25.優志、アルス王子と再び出会う


「ほな荷物まとめてチェックアウトするで!」


 暁月に叱られてシュンとしている猫月、蒼天、そしてリュカ。しばらくは大人しくしている様子だったので、その後は滞りなく優志たちは“みやこINN”をチェックアウトした。


 商店が立ち並ぶ、舗装された道路を歩いていると、聞き覚えのある声が優志たちの耳に入る。


「あ! 飛田さんだー!」

「ここ、ほんとにこないだの夢の世界なの? 現実とほとんど変わらないじゃない」

「悠木さん、雪白さん!」


 ミランダのワープゲートでワープしてきた悠木、雪白は、予定通りウキョーで優志たちと合流することができた。


「ねーね飛田さん、あそこに“くろ寿司”あるよ! お昼あそこに食べに行こうよ!」

「……ほんとですね。先に天下一武術大会の集合時間をもう一度確認しますから、ちょっと待……」

「寿司!! マグロ!!」


 途端に元気になった猫月の声を聞き、再び優志の心が重たくなっていくのだった。


 ♢


 集合は午後2時からだったので、午前中は商店街を散策し、その後は昼食を食べに“くろ寿司”へ行くことになった。

 まさか、夢の世界で回転寿司を食べることになるとは思いもしなかった優志、リュカ。


「リュカ、もう30皿目だよ? 胃袋どうかしちゃってるんじゃないの……?」

「こちとら朝飯食ってねえんだ! ああ、美味え!!」


 とても40代半ばとは思えぬ食いっぷりである。健康的でとてもよろしいが、一方で優志は残金を気にして食欲が減退していく。


「おいしーい! これがお寿司かあ! うわっ、何これ、辛くてヒリヒリする!」

「ラデクー、ほっぺたにご飯粒たくさんついてるわよー。その辛いのはワサビっていうらしいわー」

「「マグロだマグロ!」」


 初めてのお寿司に、ラデクとサラーも舌鼓を打つ。

 リュカと同じく朝食を食べそびれた猫月と蒼天は、次々と赤身、中トロを口に放り込む。うずたかく積まれるお皿。暁月が「腹壊すで!」と忠告するが、まるで聞いていない。


「デザートは別腹ー! いっただっきまーす!」

「愛音、お寿司よりパフェの方を多く食べてない?」


 おまけに悠木は、パフェ、ケーキなどを頼みまくる始末である。


「合計6,000ゴールドですね」

「……ギリギリ足りました……」


 駐車場で駄弁る他のメンバーをよそに、優志は1人で会計を済ませる。


ゴールドはパーティー共有ですから、みんなには使い道も考えてもらわなくては……。あるいは、やはり個人持ちにすべきか……? ああ、言うべきことは言わなければいけない。ああ、プレッシャー。こういうの、苦手なんですよね……)


 ぶつぶつと独り言を言いながら優志は外に出ると、悠木が駐車場で見知らぬ男2人と話をしているのを発見する。


 不審者かと思った優志だが、他のメンバーは平然と駄弁り続けていたのと——男2人組のうち1人が、見覚えのある人物だったので、優志は少しホッとした。


 その人物は—— 現実世界における男性アイドルグループ“ジョーカー&プリンセス”の【北村修司】の、青いタキシードを身につけた人物。165cmのやや低い身長に、ふわふわの茶色い髪の、20代前半の男の子。

 つまり——。


「修司くん! 修司くんだよね! いつも応援してます!! 一緒に写真撮ってください!」

「えっと……、君は? 僕はアルスだが」

「あるす? え? 人違い……?」


 やはり、アルス王子であった。

 悠木とアルス王子の会話を聞いた優志は、2人のもとへ駆け寄った。


————


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【次週予告】


☆ 『あたしの分かる限りのことだけど、夢の世界へ行く時、優志くんや稲村くんみたいに記憶を持ったまま行く人と、修司くんみたいに記憶をなくして行く人がいるみたいね。このまま夢と現実が一体化したら、夢と現実のどっちかの記憶が消えちゃう可能性もあるわ』

 ミランダが予測した最悪の悲劇——。


☆ 「俺が勝ったら、船はいただくぞ。俺はまだお前たちを仲間と認めたわけじゃない」

 アルス王子と共に現れた、もう1人の男。彼も“天下一武術大会”に出場するようだが、その実力とは——。


☆ついに“天下一武術大会”開幕!

(私は非力です。ですが……私なりの戦い方があるんです!)

 優志は、初試合で勝利を収められるのか?


26.王子と魔法戦士

27.ウキョー競技場へ

28.開会式

29.“天下一武術大会”開幕!

30.優志、第1戦


どうぞ、お楽しみに!

 

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