13.成長期のラデク
「ラデクくん、お久しぶりです……!」
優志が挨拶した直後。
ラデクはその場にしゃがみ込み、咳き込んだ。
喘息が、再発していたのである。
「ラデクくん!」
駆け寄る優志。
優志の後ろにいた暁月と蒼天、悠木と雪白は心配してその様子を見守る。
「げほっ……。ぼく……いや、俺は大丈夫だよ、ミオン様。俺たちは一旦村に帰って、ミオン様が来るのを待ってたんだ。早く【生命の巨塔】を直しに行こう……げほげほっ!」
雪白のバッグから、申し訳なさそうに顔を覗かせていたのは——ピノである。
かつて魔王軍の手先として、オトヨーク島の健康の要——生命の巨塔の【ゴールデン・オーブ】を奪い去ったピノ。
ゴールデン・オーブを取り戻した優志たちの前に現れたピノは、【サイクロンジェット・キャノン】を操り、一度ラデクの命を奪った。幸いゴールデン・オーブの力でラデクはすぐに蘇生した——そんな過去がある。
因みに生命の巨塔は優志たちの活躍で一度修復されたが、魔王軍幹部——ヴィット、サクビー、サーシャの手により再び破壊されてしまっている。
ピノはラデクに見つからぬよう雪白のバッグに隠れていたが、ウサギのような耳がはみ出し、丸見えである。
「げほ……ん? あいつは!!」
雪白のバッグが、ビクッと振動する。
過去に何があったかよく知らない雪白はシレッとした顔で、バッグに隠れきれてないピノをじっと見ていた。
ピノは恐る恐るバッグから顔を出し、震える声を出す。
「ぴ……ぴの……。こ、これには深〜い訳が……」
「お前! あの時はよくも! つか、何でミオン様と一緒にいるんだ!!」
ラデクが大声を上げと、今度は悠木のバッグからミューズが飛び出した。「わあっ!」と声を上げ、転倒する悠木。
「みゅー! 待つみゅ! ピノは、魔王軍を辞めて改心したんだみゅ!」
「うわあ! 何だお前は!」
今度はラデクが尻餅をつく。
「ピノは、今は勇者ミオン様の味方みゅ!」
「あの時は悪かったぴの! だから信じてぴのー!」
優志も「そういうことなんです」と言って頭を下げる。暁月と蒼天は心配そうに見守り、猫月は退屈そうに大欠伸をする。
ラデクは座り込んだまま数秒考えたのち、尻の土を払い立ち上がって答えた。
「……分かったよ。でも、もしまた裏切ったりしたら……俺の剣で真っ二つにブッタ斬るからな!」
「ぴのー! お前、こんな怖い奴だったのかぴの!」
「怖いだなんて、失礼な奴だなホント……。じゃあもう遅いし、みんな
少し背が高くなり声も低くなったラデクからは、少しばかり剣士の風格が出ていた。
「ボクは猫月ごまだ。ラデクよぉ、歴戦の最強勇者のこのボクがテメエを鍛えてやるから覚悟しとけ」
「何なんだよお前、偉そうだな!」
「お、やんのか? テメエなんざ瞬時にボコボコに……」
「「やめーーい!!」」
またしても始まった猫月の暴走を、いつものように暁月と蒼天が止める。
そんな感じでグダグダしながら、ラデクの実家であるコハータ村の宿屋へと向かう一行であった。
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