43.魔王軍三幹部、再び
洞窟の天井は崩れ落ち、地面の上が見えるようになってしまっていた。
そこから現れたのは——黒い西洋甲冑の足具に包まれた、巨大な足。
ズシンと、
「ニャアッ!?」
「きゃあああーーっ!?」
猫戦士たちは大混乱だった。だが飛田はすぐに落ち着きを取り戻し、黒い足の主をじっと見据える。
「あ! ……彼らは!」
「
そこに居たのは——飛田たちの5倍ほどの大きさの、魔王軍三幹部——魔剣士・ヴィット、ガーディアン・サクビー、魔術師・サーシャだった。
ヴィット、サクビー、サーシャは、元々のサイズのまま猫の国ニャガルタに現れたため、猫サイズになった飛田の5倍もの大きさで出現したようだ。
「な……なぜあなたたちがここに!」
飛田は可能な限り大きな声で、巨大三幹部に問いかけた。
「クフフ……魔王ゴディーヴァ様の
「勇者ミオン、やっと見つけたビー! ここでお前はゲームオーバーだビー! ギャハハハ!」
「オホホホ……全ては、王子アルス様と結婚するため……。ワタクシのアルス様を連れ去る運命を持つ勇者ミオン! 今ここで潰して差し上げますわ!」
全身に黒色の鎧を身につけた、長い刀身の剣を持つ人型の魔族——魔剣士・ヴィット。
球状の身体に、短い足。バネのような右腕の先には、鋼鉄のように硬そうな拳。左手にクリスタルのような材質で出来ているであろう巨大な盾を持つ——ガーディアン・サクビー。
薄い桃色のドレスを着ており、右半分が黄色、左半分がピンク色のロングヘア、そして同色のオッドアイ。見た目は人間の女性ような姿の——魔術師・サーシャ。
「な……何だ、彼らは! こんなのがいるなんて聞いてない! ムーン、どうする!?」
「ソール、一旦落ち着きましょう。策は、あるはずです」
「む……無理ィィ! ヴィーナス、助けてえ!」
「くっつかないで、マーキュリー。それにしても、どうするのよ。あんだけ相手が巨大だと、逃げようにも逃げられないじゃない。マーズ、何とかしなさいよ」
「何で俺なんだよ! 強え奴は好きだが、さすがにあんなデカブツ、俺だけじゃ無理だろ!」
星猫戦隊コスモレンジャーのメンバーは、ますます混乱する。
その間に、魔剣を構えた巨大ヴィット。剣の先から、黒色の稲妻が迸る!
「喰らえ。我が【魔剣・ザルツブルガー】の必殺技……【ブラック・サンダーショック】!」
放たれた黒い稲妻が、容赦なく飛田たちの周囲に降り注ぐ。
「ぐわあ!?」
「きゃああーー!!」
逃げる隙も与えず、稲妻はマーズとマーキュリーに直撃。
破裂音が響き渡り、閃光と火花が2匹を襲った。
だが、さすがは星猫戦隊。2匹とも体毛が少し焦げたぐらいで、大きな怪我はなさそうだ。
飛田は、倒れているマーズ、マーキュリーの元へ駆け寄った。
「大丈夫ですか!? ……彼らは、魔王軍三幹部です! 気をつけて下さい!」
「ま……魔王?」
「な……なに? 魔王って……」
星猫戦隊コスモレンジャーは、魔王ゴディーヴァの存在を知らないようだ。
魔王について手短に説明しようとすると、後方からサクビーの大声が響いてきた。
「邪竜パン=デ=ミールを操っているのは、他でもない、魔王ゴディーヴァ様だビー! ギャーハハハ!」
大笑いしながら、巨大サクビーは鋼鉄のような拳を振り下ろしてきた。
「……来ます!」
「マーキュリー、危ない!!」
「きゃああーー!!」
飛田はすぐにその場を離れ、マーズ、マーキュリーは咄嗟に体を転がした。
鳴り響く破砕音——。
地面が大きく揺さぶられ、洞窟の天井が崩れ落ちる。
星猫戦隊はみんな洞窟の外へ退避し、生き埋めになった者はいないようだ。
「逃げるぞ、マーキュリー!」
「うん!」
マーズとマーキュリーも無事のようだ。安堵した飛田は、桃色の空を背にした巨大サクビーを見上げ、問いかける。
「全世界で新型ウイルスのパンデミックが起こっているのも……魔王のせいだったんですか!」
巨大サクビーは不敵な笑みを浮かべて、星猫戦隊コスモレンジャーのメンバーたちを見下ろした。
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