28.開会式


 出場者の定員は32人だが、電光掲示板には22人の表示でカウントがストップしていた。

 蒼天ソアラは提案する。


「定員がこんだけ空いてるなら、戦える奴はみんな参加しねえか!? オレたちで優勝した奴が1人でもいれば、船ゲットできるぜ!」

「それもいいですね。でも……仲間同士で当たる可能性もありますよね……」


 優志ミオンは不安げに、仲間たち1人1人の顔を眺める。一方猫月ゴマは「上等だぜ」と乗り気であった。

 血の気の多い稲村リュカは、意外にも出場を辞退するようである。


「ミオン、俺はやっぱ、誰かが怪我した時に備えて見学しておくぜ。俺はか弱き僧侶だからな」

「え、リュカは出ないの?」

「ああ。サラーちゃんが怪我した時に、すぐに治療できるようにな」


 ラデクは顔を赤らめ、すかさず突っ込む。


「サラーだけかよ!」


 そんな優志たちを少し離れて見ていたサミュエルは、優志たちの話がまとまったタイミングで歩み寄り、指を差した。


「俺が勝ったら、船はいただくぞ。俺はまだお前たちを仲間と認めたわけじゃない。……船を手に入れ魔王の島へ渡り、魔王を倒すのは……俺だ」


 そう言い切るか言い切らないかのタイミングで、アルス王子がまたもサミュエルにまとわりつき始めた。

 

「サムったら、またまたー。この人たちいい人たちだよ、きっと」

「アルス、話は大会が終わってからだ。お前も俺と当たるかもしれないんだから、覚悟しておけ。さあ、エントリーに行くぞ」

「ちょっとー、サムー!」


 サミュエルとアルス王子は、先にエントリーをしに受付の方へと行ってしまった。

 優志は小声で「きっと大丈夫です。私たちの誰かがきっと優勝し、アルスさんたちもきっと仲間になってもらえます!」と呟き、拳を握りしめた。


 ♢


 天下一武術大会に参加するのは、優志、サラー、猫月、蒼天の4人。

 優志たち4人は覚悟を決め、受付にあるタブレットにサインをした。


「エントリー完了です。間もなく開会式がありますので、グラウンドへお越し下さい」


 出場組の優志、サラー、猫月、蒼天は、観覧組のリュカ、ラデク、暁月、悠木、雪白と別れ、グラウンドへと向かった。

 

 ついに、“天下一武術大会”の幕が開く——。


 ♢


「本日10月10日、今月引退の海賊団【キャスター】主催、“天下一武術大会”を開催いたします! 優勝者には、海賊団が現役時に使用していた、海賊船が贈られます!」


 青空の下、打ち上がる花火とともに開会のアナウンスが響く。グラウンドを取り囲む4層の観客席から、拍手と歓声が湧き上がった。

 グラウンドにある壇の前には、出場者32名が整列している。

 程なくして壇上に、主催者である海賊船長【イングズ】が姿を現した。


「“キャスター”の船長、イングズだ。パンフレットにも書いたが、試合のルールを改めて説明させてもらうぜ」


 “天下一武術大会”のルールは、次の通りである——。

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