36.勝利と慢心
186cmの長身の
猫月の瞳孔は、濃い紫色になった。
「【暁闇の勇者・ゴマ】!」
人間体の“暁闇の勇者・ゴマ”、誕生である。
艶やかな黒髪に前髪だけが銀色に染まる。頭には、金色に輝く勇者の冠。背中には、紫色の大きなマント。
「さあ、行くぜ……おっと、剣は置いてかなきゃいけねえのか」
勇者ゴマが“魔剣ニャインライヴ”を
そして勇者ゴマは紫色のオーラに包まれたまま、ゆっくりと東側控え室に向かっていく。
「何だ、あいつは!」
「近くにいるだけで、とんでもない魔力を感じるぞ!」
観客たちが恐れ慄き、勇者ゴマが進もうとする道をあける。
「ゴマくん……。競技場を破壊したりしないでしょうか……」
「ハハハ、あいつならやりかねねえな!」
「ソアラくん、笑い事やあらへんよ……。一応釘刺しとこか。……ゴマァーー! ちゃんとルール守って戦いやぁー!」
♢
「第1試合、チームDは……猫月ごまVS魔女っ子メメ、田中
猫月の姿は、観客席から見てもひときわ目立つ。
猫月と対戦するのは、
勇者ゴマの迫力ある姿を見ても、怖気付かない。
「あなた、強そうねッ! でもこの天下無敵の魔女っ子、メメがやっつけちゃうんだから!」
勇者ゴマは紫色のオーラを纏いながら、黙って魔女っ子メメを見つめていた。
戦いのゴングが鳴る——。
「Ready,Fight!」
ゴングの音とほぼ同時のことだった。
グラウンドで、紫色の火柱のような閃光が空高く突き上がる——。
「な、何が起きたんですか……!?」
「ゴマ……!? まさか……!」
「勝者、猫月ごま!」
会場の誰もが、何が起きたのか分からぬ間に、勝敗は決まっていた。
歓声が起きるどころか、観客は恐怖のあまりに固まってしまっている。
勇者ゴマは、不敵な笑みを浮かべながら言った。
「何も壊してねえし、殺してもいねぇ。文句ねえだろ?」
勇者ゴマの放った紫の炎に焼かれ、倒されたと思われた魔女っ子メメは、何と無傷。
しかし、彼女の魔法攻撃の要であった“魔女の箒”を完全に灰にされてしまったため、攻撃手段を失ってしまった。そのため、メメは即、ギブアップしたのである。
「覚えてなさい……ぴえん」
メメは西側控え室へ、とぼとぼと帰っていった。
♢
「ご……ゴマくん。さすがです……」
「
「メメちゃん、あの箒、大事そうにしてはったし、ちょっと可哀想やったな」
転身を解いた
「お前ら、安心しろ。この大会、ボクが優勝する。あのサミュエルとやらは少々やり手のようだが、ボクにかかりゃあ、あんなの敵じゃねえ」
「
「慢心なんかしてねえ。以前のボクとは違うんだ……ふああ、さて寝るか」
猫月は観客先に座ると、すぐにいびきをかいて眠ってしまった。暁月はそっと猫月の頭をなでてやり、その様子を見た優志はフフッと笑う。
悠木、雪白は、応援に疲れたのか観客席で互いにもたれ合いながら居眠りをしている。
そして——その様子を後ろからじっと見ていたのは——黒髪の、美少女だった。
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