37.脳筋の敵


「アッハハ、何してんだ1人で! お前、やっぱ天然だなァ!」


 どうやら稲村リュカには、“ポンタ”の姿は見えていないようだ。


「いなちゃ……いや、リュカでしたね。リュカって、いつも楽しそうですよね……。どうやったらそんなに楽しそうになれるんですか……」

「どんな時だって、自分から楽しむって気持ちが大事なんだぜ。人生の先輩からのありがたいアドバイスだ、なんつって!」


 稲村いなむらは、歳上の親友だ。子供じみたところはあるが、いざという時は人生の先輩として、アドバイスをしてくれる。


「それはさておき優志ミオン、お前も防具がだいぶボロボロじゃんか。新しい武器と防具でも調達しにいかないか?」

「……そうですね。その後は、魔物を倒しながら街の周りでも探索しますか? またゴールドを貯めなきゃですし」

「そうするか!」


 飛田ミオンは気を取り直し、稲村リュカと共に人で賑わうモヤマの中心部、商店が立ち並ぶ通りへと向かった。



 モヤマの武器屋、防具屋では、コハータ村とは比べ物にならないほど多くの種類の装備品が売られていた。

 中には、身につけると特定の属性攻撃を軽減するなど特殊な効果を発揮するものもあり、飛田ミオンたちは店主に武器や防具の性能を尋ねては、1つ1つ教えてもらった。


「これだけ種類があると迷いますね。でも今の手持ちで買える手頃なものは……【ミニゴールデンソード】と、【銀の胸当て】、【鉄兜】……ですか。リュカは何にしましたか?」

「俺は【ロングスピアー】、【ウンディーネの羽衣】、【神官帽】だな。“ウンディーネの羽衣”は、“火”属性のダメージを軽くしてくれるんだぜ」

「なかなか似合いそうですね。私が買うことに決めたこの“ミニゴールデンソード”は、攻撃自体が“かね”属性になるみたいです。“木”属性の敵に効果抜群らしいですね」


 装備品も増え、荷物も段々と重たくなってきた。このままだと持ち運ぶだけで体力を消費してしまう。


「そうだ、要らない武器防具は、ここでみんな売っちゃいましょうか」

「そうすっか!」


 先に、使い古した“棍棒”、“銅の剣”、“革の鎧”などは売却してから、新たな装備を購入した。

 飛田ミオンは、“ミニゴールデンソード”、“銀の胸当て”、“鉄兜”を新たに購入。

 “鉄の剣”、“レイピア”、“ミニゴールデンソード”を使い分け、盾は以前と同じ“鉄の盾”を使用。


 稲村リュカは、“ロングスピアー”、“ウンディーネの羽衣”、“神官帽”を新たに購入。

 盾は、飛田ミオンと同じく“鉄の盾”を装備している。


「さて、軽くメシ食ったら、サクッと魔物を倒しに行くとすっか! 回復は俺に任せとけ、勇者ミオン!」

「リュカ、ほんとに楽しそうですね」


 モヤマの商店でホットドッグを買い、小腹を満たした飛田ミオン稲村リュカは、繁華街モヤマの周りの探索へと向かうことにした。



「ぐ……! 新しい装備を調達したのに、手強いです……」

「勇者ミオン、今助ける! 【ヒール】!」


 モヤマを出たばかりの飛田ミオン稲村リュカは、早速魔物と遭遇し、戦いの火花を散らしていた。

 稲村リュカが首から下げているロザリオから放たれた淡い緑色の光に、飛田ミオンは包まれた。


「ありがとうございます、いなちゃ……いや、リュカ……。この2体の魔物、力も守りも、モヤマへの道のりの魔物たちの比じゃないです」

「【オーガ】と【サイクロプス】か……。この辺じゃクソ強い敵だ。チッ、ツイてねえな」


 飛田ミオンたちが戦っているのは、筋肉隆々で、頭に1本の角を生やした人型の魔物、“オーガ”。

 同じく人型で力士のような体型、1つ目の魔物、“サイクロプス”。

 両者共に、動きは鈍く隙も大きいが、攻撃力と防御力が高く、何度攻撃を加えても倒れる気配が無い。


「逃げるか? 優志ミオン

「そうですね、無理はしない方が良さげです……ん?」


 その時だった。

 赤橙色に輝きを放つ火炎魔法が、オーガとサイクロプスを包み込む!


「な、何が起こったんですか……?」


 飛田ミオンが言う間に、今度は金髪の少年が2ちょうの【バタフライナイフ】で、怯んだオーガとサイクロプスに切りかかった。


「ミオン様、今だ!」


 少年の声を聞いた飛田ミオンは、オーガとサイクロプスに“鉄の剣”で力の限り斬りつけた。

 オーガとサイクロプスは緑色の体液を撒き散らしながら、地響きを上げて倒れる。そしてゴールドを残して、光となり空へと消えて行った。


「ありがとうございます……、ラデクくん、サラーさん」

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