55.魔王軍の内部分裂


 魔王の城——。


 魔王軍幹部のヴィットは、同じく幹部のサクビーと共に静まり返った廊下を歩きながら、互いに不満の気持ちを漏らしていた。


「パン=デ=ミールに【魔力防御膜バリア】を纏わせたのはいいものの……外に出ることは禁止されてしまった。全く、退屈で仕方がない」

「結局ソアラとは会えなかったビー。ああもう、待ちきれないビー! 僕ちゃんは隙を見て抜け出して、ソアラと決着をつけに行くビー!」

「勝手に死にに行け。お前が死んだとしても、俺が死ななければ作戦は成功する。それにしても、いつになったらパン=デ=ミールは動き出すのだ……」


 ヴィットとサクビーは、邪竜パン=デ=ミールに“魔力防御膜バリア”を与え、邪竜パン=デ=ミールを無敵化させる事に成功した。

 しかし、ウイルスの変異には長い時間がかかるため、変異のための力を蓄えるべく、邪竜パン=デ=ミールは【異空間】へと逃げ込んでしまったのだ。


 ♡❤︎♡❤︎♡


「困りましたわね……」


 未だに病気のフリをして、寝込んでいたサーシャ。


「サクビーのおバカさんは勝手に出て行くでしょう。出かけようとしている時にワタクシの【】をヴィットとサクビーにかければ……勇者ミオンたちにやられて、簡単に死ぬはずですわ。問題はヴィット……。どうにかしてサクビーと共に、戦いに行かせねばなりませんわ……」


 サーシャにとってはもはや、魔王ゴディーヴァの目的——“魔族の世界征服”など、どうでも良かった。とにかく、『ヴィット、サクビー、サーシャは、勇者ミオン一行に同時に倒される』運命を、変えたいのだ。

 ヴィットとサクビーは当然、そんな事など知らない。

 

(ワタクシの策略通り、ヴィットとサクビーが共に死んでしまえば、邪竜パン=デ=ミールの“魔力防御膜バリア”は消滅してしまいます。ですが……これもワタクシの目的の為ですわ。この事は何としてもお父様と、魔将フランツ様にバレないようにしなくてはなりませんわね……)


 ♡❤︎♡❤︎♡


 上も下も、近いも遠いも分からぬような幾何学模様に満たされた異空間。

 邪竜パン=デ=ミールは、紫色に輝く“魔力防御膜バリア”を纏いながら、羽を畳み体を丸め、目を瞑りながら何日もじっとしていた。

 

「機は熟した。魔王ゴディーヴァ様の有り難き支援により、我はどのような攻撃をも受け付けぬ“魔力防御膜バリア”を手に入れた。そして遂に、最後のウイルス変異に向けての遺伝子操作に成功した。先ずは“夢の世界グランアース”から、滅ぼしてくれよう……」


 邪竜パン=デ=ミールは目をカッと見開き、羽を広げると、異空間から姿を消した。

 


——————


※ お読みいただき、ありがとうございます。


 無敵となった邪竜パン=デ=ミール。ウイルスが最終変異するとどうなるのか——?


続きに期待してくださいましたら、

★評価、フォローをお願い致します。



【次週予告】


☆屍の山となったモヤマの街。夢の世界に何が起きたのか……?


☆飛田に、新たな装備! その強さとは?


☆「嘘でしょ!? グランガイア・メテオスウォームが効かないなんて!」

「愚かなる民よ。愚かなる地球の守護者よ。思い知れ……! 世界は魔族の物となるのだ」

 超星機神グランガイア、大破——。


☆「な……何や、あの砂時計!?」

「おそらく、あの砂時計の砂が全部下に落ちた時……ウイルス変異が行われるのだろう」

 死のカウントダウンが始まる——。



56.邪竜、夢の世界へ

57.邪竜VS超星機神

58.超星機神、大破

59.滅亡のカウントダウン

60.作戦瓦解


どうぞ、お楽しみに!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る