45.邪竜パン=デ=ミール
「ゴマくん、めちゃくちゃ強いんですね……」
魔王の幹部であるヴィット、サクビーをたった
「当たり前だ。ボクは最強の猫だからな。ボクは自分とか相手とかのステータスを数字で見られるんだが、ボクのステータスは全部カンストしているんだ。ニャハハハ!」
先程の戦いを見ても、ゴマの強さは他の星猫戦隊コスモレンジャーのメンバーの比ではないことがハッキリと分かる。
ただ、なぜゴマが最強の猫になれたのかは、ゴマ自身も知らないという。
「
「いや、私がここまで強くなれたのは、ゴマくんたちも含め、私を支えてくれた方々のお陰ですよ……」
飛田の脳裏に、この不思議な冒険が始まってから今までに出会った人々——ラデク、サラー、マーカス、マイルス、そして
「オレの拳が効かねえなんて……!」
どんな物でも打ち砕くはずの“200万馬力・猫パンチ”をサクビーに防がれたことに、ショックを受けているようだ。
「また会った時に、リベンジすればいいんですよ、ソアラさん」
「……クソッ!」
飛田の心ばかりの励ましは空振りに終わり、ソアラは崩れ落ちた岩盤にストレートパンチをぶつけた。
すると岩盤は破裂するように砕け散り、洞窟の続きとなる道が現れた。
「お! ソアラくん、ナイスだ!」
「まだ天井が崩れる危険はありますが……。引き続き、探索を続けましょう。気をつけて行きましょうね」
ソアラの事情を知らないソールたちは、砕けた岩盤から再び洞窟へと足を踏み入れていく。
「気ィ落とすな、ソアラ。らしくねえじゃねえか。ほら、行くぞ」
「
「相棒じゃねえっての」
飛田、ゴマ、ソアラも、続いて洞窟内へと歩いて行った。
30分ほど、ジメジメとした一本道を進んで行った時だった。
「シッ……静かにしろ」
「どうした、マーズ?」
「何か聞こえないか……?」
進路の先に広がる真っ暗な空間に、何やら唸り声が響いている。
「本当ですね。もしや、この先に邪竜パン=デ=ミールが……?」
「ムーン、気をつけて。この先に縦穴があるわ」
ヴィーナスの忠告通り、コスモレンジャーの進路の先には、巨大な縦穴が口を開けていた。
抜き足差し足、慎重に縦穴に近づくコスモレンジャー。飛田も、足音を立てぬよう気をつけながら最後尾をついていく。
先頭のソールは、そっと、縦穴の下を覗いた。
「……いたぞ。“邪竜パン=デ=ミール”だ」
「何てデカさだ……。あんなにデカいとは予想外だ」
「い……いやああっ! マーズ、ヴィーナス、こ……怖いよぉ!」
恐れ慄く、猫戦士たち。
一体どんな怪物が、いるのだろう——。
飛田も恐る恐る、覗き込んだ。
縦穴の下にいたのは、巨大な竜。羽を畳み、体を丸くしてじっとしていた。
深緑の体色に、肉食恐竜のような頭部。鋭い4本の爪のある4つの脚と、体全体を包む羽。
頭部から尻尾までの全長は、冷静に計算すれば50メートルほどだろう。しかし飛田は現在猫サイズなので、それよりもさらに大きく見える。飛田たちから見れば約3倍、体長は150メートルほどに見える。
「いけない! すぐマスクとゴーグルをつけるんだ!」
ソールが声を荒げると、星猫戦隊たちはすぐに防毒マスクとゴーグルを取り出し、装着する。
「優志! すぐに着けろ!」
「は……はいっ!」
飛田はゴマから防毒マスクとゴーグルを手渡され、素早く装着した。
マーキュリーは首を傾げ、ソールに尋ねる。
「ソ……ソール、一体何が……?」
「これを見てくれ。ウイルス検出試験紙だ。新型ウイルスが検出されると色が青からピンクになるんだが……全面ピンクになっている。つまり」
ソールは体を硬くし、震えながら言葉を続けた。
「邪竜パン=デ=ミールの体から、新型ウイルスが放出されている。周りはウイルスだらけだ。ムーン、どうする?」
「迂闊に近づくことも出来ませんね……。新型ウイルスは感染力も強いので、星猫戦隊コスモレンジャーの誰かが感染したら、あっという間に全員が感染してしまいます」
「い……今までにないタイプの敵よね……勝てるかなあ……」
作戦を立てるべく一度退却しようとした、その時。
「来たか……愚かな戦士ども。魔王ゴディーヴァ様より、世界を滅ぼせとのご命令だ。邪魔はさせぬ」
邪竜パン=デ=ミールがオレンジ色の目を光らせながら、鋭い牙の生え揃った口から地響きのような声を響かせた。
「な……喋った!?」
「気付かれたか! まずいぞ!」
邪竜パン=デ=ミールは大きな羽を広げ、羽ばたかせ始めた。
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