27.ウキョー競技場へ
「その猫耳に尻尾……猫ちゃんのコスプレかい? んー、可愛いねぇー!」
アルス王子が、猫耳と猫の尻尾がピョコンと飛び出た猫月、暁月、蒼天の周りをまとわりつくように歩き回る。
「何やってんだアルス! 集合時間に遅れる。置いていくぞ」
サミュエルは苛立ちながら、その様子を見ている。
猫月たちは、首を傾げながら自身の頭を触っていた。
「コスプレだと? んな訳ねえだろ……あれ!?」
「うお! 何だこりゃあ! オレの頭に猫の耳が!?」
「ウチもや……。気ぃ抜いたら、猫耳とか尻尾が出てしまうみたいやな」
3人は同時に「ニャアッ!」と言って気合を入れ直すと、それぞれの猫耳と尻尾は音もなく引っ込んだ。
その様子を見たアルス王子が「ハハハッ」と笑い声を上げる。
「面白い人たちだなぁー。サム、やっぱりこの人たちと一緒に行こうよ!」
アルス王子の声を聞いた
(やりました。ゴマくんたち、ナイスです。でも今後怪しまれないように、猫耳と尻尾が出ないように気をつけてもらわないといけませんね……)
しかしサミュエルは、呆れ顔で首を横に振る。
「先に天下一武術大会だろう。大体お前はいつも、決めたことを最後までやり切らずに、すぐにあれこれ目移りするから、いつも中途半端なことになるんだ」
サミュエルのその言葉を聞いた優志はすかさず駆けつけ、話に割って入った。
「サミュエルさん、私たちもその天下一武術大会に出るんですよ。よろしければ会場まで一緒に行きませんか?」
「あ! 勇者様だ。いいよ、行こう行こう!」
サミュエルが返事をする前に、アルス王子は嬉しそうに優志にまとわりついた。
「はあ……。俺たちは天下一武術大会では敵として戦うことになるかもしれないのに。呑気な勇者だ……」
サミュエルはまたもため息をつき、仕方なく優志たちについて行くことにした。そして、小声で付け加える。
「まあいい……、どうせ、勝つのは俺だ」
サミュエルの言葉に気付かぬ優志は、いつの間にかコンビニで雑誌の立ち読みをしていたリュカ、圏外のスマホでも遊べるオフラインのゲームをラデクとサラーに見せていた悠木、雪白たちを呼ぶ。
一行は天下一武術大会の会場である【ウキョー競技場】へと向かった。
♢
“ウキョー競技場”——。
屋根のない、4層の観客席に囲まれた、コロッセウムのような楕円形のグラウンド。
8レーンある陸上競技用の400メートルトラックがあり、その内側には天然芝のグラウンド。
そこに、十字形に白線が引かれている。予選で、試合を同時に4組行うためである。
午後2時前、人で賑わう競技場の入り口に到着した優志たち。
重いプラチナの装備に、優志はすでに息が上がってしまっている。
入り口の近くにある電光掲示板には、『出場の定員まであと12人。未成年は参加できません』という表示。
それを見た悠木とラデクが肩を落とす。
「私たち強いよ? ダメなの?」
「ちぇー。俺も参加したかった!」
「愛音、諦めましょ。それより推しの活躍を見ましょうよ」
「それもそっかー!」
出場できないことをすんなり受け入れた雪白、切り替えの早い悠木。
一方、ラデクはうなだれ続ける。察したサラーは「よしよし、まだこれからいっぱい戦えるから」と言いながら、豊満なおっぱいにラデクの顔面を押し付けた。それを、リュカは見て見ぬ振りをするのであった。
「ウチ……ニャガルタやと未成年やしなあ。やっぱウチは参加したらあかんのかな? まあどっちにしろ乱暴なんは好かんし出えへんけど」
「普段はめちゃくちゃ乱暴なのにか?」
「なんやてーゴマ」
「いででで! やめろスピカ! そういうとこだ!」
パーティーみんながそれぞれ駄弁り始め、放っておくとどんどんまとまりがなくなっていく。
早く出場者を決めないと、定員が埋まってしまう。優志は手を叩いてパーティー全員の注目を促した。
「はい、皆さん! 出場者を決めましょう」
候補は、優志、リュカ、サラー、猫月、蒼天。
誰が出場することになるのだろうか——。
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