58.超星機神、大破


「“グランガイア・メテオスウォーム”!!」


 超星機神グランガイア、最大最強の技——。

 全ての火器から、砲弾やレーザーが邪竜パン=デ=ミールに向け、一斉に放たれた。


 しかし——。


「そんな攻撃、効かぬわ……!」


 邪竜パン=デ=ミールを包む紫色の光の膜バリアが、全ての攻撃を溶け込ませるように吸収してしまう。

 吸収された砲弾やレーザーが橙色に輝き出し、邪竜パン=デ=ミールの全身へと吸い寄せられた。

 邪竜の全身が、太陽の如く輝きを放ち始める——。


「嘘だろ!? “グランガイア・メテオスウォーム”が効かないなんて!」

「そ、そんな……!」

「おい、どーすんだよ!!」


 星猫戦隊コスモレンジャーの面々はニャーニャー鳴き声を上げ、コクピットは大混乱だ。

 飛田とびたは、嫌な予感がした。


 やられる——!

 

「愚かなる民よ。愚かなる地球の守護者よ。思い知れ……! 世界は魔族の物となるのだ」


 邪竜パン=デ=ミールは、全身を脈打つように光を放ちながら、超星機神グランガイアに突撃してきた。

 その巨躯が、フロントガラスに迫る!


「うわああーー!!」

「伏せろ!! ヤバいぞ!」

「「きゃあああーー!!?」


 巨大地震と錯覚するような、凄まじい揺れが襲う。火花が舞い散り、煙が上がる。

 直後、サイレンと共に超星機神グランガイアの声が、コクピットに響いた。


『スグニ脱出シロ。戦闘不能ダ』


 真っ赤な警告灯に照らされたソールが、大声を上げた。


「みんな、脱出だ! 大破するぞ!」


 こんな所で死ぬ訳にはいかない。

 飛田はなるべく呼吸を整えながら、ソールと共にコクピット内に散らばった荷物や壁の破片などを退かし、避難路を確保した。


「皆さん、急いでください! ……あれ、悠木さんと雪白さんは……」

優志まさし! お前も早く逃げろ!」


 マーズに肩を押される。ガラガラと崩壊音。振り向けば、崩れたコクピットの天井が、操縦席の一部を潰していた。


「ダメです! ゴマくん、一緒に逃げましょう!」

「クソッタレが……! どうなってやがんだ! こうなったら……アレをやるか」


 飛田はゴマに声をかけるが、聞こえているのかいないのか。共に逃げつつも、何かを企んでいるようだ。


 ソールの誘導で、他のメンバーは脱出を済ませたようだ。飛田とゴマも、照明がチカチカとついたり消えたりする狭い通路を急ぐ。


「うわあ!」

「大丈夫!? 飛田さん!」


 足を取られた飛田に声をかけたのは——。


「悠木さん! 雪白さんも!」

「飛田さん、出口はあそこです。急ぎましょう!」


 いくつもの切り傷を負いながらも、どうにか脱出することができた。

 飛田も、ピア・チェーレも、星猫戦隊コスモレンジャーも、全員無事だ。


 しかし、振り返った飛田の目に映ったのは——。

 変わり果てた、超星機神グランガイアの姿だった。

 ボディがへし折れ、あちこちがスパークしている。

 恐竜型の機械竜——ガイアドラゴンもその長い首が根元から折れてしまい、もげた首が地面に落下していた。

 メインエンジンも破壊されたようだ。ボディ各部で点灯していたランプは、全て消えてしまっている。


「グランガイアーッ!!!!」

 

 超星機神グランガイア、大破。

 星猫戦隊コスモレンジャーも、次々と強制的に転身が解除されていく——。

 絶体絶命だ。


 ボロボロの姿のソアラは、肩で息をしながら泣き声混じりに言った。


「はぁ、はぁ……! だから言ったじゃねーか! ちゃんとオレの話を聞いてくれよ! 魔王軍幹部のヴィットとサクビーを倒さねえと、パン=デ=ミールに攻撃が通じねえかも知れねえんだ!」

「本当か!? ソアラくん、何故それを知ってるんだ!?」

「あの時オレが倒したあのチビガキが、死に際にそんなことを言ってたんだよ!」


 ソアラの言葉をもっと早く聞いていれば、こんなことにはならなかった——。そんな心情なのだろう。

 マーズはドンと地面を蹴った。


(あの時、私もマーズさんを止めていれば……)


 後悔しても、もうどうしようも無い。頭を切り替えた飛田は、次の手を考え始めた。

 邪竜パン=デ=ミールは高度を上げ、挑発するように飛び回っている。

 

「ヴィットとサクビー……。早く見つけ出さないといけませんね……。一体どこにいるんでしょう……」


 頭を捻る飛田の横で、動揺する星猫戦隊コスモレンジャーのメンバーを、ソールとムーンが落ち着かせている。


 悠木ラヴィング雪白フレンズは変身を継続出来ているので、いざという時は彼女たちを頼るか——。


(ダメです! 彼女たちを危険な目に遭わせる訳には……!)


 頭を抱えつつゴマの方に目をやると、何故かゴマだけは転身した状態だった。

 そして目を水色に輝かせながら、しゃがれ声を荒野にこだまさせた。


「鎧野郎どもを探す必要なんかねえよ! ボクは……最強だからな! ……【ウルテマ】!!」

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