10.オトヨーク島を統べる王、リベル王


 ニジョー城の城門をくぐるとすぐ、堀を渡るための石畳の橋がある。その奥へ石畳の道を進むと正面玄関がある。槍を持った衛兵が2人、正面玄関の左右に立っている。


「勇者ミオン様ですね。どうぞお通りください」


 優志=勇者ミオンはてっきり「何者だ、止まれ」と衛兵に言われると思い内心ドキドキしていたが、案外すんなりと城内に入ることができた。


 高さ数メートルもある天井からは、豪華なシャンデリア。石畳の床に、赤い絨毯が敷かれている。壁には一定間隔で、キャンドルが飾られている。

 階段を上ると、巨大な扉へと続く廊下が続く。王の間の扉である。


「そーいや優志お前、勇者やってるとか言ってたな。こっちの世界では勇者ミオンって呼ばれてるのか? ややこしーな、全く」


 猫月の声が大きすぎたためか、王の間の扉の前に立つ衛兵がギロリと猫月を睨む。


「ゴマあんたなあ、もーちょっと態度とか気ぃつけや! 王様に会うんやで!」

「あー、めんどくせぇなそーいうの」


 暁月が猫月を注意するが、猫月はポケットに手を突っ込んだままため息をついてわざと足音を立てながら優志の後をついていく。

 蒼天は緊張しているのか、ひとつも言葉を発さない。

 悠木と雪白は、初めて見る西洋風の城内の光景に見惚れながら、その後ろを歩いていた。


「勇者ミオン様ですね。リベル王にどのような御用で?」


 扉に辿り着くと、衛兵が優志に話しかける。


「は……はい! まずは王様への挨拶と、この私、勇者ミオンが魔王ゴディーヴァを倒すということを、宣言するためです……。あと、この先の冒険のヒントなども頂ければと……」

「分かりました。どうぞ、勇者ミオン御一行様」


 衛兵は、左右に開く巨大な扉をゆっくりと開ける。

 優志たちの目に入ったのは、広々とした王の間の床の一段上にある玉座に座る、【リベル王】姿。そして、側に立っている大臣【カイ】の姿。


「皆さん、行きましょう」


 猫月以外は、緊張した面持ちでリベル王とカイ大臣の近くへと歩みを進める。

 薄くなった茶色い髪、小太り体型のカイ大臣は無言で優志たちに頭を下げる。


「ようこそいらっしゃった、勇者ミオンよ。わしがオトヨーク島の王、リベルじゃ」


 リベル王はそう言いながら、玉座から立ち上がった。

 金色に輝く、宝石をあしらった王冠。肩まで伸びた白く長い髪。同じく長く伸ばされた真っ白い髭。赤いマントを着こなし、高齢ながら堂々としたいで立ちである。


「は……はじめまして。飛田まさ……いや、勇者ミオンです! よろしくお願い致します!」


 すっかり緊張してしまった優志。後ろにいる猫月たちは無言でじっとしている。暁月は内心「優志さん、大丈夫かいな」と心配していた。


————


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【次週予告】


☆「よければ、我が息子アルスも、勇者ミオンと共に旅をさせてやってはくれまいか?」

 新しい仲間が加わる——?


☆ラデク再会! しかし、ピノを見たラデクは——。


☆「我が愛しのダーリン……アルス様! こんな所でお会いできるだなんて、ラッキーですわ!」

 魔王軍幹部サーシャ、お目当てのアルス王子とついにご対面——?


11.アルス王子を追え!

12.始まりの村、コハータ村へ

13.成長期のラデク

14.宿屋にて

15.サーシャ、アルス王子と出会う


どうぞ、お楽しみに!


 

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