57.邪竜VS超星機神


「“獅子の剣”、“獅子の鎧”、“獅子の兜”、“獅子の盾”だ。今のお前なら、使いこなせるだろう」


 飛田ミオンは、今まで身につけていた装備——“キャットブレード”、“猫印の鎧”、“猫印の盾”、“猫耳兜”を脱ぎ、マイルスより贈られた新たな装備品——“獅子の剣”、“獅子の鎧”、“獅子の兜”、“獅子の盾”を身につける。


「お、重いです……」

「大丈夫だ、すぐに慣れる。さて、魔王の力により、夢の世界と現実世界が統一されようとしている。つまり、ここグランアースと、其方らの住む地球が一体化してしまうのだ。そして世界は、魔族の物となってしまう……。まず始めに魔族以外の者を滅ぼすべく、かの邪竜を呼び寄せたのであろう。一刻も早く邪竜を倒すのだ、勇者ミオンよ」


 夢の世界グランアースと、現実世界の地球が統一される——。

 もしそうなれば、一体何が起こるのいうのか。飛田ミオンはマイルスに尋ねたが、そこまでは分からないとの事だった。



 飛田ミオンたちはマイルスの家を後にし、モヤマの宿に戻るべく街道を行く。

 マイルスからもらった装備は重いので、今はひとまず以前の装備を再び身につけ、新しい装備はラデクと手分けして抱えて運んでいる。


 既に息絶え動かなくなった人の姿を見かけた時、飛田ミオンは途端に気分が悪くなってしまった。


「うっ……」

「ミオン様! 大丈夫!?」


 しゃがみ込み、一歩も動けなくなってしまった。


「ミオン様! ミオン様ー!?」

「どうしよー! しっかりー、ミオン様ー!」


 飛田ミオンそのまま気を失い、視界がブラックアウトした。




 目を覚ますと、飛田とびたはアパートの自室のベッドの上にいた。

 体も気も重く、目覚めの悪い朝だ。


(……帰ってきましたか。気分が悪いですが、早く星猫戦隊コスモレンジャーの基地に行かねば……)


 やはり、目覚めた飛田は装備品を身につけたままだった。だがベッドの下に目をやると、マイルスからもらった新たな装備—— “獅子の剣”、“獅子の鎧”、“獅子の兜”、“獅子の盾”が置かれているではないか。


 夢の中の記憶もはっきりとしており、モヤマの街での凄惨な光景が瞼の裏に浮かぶ。

 体感としても、気のせいだろうか、夢と現実の境目が無くなってきているような感覚がするのだった。

 

(しまった。魔族の血がチョコレートで出来ていたことについて、マイルスさんに聞くのを忘れてしまいました……。まあそれは次に聞くとしますか)


 そう思い、装備を一旦外して朝食の支度をしようとすると——。

 突然、耳鳴りと共に何者かの声が、飛田の脳内に響いた。


優志まさしくん! 大変! 邪竜パン=デ=ミールが、ニャンバラの街中に現れたの!』


 ミランダだ。

 突然の声に驚いた飛田は尻餅をつき、装備品のカドで床に穴を空けてしまった。


「ああああ……床の修理代が……」

『そんなのは後で考えて! 愛音あいねちゃんと友莉ゆうりちゃんもすぐにワープゲートでニャンバラに送るから、優志くんもすぐに準備して!』


 飛田は慌ててスマホを手に取る。誤字だらけの文章で、悠木、雪白にLINEを送信。

 すぐに返ってきた2人の返信を確認してから、冷蔵庫に冷やしてあったおにぎりを頬張りつつ、装備を着け直して出発準備を整えた。


『急いで!』


 ミランダがワープゲートを出現させ、飛田は中へと飛び込んだ。



 着いた場所は——。

 以前、邪竜パン=デ=ミールと戦った場所である、ニャンバラの都市部からいくぶん離れた場所にあるらしい、赤茶けた荒野だった。


「あ! 飛田さーん!」

「……何なの、あのドラゴン?」


 悠木、雪白の声が耳に入ると同時に、荒野で黒い大きな影が滑走するのを目撃する。


「やばいみゅー! あんなのと戦うみゅー!?」

「ふん! 怖くないぴの! 絶対ぶっ潰して、魔王どもをぎゃふんと言わせてやるぴの!」


 ミューズ、ピノが空の方を見ながら飛び跳ねていた。

 飛田も、空の方に目をやった。


「あれは!」


 飛田の目に映ったのは——。

 空を飛び回る邪竜パン=デ=ミール。そして地上に視線を移すと、星猫戦隊コスモレンジャーの最強戦力——“超星機神グランガイア”。


 突如、数発の砲撃音が荒野に響く。


「きゃあっ!」


 悠木、雪白は思わず耳を押さえた。

 超星機神グランガイアが、邪竜パン=デ=ミールに向け、砲撃を放ったのだ。

 しかし邪竜パン=デ=ミールを包む紫色のバリアのような物が、これを防御。

 

 今度は、邪竜パン=デ=ミールが口からエメラルドグリーンの光線を吐き反撃。超星機神グランガイアにヒットし、炸裂音と共に白煙が上がる。


「急ぎましょう!」


 だが超星機神グランガイアは、びくともしない。放たれ続ける邪竜パン=デ=ミールの光線をものともせず、聳え立つ山の如く、堂々と構え続けている。

 超星機神グランガイアは飛田たちに気づいたようで、目を光らせながら巨大な足音を立て、ゆっくりと近づいてきた。


『勇者ト、ソノ仲間タチヨ。急グノダ』


 威厳を感じさせる声が荒野に響く。同時に、超星機神グランガイアの脚部にある、入り口の扉が開く。


「悠木さん、雪白さん、急ぎましょう!」

「うん! ……へーんしん! “ピア・ラヴィング”!」

「変身! “ピア・フレンズ”!」


 飛田は、変身を済ませた悠木ラヴィング雪白フレンズと共にコクピットへと急いだ。

 時折、爆発音が機内に響いてくる。邪竜パン=デ=ミールが激しい攻撃をグランガイアに浴びせ続けているのだろう。だがさすがは星猫戦隊最強の戦力、機内がわずかに揺れる程度で済んでいる。


 コクピットの扉を開けると、すぐにソールが気付き、声をかけてきた。


「優志くん! よく来てくれた! 早く、この間のアレを呼んでくれ!」

「あれ……あ! あれですね! “夢幻獅子むげんじし”!」


 飛田は心の中で、守護神“夢幻獅子”に念を送った。

 だがその時、ソアラが口を挟む。


「ちょっと待て! オレの話を聞け!」

「ソアラ、今はみんなで力を合わせる時だ! 後にしろ!」


 マーズが、ソアラを制止した。


「違うんだ……! オレが倒したチビガキが死に際に言ってたことが……! あのドラゴンはオレたちの攻撃が効かね……うぐ……もごご……!」


 ソアラは、何やら大切な事を全員に伝えようとしていたようだが、その前にマーズに口を塞がれてしまった。


「……いいですか? 夢幻獅子! 来てください!」


 ソアラが言いかけていた事が少し気になったが、敵は待ってはくれない。

 すぐに唐獅子のような神獣——夢幻獅子が出現。瞬く間にエメラルドグリーンの光に包まれると、ライオンをモチーフにしたロボットへと変形、超星機神グランガイアの方へ飛来。

 変形を始め、超星機神グランガイアと合体を果たした。


「無駄だ。貴様らは我には勝てぬ」


 邪竜パン=デ=ミールの、唸るような低い声が響き渡る。コクピットの中にまで振動が伝わってくるほどの声だ。

 だが、ソールは恐れることなく声を上げた。


「これで、おしまいだ! 行くぞ! 超星機神グランガイア、最強の必殺技!」


 コクピットから見える全ての砲台が、飛び回る邪竜パン=デ=ミールの方と向けられた。

 照準が、邪竜パン=デ=ミールに合わされる。


「【グランガイア・メテオスウォーム】!!」

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