5.近づいてくる夢の世界


 帰宅後、優志は考え込んでいた。


(どうにかして、夢の世界に好きな時に行けないでしょうか……)


 その時だった——!


『優志くん!』

「わっ……!」


 ミランダである。

 同時に、床にワープゲートが出現する。


「ミランダさん……? どうしたんですか? まさか、また魔王軍が出たんですか!?」

『違うの。あのね……』


 ミランダは虹色に輝くワープゲートの方を見ながら、少しの間、黙り込む。

 優志が目を凝らしてワープゲートを見ていると——そこに、夢の世界——【コハータ村】の風景が一瞬、見えたのである。


「ミランダさん、まさか……」

『そう、夢の世界にワープゲートを繋げることに成功したのよ。だけど……』

「だけど……?」


 これで、自由に現実世界と夢の世界とを行き来することが出来るようになった。

 しかし、それにはとんでもない理由があったのである。


『魔王の力で、現実と夢の境目がどんどんなくなっていってるから……こうしてワープゲートを繋げられたみたいなの。このままじゃ……』


 優志はごくりと唾を飲み、ミランダの言葉に耳を傾ける。


『現実世界の地球に突然、夢の世界の島や大陸が現れるかも知れないわ!』

「ええ……大変じゃないですか! 世界は大混乱ですよ……。一刻も早く、夢の世界に向かわないとです!」

『あ、待って! 先にニャンバラに繋げるから、ゴマくんたちも一緒に行ったほうがいいんじゃない?』


 ミランダはワープゲートをもう1つ出現させ、猫だけが住む地底国ニャガルタの首都、ニャンバラの郊外にある、【星猫戦隊コスモレンジャー】の仮設基地へと繋いだ。


「分かりました。装備を整えたら、出発しましょう」


 優志は【獅子の大剣】、【獅子の鎧】、【獅子の兜】、【獅子の盾】を装備し、コスモレンジャーの仮設基地に繋がっているワープゲートへと飛び込んだ。


 ♢


 ミランダの力で猫サイズになった優志は、仮設基地の玄関に入り、会議室へと向かう。

 会議室からは、ゴマの話し声が聞こえてきた。


「あ、初見さん! こんゴマー! 今日は初見さん多いぜー。ボクは猫月ねこつきごまだ。この枠は入退室自由だから……あ! 花火ギフトありがとうだぜー!!」


 会議室をそっと覗く優志。

 会議室にはゴマ1匹しかおらず、テーブルには猫用のスマホ【ニャイフォン15フィフティーン】が固定されており、ゴマはバーチャル配信アプリ——IZENAG《イゼナグ》での配信活動に夢中になっていた。


「ボク、実は名前の通り、猫なんだ。信じられるか? ハハハ。ボクが使ってるニャイフォン15、IZENAGイゼナグってアプリにも対応してるんだぜ。だから人間が使うスマホでボクの配信が見れるって訳だ」


 猫月ごまのコメント欄には、「おー、すげー」「猫さん可愛いね」などのコメントが溢れていた。

 勿論、コメントしている人たちはゴマが言うことは冗談だと思っていて、猫月ごまの中身が本当に猫だとは思ってなどいない。


(……これ、邪魔しちゃダメですね……)


 優志はそっと会議室を後にし、ソアラたち他のメンバーを探すことにした。


 その頃、仮設基地内に、青いモフモフした毛玉とオレンジ色のモフモフした毛玉がうろついていたのである——。


————


※ お読みいただき、ありがとうございます。


夢と現実が1つになってしまう……!

そして、仮設基地に入り込んだモフモフの正体とは——?


楽しんでいただけましたら、

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【次週予告】


☆ゴマ、スピカ、ソアラが人間に!?


☆ゴマたち、そしてピア・チェーレも一緒に夢の世界へ!


☆ 「ようこそいらっしゃった、勇者ミオンよ。わしがオトヨーク島を統べる王、リベルじゃ」

王城ニジョー城を訪れた優志たちに、リベル王が告げたことは——?


6.ミランダの秘法

7.いざ、夢の世界へ!

8.オトヨーク島の中心部、ニジョー城

9.グダグダパーティー

10.オトヨーク島を統べる王、リベル王


どうぞ、お楽しみに!

 

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