3.ミランダも、瀕死
優志は、ピンク色の光に包まれたアルス王子の元へ駆け寄った。
「ア……アルスさん! 大丈夫ですか……!」
「う、うん。平気だよ。変な赤いガスを吸っても、全然何ともないんだ。“生命の水”も飲んでないのに。何でだろ?」
優志は、桃形飛行物体の下部から細長い桃色の光が出ているのを確認する。その光が、アルスへと繋がり、彼を包みこんでいたのである。
「アルスさん、気をつけてください!」
「あれ? そういえばサミュエルは……?」
全く危機感のないアルス王子だった。が——。
「え? ……うわああ!」
アルス王子の体が、ふわりと宙に浮く。と思えば、ピンク色の光が広がっていき、スーッと上空へ吸い寄せられていく——。
「アルスさん!!」
「わー!! 助けてぇーー!!」
桃形飛行物体の下部から放たれたピンク色の光がアルス王子を吸い寄せる様は、まるでUFOに
「アルスさん!!」
1分も経たぬうち、アルス王子は桃形飛行物体の下部にある穴へと、吸い込まれてしまった。
その後、桃形飛行物体は双子山の方へと、音もなくスーッと飛び去っていく。
「ああ、アルスさん……!」
「何なんだよ、アレは……。ミオン様! 早く追いかけなきゃ!」
「でもー、ワープゲートが使えないんでしょー?」
3人で頭を抱えていた、その時。
空に青黒く光る雲が立ち込めたかと思うと、突如、鼓膜を貫くほどの破裂音がグラウンドに響き渡った——。
「ノコリノ魔物ハ、始末シタゾ……」
そこには、緑色の髪の長い髪に怒り肩、筋肉ムキムキ巨大なオレンジ色の怪物の姿があった。
腹部にある巨大な目玉から放たれた光線が、グラウンドにいたヘドーラとモクモックンを一網打尽にしたのである。
「あ……ありがとうございます……。確か、あなたは……?」
怪物は光に包まれ、元の姿——坊主頭の20代男性——へと戻っていく。青黒い雲も、徐々に消えていった。
彼は準決勝でソアラと対決した、【マサオ】である。
「……ふう。少しでも勇者様の力になれて、光栄です。頑張ってください」
「マサオさんでしたか。ありがとうございます、助かりました。それよりあの、服を着ないと風邪を引きますよ……?」
パンツ一丁のまま優志と握手を交わしたマサオは、すぐにイングズの元へと向かう。そして苦しんでいる人々に、生命の水を飲ませて回った。パンツ一丁のまま。
優志は、何とかして双子山へと向かえないものかと考えを巡らせたが、結局——。
「ミランダさん、来てください……」
彼女を頼るしかなかったのである。
「優志くん……うう……ガハッ……!」
が、現れたミランダは苦しげな顔をして、地面に墜落。
ガクガクと体を痙攣させるミランダ。背中の羽も、ひしゃげてしまっている。
「ミランダさん!?」
「ちょ、大変だよ!」
「ミランダちゃんから……魔力が感じられないわー……」
ミランダを包む光も、弱々しくなっていた。
彼女は力を振り絞り、事情を説明する。
「ごほっ……誰かが……私の魔力を……奪ってる……」
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