5.ヒーラー・ガール
「あなたね……勝手にワープゲートを使っていたのは……」
優志の隣に突如、ミランダが姿を現した。
「あ! 見つかっちゃったくま……」
テディベアはその場でピョンと飛び跳ね、尻餅をつく。
「クマーンちゃん! このことは女王様に報告するわ」
ミランダはビシッとテディベア——“クマーン”を指差した。
「ご……ごめんなさいくま! 緊急事態だったから、ロウと一緒に使わせてもらったくまー……。すぐに魔力を返すくまー!」
「ロウくんまで……。信じられない! 後でゆっくり話をしましょう! 全く!」
ミランダと、ロウ、クマーンは同じ精霊界に住む者同士の、知り合いだったのである。
ちなみに悠木のサポーター、ミューズはまだ生まれたばかりなのもあり、ミランダとはまだ会話を交わしたことはない。
そんなミランダたちに興味なさげな癒月は、山頂の方へと体を向ける。
「肝心のゴマは来てないのね。まあいいわ。ひとまずついてきて」
「あ……はい。でも山頂は人の気配はないですが……」
「黙ってついてきなさい」
相変わらずの有無を言わさぬ態度に優志は辟易しながら、癒月の後をついて行った。
♢
「気をつけて。さっき、ここで敵にやられたの」
「それでそんなに傷だらけに……。大丈夫ですか……? 他の皆さんは一体どこに……?」
「先に谷間の方へワープして行ったわ。でも私だけ敵襲に遭って、置いて行かれてしまった。不覚だったわ」
山頂に到着。
真っ赤な
優志が癒月に案内された場所は、広場の中央部にある、尖った形状の岩であった。
「これ見て。元々、この岩から“生命の水”が湧き出ていたんだけど」
優志は岩に手を触れる。
岩はすっかり、カラカラに渇いてしまっていた。
「……本当にここから“生命の水”が……? 全く水が出る気配がないんですが……」
「サーシャが、この山から湧き出る生命の水を奪ったんだわ。早くみんなの所に行かなきゃね。でもその前に……」
突然、赤黒い瘴気が山頂に立ち込め始めた。
同時に、風船のような体を持つ魔物——“モクモックン”の群れが、山頂広場を囲み始める!
「……この魔物たちを、始末しなきゃね! 勇者ミオン、戦うわよ」
「は……はい! あの、癒月さん、あなたも戦えるのですか?」
優志が尋ねるや否や、癒月の体がレモン色の光に包まれ始める。
「当たり前。舐めないで。クマーン!」
「くまくまー! 【リカバリー・チューニングメーター】を受け取るくま!」
宝石があしらわれた、薄く四角い機械—— “リカバリー・チューニングメーター”を受け取った癒月は、光に包まれながら片腕を上げた。
「……変身! 女神の聖なるエネルギーは、大切な誰かを癒す力! チューニング、スタート!」
レモン色の光は、衣装やアクセサリー変化し、瞬く間にドレスアップされる。
黄金色に輝くツインテール。
ルビーのような輝きを放つティアラ。
可愛らしい子グマの装飾と12色のカラフルな宝石があしらわれた、燃えるようなオレンジ色のワンピース——。
「世界が必要としているのは、魂を癒す
4人目の美少女魔法戦士“ピア・チェーレ”の登場を、優志はただただ呆然と見つめていた。
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【次週予告】
☆ 「みんな仲良く、毒殺してさしあげましてよ!!」
ついにサーシャと対決! 再び襲い来る、赤黒い瘴気——。
☆ 「アルスくんには近づかせない! 私の推しは、私が守る!」
悠木VSサーシャ。勝負の行方は——。
☆ 「ワタクシは殿方のためにおダイエットしてる訳ではありませんのよ!」
サーシャの地雷を踏んだ優志のせいで、一同大ピンチに——?
6.急行、合流
7.怒りのサーシャ
8.ピア・チェーレ、大奮闘!
9.衝撃告白
10.ワンコ王子
どうぞ、お楽しみに!
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