6.ミランダの秘法


 以前の戦いで破壊された星猫戦隊コスモレンジャーの仮設基地であったが、現在は見事に修復されている。

 優志は、新しく出来た2階へと続く階段を上る。

 2階には、真っ直ぐの廊下の左右にいくつか個室があり、一番階段寄りの部屋がソアラの部屋であった。


 優志は、ソアラの部屋をノックする。


(いないようですね……。またどこかで鍛錬でもしてるのでしょうか)


 ソアラの部屋の隣は、スピカの部屋であった。優志はスピカの部屋の扉をノックする。


「はいはーい!」


 元気の良い高い声が、中から聞こえてくる。

 ガチャリと扉が開くと、額に星形の模様のある白い猫——スピカが姿を現した。ダボダボの灰色の部屋着を着ている。

 部屋の中にはパソコンのようなものがあり、猫耳と尻尾のある可愛らしい女の子のイラストが画面に描かれていた。


「スピカさん……ですよね。あれ? パソコンとペンタブでイラストを描いてたんですか……?」

「せやでえ。今いっぱい依頼が来ててなあ……。ぶっちゃけ、納期に間に合うかピンチやねん」

「お忙しいところすみません……。私はゴマくんとソアラくんを迎えに来たのですが……」

「あ! ゴマさあ、最近Vライバー始めたん知ってる? 今、1階で配信してるわ。ゴマの立ち絵、ウチが描いたんやでー。良かったら見たってえな」

「見ました見ました! 何というか……イケメンでした!」

「せやろせやろー! ゴマはウチのやさかい、とびっきりカッコよく描かせてもろたわ! 優志さんもVライバー始めるんやったらウチに依頼してなー! 安くしとくで!」

「あ……スピカさん、ゴマくんの彼女さんだったんですね……。……って、話し込んでる場合ではありませんでした! ソアラくんは今、どこに……?」


 優志がそう言って階段の方を見た時、鼻歌を歌いながらゴマが階段を上ってきた。その後ろに続いて、道着姿のソアラも姿を現す。


「あ! ゴマくん、ソアラくん!」

「よお。優志じゃねえか。スピカと話してるってことは、お前も立ち絵の依頼か?」

「優志ー! 久しぶりだな! いよいよ次の戦いなのか? オレはその時を待ってたんだぜ!」


 ゴマとソアラと会えたところで、優志は3匹に事情を話す。


 ミランダのワープゲートで、自由に現実世界と夢の世界とを行き来することが出来るようになったこと——。

 しかしそれは、魔王の力で、現実と夢の境目がどんどんなくなっていってるからであり、このままでは現実世界の地球に突然、夢の世界グランアースにある島や大陸が現れるかも知れない——つまり地球とグランアースが一体化してしまうこと——。


「何だそれ。結構やべえじゃねぇーか! 夢の世界にいつでも行き来できるってんなら、早速ミランダ呼んで夢の世界とやらに行こうぜ」

「オレも行くぜ。久しぶりの戦いに腕がなるぜぇー!」

「あ、ほなウチもついてく。ゴマほっといたら心配やし。ちょっと着替えてくるわ」

 

 ゴマ、ソアラ、そしてスピカも、夢の世界について来ることになった。

 それぞれの支度が終わると、優志はミランダを呼び出す。


『はぁーい。あら、ゴマくんたちも一緒?』


 虹色の光が現れ、ミランダが姿を現す。それは優志やゴマたちにとってもはや、見慣れた光景となってしまった。


「はい。これからみんなで夢の世界へ行こうと思います。ワープゲートを繋げてくれませんか?」

『分かったわ。……でも夢の世界とはいえ、喋る猫がいたらみんなびっくりしちゃうと思うの。優志くんと同じように、現実世界の人もいたりするし……そこでね!』


 ミランダは先端にオレンジ色に光るオーブの付いたステッキを取り出す。そしてステッキを一振りした。

 すると白色の光が、ゴマ、ソアラ、スピカを包み込んでいく——。


「うわ! 何だ! ミランダ、何しやがる!」

「おおお、何だコレは!」

「何や何や? 何が起きてるんや!?」


 光が晴れるとそこには——。

 人間の姿になった、ゴマ、ソアラ、スピカがいたのである。

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