33.星猫戦隊の守護神


「ま、こんだけいりゃあ“邪竜パン=デ=ミール”なんざ、敵じゃねえな! ニャハハハ!」


 ゴマが口の周りに魚汁を垂らしながら得意げに笑う。

 一足早く食事を終わらせたソールは、ゴマの笑い声など全く気にしないかのように、タッチパネル式の画面が映る薄いボードに触れ始めた。“ニャイパッド”というらしい。

 ソールはニャイパッドの画面をコスモレンジャーのみんなに見せ、説明を始めた。


「“邪竜パン=デ=ミール”は、ニャンバラの森の奥地にある地下洞窟の、奥深くにいるようだ」


 地底の猫の国ニャガルタの首都ニャンバラの郊外には、大きな森が広がっている。その奥地に、洞窟があるらしい。

 中は複雑に入り組んでおり、危険な生物も棲みついているので、立ち入り禁止区域となっているとのことだ。

 飛田とびたは口を結びながら、説明に耳を傾け続けた。

 

「“邪竜パン=デ=ミール”は、生体反応を分析する限り、かなりの巨体だ。戦いに備えて、【守護神】たちに力を貸してもらおう」

「あの……守護神とは何でしょう?」


 ついていけなくなりそうだと感じた飛田は、思い切ってソールに質問をぶつけた。


「星猫戦隊コスモレンジャーには、1匹1匹それぞれに【守護神マシン】がついているんだ。僕の場合は、【守護神アポロ】。呼べば、すぐに来てくれる。守護神は戦闘機にもなり、我々が操作して敵と戦うことが出来るんだ」

「なるほど……」


(昔よく観た、戦隊ヒーローの猫バージョンそのもの……ですね)


 飛田は子供の頃、戦隊ヒーローの番組を見てはキャラクターの塩ビ人形やロボットの玩具を親にねだって買ってもらい、コレクションしていた。それぐらい、戦隊ヒーローが好きだったのだ。

 目の前にいるのは、戦隊ヒーロー、それも猫の——。そして飛田も、そこに仲間入りしてしまった。

 子供の頃の飛田は、大人になってからこのような体験をするとは、夢にも思っていなかっただろう。

 

「それぞれの守護神マシンは、合体すれば【スーパー・スターマジンガ】になるんだ」

「それは、是非見てみたいものです……!」

「何言ってんだ。優志まさし


 ゴマが口を挟む。


「テメエもボクらと一緒に“スーパー・スターマジンガ”の中に入って、敵と戦うんだよ!」

「な……本当ですか!?」


 幼い頃に観た戦隊ヒーローが、巨大ロボで巨大モンスターと戦うシーンを思い浮かべる。

 巨大ロボと言えど、強力な敵の攻撃を受け、ピンチになることもしばしばあった。


 飛田はごくりと唾を飲んでから、引き続きソールに質問する。


「その“スーパー・スターマジンガ”で、“邪竜パン=デ=ミール”という怪物を倒すんですよね……?」

「いや、倒してしまってはダメなんだ。元は、生物の遺伝子の方向性を司るドラゴン。邪悪な思念を取り除き、のが我々の目的だ。つまり、まずは“邪竜パン=デ=ミール”を狂わせている邪悪な思念の正体を探る必要がある」


(戦隊ヒーロー番組では、シリーズ後半にあるような一筋縄ではいかない展開ですね……)


 邪悪な思念に毒され、ウィルスを変異させて世界中に流行させる“邪竜パン=デ=ミール”を、正気に戻す。

 その邪悪な思念の正体とは、一体何だろうか——。

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