35.出現! 大雪だるま


 次の試合は、第1戦チームC。

 アルス王子の出番である。


「修司くーん!! 頑張ってええええーー!!」

「悠木さん……修司さんではなくてアルスさんですよ……? まあ同一人物ではありますけど……」


 観客席では、雪白と入れ替わるように悠木がアルス王子に大声で声援を送る。優志ミオンの声など聞こえちゃいない。

 ちなみに雪白は応援に力を注ぎすぎたためか、電池が切れたように眠りこけている。


「ったく、わけぇなあ2人とも」

「悠木さんも雪白さんも、中学2年生ですからね」


 リュカと優志はソーダフロートを飲みながら、準備が進むグラウンドを眺めていた。


 猫月ゴマは相変わらず配信に夢中になっており、暁月スピカ蒼天ソアラは時々ゲスト気取りで猫月のトークにツッコミを入れたりしている。

 サラーとラデクは、競技場の周りにある出店を見て回っていた。


 ♢


「1戦目チームC、アルス王子VSガリ、ウェンディVS影丸、ミスター・タチバナVSアレン、アヤVSセシル! Ready……Fight!」


 ゴングが鳴り響き、4つのフィールドで、チームCの試合が始まった。

 優志たちは、戦うアルス王子に注目する。

 アルス王子と対峙する敵は、破れかかったランニングシャツと黒いパンツを穿いた、スキンヘッドの男“ガリ”。蹴り技を得意とする。


「行くぜぇ、坊ちゃん!」


 ガリは早速、蹴り技を仕掛ける。

 アルス王子は、青色のマントを翻しながら蹴り攻撃を華麗にかわしつつ、呪文を詠唱する。


「……【アイスボール】!」


 アルス王子は、輝く雪玉のような魔法弾を3つ、ガリ目掛けて放った。

 ガリは顔を歪めながら、何とか3つともかわす。


「クソ! 生意気な王子め。魔法など、卑怯な!」

「へへっ。ルールにはちゃんと魔法は使っていいって書いてあったもんね! それっ! 【ビックアイスボール】!」


 アルス王子は楽しげに両手を翳すと、空から直径1.5mほどの雪玉が、ガリの真上目掛けて落ちてきた。


「ぐわ!!」

「もういっちょ! 【さっきよりちょっとちっちゃいビックアイスボール】!」


 大雪玉に埋もれたのち、すぐに雪玉の上部に顔を出したガリ。しかし次の瞬間、もう1つのアイスボールがガリの頭部に落下、完全に埋もれてしまう。


「えへへ、あとは……」


 アルス王子は、上にあるアイスボールに黒い眉、目、鼻、口をなぞる。マヌケな顔が描かれていき、巨大雪だるまが完成した。


「……勝者、アルス王子!」

「やったぁー!」


 もはや動くことはできないと判定され、アルス王子の勝利が確定した。

 湧き上がる歓声の中でも、悠木の「修司くーん!! おめでとうー!!」という声が1番目立つのであった。


 ♢


「ゴマ! 出番やで!!」

「あ? ……ああ、めっちゃ寝ちまってた」


 配信で喋り疲れ、観客席で居眠りしていた猫月。暁月に起こされ、ようやく猫月が参加するチームDの第1試合が始まることに気づく。


「ゴマくん、ばっちり決めてきてくださいね」

「相棒! 期待してるぜ!」


 優志と蒼天が激励するが、猫月は余裕そうな表情で席を立つ。


「フン、当たり前だぜ。テメエらが途中で負けたとしても、ボクが優勝して船をゲットすることは保証してやる。……!」

「え、相棒、お前!?」


 猫月は右腕を掲げ、【星猫戦隊コスモレンジャー】への【転身】の言葉を口にする。

 まさか、人間の姿のまま転身するというだろうか。

 猫月の周囲に、紫色の光が集合していく——。


 人間バージョンの【暁闇の勇者・ゴマ】——果たして、どんな姿になるのであろうか。


————


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【次週予告】


☆ 「あなた、強そうねッ! でもこの天下無敵の魔女っ子、メメがやっつけちゃうんだから!」

 人間体・暁闇の勇者ゴマに立ち向かうのは、“魔女っ子・メメ”!


☆ 「……まだ動きがない、か。じゃあ僕もちょっとだけ試合を見ていこうかな。いいよね、ロウ」

「ガウ!」

 謎に満ちた黒髪の美少女が、競技場に現れる——。彼女は一体、何者なのか?


☆ 「まるで周りが見えていないな。その程度なのか? 勇者様とやらの力は」

「……まだありますよ、私だけの特技が……! この曲を聴いてもらいましょう……」

 第2戦で優志は、強敵サミュエルと戦うことになってしまう。見事、勝利を飾れるのか?


36.勝利と慢心

37.第2戦に向けて

38.緊張という強敵

39.激戦! 優志VSサミュエル

40.我が人生を誇れ・2


どうぞ、お楽しみに!

 

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