2.持病、またも再発
優志は、ゴマ——猫月ごまの配信を聴きながら、いつの間にか寝落ちしてしまっていた。
そして、翌朝——。
「うぐ……!?」
以前ほどではないが、脇腹の痛みが再発。微熱、倦怠感も出始めていた。
(おかしいですね……セルフ手術、ちゃんとやってるのに)
セルフ手術とは、いわゆる足ツボを自分で刺激する療法である。
優志は改めて、足ツボマットの上に乗って足踏みをしてみた。以前よりも痛みが増している。反射区療法においては、痛む時はその反射区と対応する身体の器官が悪くなっているとされている。
そして足揉みを続ければ、血流に乗って老廃物が流れ、段々と痛みが和らぐ。そうすると悪くなった器官も良くなるのである。
優志はそれを信じ、痛みを我慢して足ツボマットの上で足踏みをしていた。
だが、その時——。
『そんな根拠のない療法、無駄だポンよ』
久しぶりに聞こえた、いたずらタヌキの声。
その正体は、長年にわたって優志に刷り込まれた“間違った知識”による、優志自身の心の苦しみの声である。
優志自身の本心で行動しようとするたび、足を引っ張ることばかり言う、イヤな奴である。
(タヌキさん、一度退治したはずなのに……。まだまだ私の中に、不安や疑念があるということでしょうか。そうだ……またハールヤさんのところへ行って、相談してみましょう。久しぶりにちゃんと施術してもらいたいです)
優志はそう思い、ミランダを呼ぶことにした。
「ミランダさん! ねずみさんの世界へ繋げてください!」
すぐに、ミランダが光の中から現れる——。
『やっほ、久しぶりね! 前の戦いでは大活躍だったわね。ゆっくり、身体のメンテナンスしてきなさい。もう歳なんだからね』
「ま……まだ30代ですから!」
優志は文句を言いつつ、ミランダが出した虹色のワープゲートに足を踏み入れた。
出た場所は——すっかり暖かくなったねずみの街、
Chutopia厚生医院に到着した優志は、受付を済ませ、待合室のソファに腰を下ろした。
「飛田優志様〜」
すぐに、ねずみの院長ハールヤの声で呼ばれる。
診察室の扉を開けると、ハールヤかにこやかな笑顔で優志を迎えた。
「ハールヤ先生、お久しぶりです。実はまた最近、脇腹が痛くなりまして……。それに、またあの幻聴が聞こえてくるようになりました」
「お久しぶりです、優志様。少しお疲れの顔をされてますね」
ハールヤは、優志の背中のツボや、手のツボなどを押さえながら、優志の病状を説明する。
「少し無理をされていたようですね。元気なのはいいですが、体と相談しながら無理なくお仕事をするのが大切ですね。優志様、最近の気分の方はいかがですか?」
「気分……ですか。不安が強いです。この先、ちゃんとやっていけるか、みたいな……」
「なるほど。“病は気から”と昔から言われるように、心の持ち方が健康に関わっているのです。なるべく明るい気分で過ごせるよう、工夫してみましょう。そうすれば、あの嫌な心の声も、聞こえなくなりますよ」
「……しかし、不安や心配で頭がいっぱいになると、どうしようもないのです。それでだんだん頭が痛くなったりして……」
優志は、自身の心のコントロールの難しさに悩んでいた。
不安、心配、悩み事——頭の中がすぐに、それらで満たされてしまう。酷い時は、何も手がつかなくなる。
さて、ハールヤが答えた対処法は——。
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