐべっ!?」


 振り向いたサーシャは優志ミオン稲村リュカの顔面に“ロリータ・ホワイトステッキ”を勢いよくぶつけた。

 弾き飛ばされ、尻餅をつく優志ミオン稲村リュカ


「何とふくよかなお姿ですこと。でも、もう少しスリムになられた方がよろしいのではなくって?」


 サーシャは嫌味っぽく言いながら、尻餅をついた稲村リュカを見下ろす。


「……そんなふうに遠回しに言われると、何かグサッとくるな……」


 稲村リュカは脂肪だらけの自身のお腹をつねって、はあとため息をついた。


 次いでサーシャは、優志に向けビシッと指をさす。

 自分は何を言われるのかと、ビクつく優志。


「勇者ミオンさん。あなたは……細すぎますのよ! このガリガリ! ちゃんと食べてますの!?」

「私にはストレートに言うんですか!?」

「ガリガリとしか言いようがないですわ! ちゃんと栄養のあるものをお食べになって!! お肉を! もっとお食べなさい!!」

「こ、これでも意識して食べてますよ! そこまでガリガリではありませんから!」


 優志ミオンとサーシャが言い争っているそばで、悠木ラヴィングはその場に座り込んで俯いていた。


「……帰ろっか、フレンズ。アルスくん……私なんか眼中にないんだ……」

「悪くないわね、ラヴィング。私も文矢くんに嫌われたから」


 立ち去ろうとする2人の元に、天ノ河ブレイヴが慌てて駆けつける。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 折角“ピア・チェーレ”が4人揃ったのに! まだ全員での必殺技を披露してないのに!!」


 癒月ヒーリングはというと、そんな3人を見てため息をついていた。


 優志ミオンは未だに、サーシャと言い争っている。お互い、ヒートアップする一方である。


「サーシャさんこそ! もう少しふっくらした体型の方が、男目線からは好みだと思いますよ!」

「ワタクシは殿方のために、おダイエットしてる訳ではありませんのよ!」


 体型に関することは、男女問わず地雷になり得る。互いに地雷を踏まれ、ますますヒートアップする優志ミオンとサーシャ。


 稲村リュカはその隙に、「綺麗な人……サーシャさん……負けないで」などと呟いているアルスの元へと駆け寄る。


「おいアルス! アイツは人間じゃねえ、魔族なんだ。魔王軍の幹部なんだぞ! 目ぇ覚ませ!」


 だが、アルス王子の目はサーシャに釘付けである。


「あーもうアルス! 俺が安全な場所まで運んで……」

「余計なことをしないでくださいます?」


 いつの間にか言い争いを中断したサーシャが、“ロリータ・ホワイトステッキ”から2発の魔弾を放った。


「ぐわ!!」

リュカいなちゃん! 大丈夫ですか!?」


 魔弾は稲村リュカの腹部に直撃、僧侶の法衣を黒く焦がす。


 そしてもう1発の魔弾は——アルス王子に直撃。


「アルスさん!!」


 思わず目を覆った優志——。

 恐る恐る、目を開けてみる。そこには——。

 

「あ〜ら、何と可愛らしいお姿ですこと。オホホホ……。ワタクシの従順な犬におなりなさい」


 子犬となった、アルス王子の姿があった。



 ————————


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【次週予告】


☆「やいやい! よくもボクのを半殺しにしてくれたな! サーシャとやら……テメエを倒して、ソアラ相棒を救うんだ!」

 ゴマくん、再び人間の姿で戦線復帰!


☆「ちょっと、私の部屋の空気が吸いたいです……気持ちを落ち着けて、いつもの自分に戻りたい……」

 優志ミオン、戦線離脱——。


☆ついに解放、——究極魔法“パフェ”!


優志ミオンと4人の“ピア・チェーレ”、合体必殺技が完成!? 今度こそサーシャ撃破なるか!


11.猫月ごま、復活!

12.優志、戦線離脱!?

13.究極魔法“パフェ”

14.奇跡のゴマ

15.勇者のメロディ


どうぞ、お楽しみに!


 

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