57.邪竜VS超星機神
「“獅子の剣”、“獅子の鎧”、“獅子の兜”、“獅子の盾”だ。今のお前なら、使いこなせるだろう」
「お、重いです……」
「大丈夫だ、すぐに慣れる。さて、魔王の力により、夢の世界と現実世界が統一されようとしている。つまり、ここグランアースと、其方らの住む地球が一体化してしまうのだ。そして世界は、魔族の物となってしまう……。まず始めに魔族以外の者を滅ぼすべく、かの邪竜を呼び寄せたのであろう。一刻も早く邪竜を倒すのだ、勇者ミオンよ」
夢の世界グランアースと、現実世界の地球が統一される——。
もしそうなれば、一体何が起こるのいうのか。
マイルスからもらった装備は重いので、今はひとまず以前の装備を再び身につけ、新しい装備はラデクと手分けして抱えて運んでいる。
既に息絶え動かなくなった人の姿を見かけた時、
「うっ……」
「ミオン様! 大丈夫!?」
しゃがみ込み、一歩も動けなくなってしまった。
「ミオン様! ミオン様ー!?」
「どうしよー! しっかりー、ミオン様ー!」
目を覚ますと、
体も気も重く、目覚めの悪い朝だ。
(……帰ってきましたか。気分が悪いですが、早く星猫戦隊コスモレンジャーの基地に行かねば……)
やはり、目覚めた飛田は装備品を身につけたままだった。だがベッドの下に目をやると、マイルスからもらった新たな装備—— “獅子の剣”、“獅子の鎧”、“獅子の兜”、“獅子の盾”が置かれているではないか。
夢の中の記憶もはっきりとしており、モヤマの街での凄惨な光景が瞼の裏に浮かぶ。
体感としても、気のせいだろうか、夢と現実の境目が無くなってきているような感覚がするのだった。
(しまった。魔族の血がチョコレートで出来ていたことについて、マイルスさんに聞くのを忘れてしまいました……。まあそれは次に聞くとしますか)
そう思い、装備を一旦外して朝食の支度をしようとすると——。
突然、耳鳴りと共に何者かの声が、飛田の脳内に響いた。
『
ミランダだ。
突然の声に驚いた飛田は尻餅をつき、装備品のカドで床に穴を空けてしまった。
「ああああ……床の修理代が……」
『そんなのは後で考えて!
飛田は慌ててスマホを手に取る。誤字だらけの文章で、悠木、雪白にLINEを送信。
すぐに返ってきた2人の返信を確認してから、冷蔵庫に冷やしてあったおにぎりを頬張りつつ、装備を着け直して出発準備を整えた。
『急いで!』
ミランダがワープゲートを出現させ、飛田は中へと飛び込んだ。
着いた場所は——。
以前、邪竜パン=デ=ミールと戦った場所である、ニャンバラの都市部からいくぶん離れた場所にあるらしい、赤茶けた荒野だった。
「あ! 飛田さーん!」
「……何なの、あのドラゴン?」
悠木、雪白の声が耳に入ると同時に、荒野で黒い大きな影が滑走するのを目撃する。
「やばいみゅー! あんなのと戦うみゅー!?」
「ふん! 怖くないぴの! 絶対ぶっ潰して、魔王どもをぎゃふんと言わせてやるぴの!」
ミューズ、ピノが空の方を見ながら飛び跳ねていた。
飛田も、空の方に目をやった。
「あれは!」
飛田の目に映ったのは——。
空を飛び回る邪竜パン=デ=ミール。そして地上に視線を移すと、星猫戦隊コスモレンジャーの最強戦力——“超星機神グランガイア”。
突如、数発の砲撃音が荒野に響く。
「きゃあっ!」
悠木、雪白は思わず耳を押さえた。
超星機神グランガイアが、邪竜パン=デ=ミールに向け、砲撃を放ったのだ。
しかし邪竜パン=デ=ミールを包む紫色のバリアのような物が、これを防御。
今度は、邪竜パン=デ=ミールが口からエメラルドグリーンの光線を吐き反撃。超星機神グランガイアにヒットし、炸裂音と共に白煙が上がる。
「急ぎましょう!」
だが超星機神グランガイアは、びくともしない。放たれ続ける邪竜パン=デ=ミールの光線をものともせず、聳え立つ山の如く、堂々と構え続けている。
超星機神グランガイアは飛田たちに気づいたようで、目を光らせながら巨大な足音を立て、ゆっくりと近づいてきた。
『勇者ト、ソノ仲間タチヨ。急グノダ』
威厳を感じさせる声が荒野に響く。同時に、超星機神グランガイアの脚部にある、入り口の扉が開く。
「悠木さん、雪白さん、急ぎましょう!」
「うん! ……へーんしん! “ピア・ラヴィング”!」
「変身! “ピア・フレンズ”!」
飛田は、変身を済ませた
時折、爆発音が機内に響いてくる。邪竜パン=デ=ミールが激しい攻撃をグランガイアに浴びせ続けているのだろう。だがさすがは星猫戦隊最強の戦力、機内がわずかに揺れる程度で済んでいる。
コクピットの扉を開けると、すぐにソールが気付き、声をかけてきた。
「優志くん! よく来てくれた! 早く、この間のアレを呼んでくれ!」
「あれ……あ! あれですね! “
飛田は心の中で、守護神“夢幻獅子”に念を送った。
だがその時、ソアラが口を挟む。
「ちょっと待て! オレの話を聞け!」
「ソアラ、今はみんなで力を合わせる時だ! 後にしろ!」
マーズが、ソアラを制止した。
「違うんだ……! オレが倒したチビガキが死に際に言ってたことが……! あのドラゴンはオレたちの攻撃が効かね……うぐ……もごご……!」
ソアラは、何やら大切な事を全員に伝えようとしていたようだが、その前にマーズに口を塞がれてしまった。
「……いいですか? 夢幻獅子! 来てください!」
ソアラが言いかけていた事が少し気になったが、敵は待ってはくれない。
すぐに唐獅子のような神獣——夢幻獅子が出現。瞬く間にエメラルドグリーンの光に包まれると、ライオンをモチーフにしたロボットへと変形、超星機神グランガイアの方へ飛来。
変形を始め、超星機神グランガイアと合体を果たした。
「無駄だ。貴様らは我には勝てぬ」
邪竜パン=デ=ミールの、唸るような低い声が響き渡る。コクピットの中にまで振動が伝わってくるほどの声だ。
だが、ソールは恐れることなく声を上げた。
「これで、おしまいだ! 行くぞ! 超星機神グランガイア、最強の必殺技!」
コクピットから見える全ての砲台が、飛び回る邪竜パン=デ=ミールの方と向けられた。
照準が、邪竜パン=デ=ミールに合わされる。
「【グランガイア・メテオスウォーム】!!」
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