39.ニャンバラの洞窟へ


 ベッドから起きあがろうとした飛田とびたは、身体全体に違和感を覚えた。

 何だか、重い。頭も、体も。

 金属のこすれる音を気にしながら起き上がると、飛田は気づく。


 何と、夢の世界で身につけていた装備—— “ミニゴールデンソード”、“鉄の剣”、“レイピア”、“銀の胸当て”、“鉄兜”、“鉄の盾”が装備されたままの状態で、目が覚めたのだ。


(……これもきっと、夢と現実の境目が、無くなりつつあるから……でしょうか)


 現在の飛田は猫サイズ。身につけている装備も、飛田に合わせてサイズが小さくなっていた。

 時刻は、集合10分前の7時50分。大急ぎで身支度を済ませ、部屋を出た。



「いよいよ、“邪竜パン=デ=ミール”のいる洞窟の入り口へ向かう。気を引き締めて行くぞ!」


 星猫戦隊コスモレンジャーのリーダー、ソールの号令に、一同は「応!」と返事をする。

 洞窟へと向かうメンバーは、最初に出会った5匹の猫戦士たち——ソール、ムーン、マーズ、マーキュリー、ヴィーナス。

 それ加え、ゴマ、ソアラに、飛田だ。

 

 基地の玄関先でライムとグレに見送られ、飛田たちは、洞窟のある森を目指して出発した。



 星猫戦隊コスモレンジャーは、新型ウイルスの感染対策として全員がマスクを装着し、森の奥地へと向かう。

 紫やオレンジの蔦、1つ1つの花弁の形が違う巨大な花、生物のようにウネウネと動き回る木々など、見たことのない植物で覆われた奇妙な森だ。


 ソールは“ニャイパッド”の地図アプリで、洞窟へ続く入り口への道を探る。


「かなりの獣道だな。誰も踏み入ってないんだろうな……お、あれは!」


 ソールは、地面に空いている大きな穴を発見し、近くへと駆け寄った。警戒しながら、ついていく。

 穴の周囲は、太くて巨大なミミズのような草に覆い尽くされていた。穴の中からはヒンヤリとした風が吹き上がっており、緩い下り坂となって中へと道が続いている。


「ついに来たなァ、オレ、ワクワクすっぜ!」

「ソアラよぉ、テメエ遊びに来てるんじゃねえんだからな」

「イイじゃねーか、ゴマ相棒! 楽しむ気持ちってのは大事だろォ?」

「誰が相棒だ!」


 ゴマとソアラがじゃれあっているのを他所に、飛田はソールたちの後に続き、洞窟の中へと足を踏み入れた。


 刺すように冷たい空気。段々と暗くなり、前が見えなくなってくる。体がブルッと震えた。


「ここから先はライトをつけましょう。気をつけて進みましょうね」


 サブリーダーのムーンに、懐中電灯を手渡された。

 前方を照らしつつ、ジメジメとした洞窟を、列になってひたすら進んで行く。飛田は最後尾だ。


 段々と道幅も天井も広くなり、下り坂も平坦になってくる。洞窟に潜入して20数分経った頃だった。

 前方より、複数の獣の唸り声が聞こえてくる。


「シッ! 何かいるぞ……」

「皆さん、足を止めてください!」


 ソールとムーンの声を聞き、飛田は気を引き締める。

 慎重に、ライトで前方を照らすと——。


 そこにいたのは、3匹の獣型のモンスターだった。


「何なんだアイツらは!? ソールさん、あんなの見たことねえぞ!」


 ゴマが大声を発すると、ライオンのようなモンスターが黄色い眼を光らせ、ゴマを睨んだ。


「静かにするんだ、ゴマくん。 ……【ニャンバライオン】、【ニャンバラット】、【ニャンバルー】だ。やはり、危険な生物が棲みついていたか!」


 オレンジ色の長いたてがみを持つライオンのようなモンスター、“ニャンバライオン”。体格は今の飛田の3〜4倍ほど。

 丸々と太った巨大なハムスターのようなモンスター、“ニャンバラット”。体格は飛田と同程度。

 その場をピョンピョンと飛び跳ね、今にも飛びかかろうとしているカンガルーのようなモンスター、“ニャンバルー”。こちらも体格は飛田と同程度だ。

 

「みんな、【転身】するぞ!」

「応ッ!」


 ソールの号令で、猫たちの面々は前脚を真上にかざし、声を揃えた。


「聖なる星の光よ、我に愛の力を!!」


 白、紫、赤、青、黄色、青紫、空色——カラフルな光が、それぞれの猫たちを包み込んでいく——。

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