30.猫の戦士たちとご対面


 ゴマに、勇者としては“まだひよっこ”だと言われてしまった飛田勇者ミオン


「……ですよね。まだ魔物と戦ったりした経験は浅いですから……」

「だが、一緒に戦うってんなら、ボクについて来い。但し、“星猫ほしねこ戦隊コスモレンジャー”に加わりてえんなら、【守護神】の加護を得られなきゃなんねえ。せいぜい、頑張ることだな。ニャハハハ!」

「星猫戦隊って……私も猫になるってことですか……?」

「おら、早速ミランダ呼んで、地底国“ニャガルタ”へ行くぞ!」


 質問を無視し、ゴマはミランダを呼ぶ。

 光の中から現れたミランダは、空中で8の字を描くように舞いながら飛田たちに忠告する。


「ウイルスに気をつけてね! 感染対策をとちゃんとしてね!」


 地面に、虹色に輝くワープゲートが出現した。

 何も分からぬままの飛田は、7色の光へと入ったゴマについて行く。



 再び訪れた、地底にある猫の国——“ニャガルタ”の首都“ニャンバラ”。


「はい、サイズ調整終わり。ここでも新型ウイルスが流行ってるから気をつけてね! じゃあね!」


 ミランダは言い残し、光となって消えて行った。


 ゴマと、猫サイズになった飛田は、“ニャンバラ”の街外れにある住宅街にいた。

 道行く猫たちはみんな、マスクを装着している。


優志まさし、マスクつけろ」


 小さなマスクを手渡される。ゴマもすぐに、黒いマスクを装着した。


「サイズが合わないですよ……」

「猫用だからな。まあ我慢しろ。さ、“星猫戦隊コスモレンジャー”の基地へ向かうぞ。こっちだ」


 住宅街を通り、鬱蒼と茂る森の小道に出た。

 緑に囲まれた砂利道が続き、十数分ほど歩いて行く。

 やがて、青々と茂る木々の上に、ドーム状の大きな屋根が見えてくる。


 森の中の開けた場所に到着すると、そこには外壁が銀色に塗装された、巨大なドームが建てられていた。

 

「ここが“星猫戦隊コスモレンジャー”の基地だ。中に入る前に、手ェ消毒しろ」


 自動ドアをくぐると、基地の正面玄関には消毒液が設置されていた。

 ゴマに倣い、手にしっかりと擦り込む。


 基地の玄関から先は、左右に階段があり、正面には狭い廊下が続く。

 廊下を歩いて行くゴマについて行くと、ゴマは突き当たりの扉を開いた。そこは、部屋の中央に丸テーブルがある会議室のような場所。ニャーニャーという猫の鳴き声が、飛田の耳に入る。


 見れば、テーブルの周りには服を着た猫が5匹、座っていた。座っているといっても、ゴマと同じく人間のように椅子に腰掛けている。そして全員が、白やら黄色やら赤やら紫やら水色やらの、マスクを装着している。


 5匹とも、ねずみの家で行われたパーティーと、ニャンバラで行われた祝賀会にいた猫たちであった。

 そして、そのうち1匹は——愛美がゴマと共に飼っている、【ムーン】という名の猫だ。ねずみの家でのパーティーで会話を交わした覚えがあるので、飛田はすぐに思い出した。


「【ソール】さん、戦える人間を連れてきたぜ。チップたちの家でのパーティーの時にいた、優志だ。実はコイツも、勇者だったんだぜ」


 ゴマが猫たちに飛田を紹介すると、額に菊の花のような模様のある白猫、【ソール】が白いマスクを外し立ち上がって、飛田の方を見た。


「人間の勇者さんかい? 僕は、星猫戦隊コスモレンジャーのリーダー、ソールだ! 役職は【騎士】だ。さあみんな、自己紹介してくれ!」


 順番に、猫たちがマスクを外し、名乗っていく。


「またお会いしましたね、優志さん。改めまして、星猫戦隊コスモレンジャーのサブリーダーの、【ムーン】です。役職は【魔導士】です」

「俺は【剣士】の【マーズ】だ。期待してるぞ、優志! よろしくな!」

「わ……私は【マーキュリー】! 役職は【忍者】です! き……緊張する……」

「ふん。私は【ヒーラー】の【ヴィーナス】。別にあんたに助けてもらおうなんて、思ってないから」


 星猫戦隊コスモレンジャーのリーダーである白猫♂の騎士、ソール。

 白黒猫♀の魔導士、ムーン。

 キジトラ猫♂の剣士、マーズ。

 サバトラ猫♀の忍者、マーキュリー。

 三毛猫♀のヒーラー、ヴィーナス。

 そして、白黒猫♂の“暁闇の勇者”、ゴマ。


「このかたたちが……猫さん戦隊……ですか」


 今後飛田は、この猫の戦士たちと共に“邪竜パン=デ=ミール”と戦うことになるというのだ。

 ゴマが、ムーンの方に前脚を伸ばしながら補足する。


「もう知ってるだろうが、ムーンさんはボクの母親だ。実の母じゃねえんだが……ま、母親みてえなもんだ。ちょっと心配性なところがあるが頼りになるぜ」

「そうでしたね。ゴマくんが勇者なのも驚きましたが、まさかムーンさんまでもが魔導士だなんて、びっくりです」


 星猫戦隊コスモレンジャーはこのメンバー以外にも、あと7匹のメンバーがいるらしい。

 ねずみの家の庭でゴマと話していた時に一緒にいた、関西弁で話す白猫の女の子——暁光ぎょうこうの勇者【スピカ】。

 ニャンバラの海岸で飛田と話したことのある、ずんぐりとしている体格の三毛猫、【ライム】。

 その他、この場にいないメンバーは現在、ニャガルタで感染状況の調査に出ており、ライムだけは基地の厨房でご飯を作っているらしい。


「猫さん戦隊の皆様、こんな私でもよろしければ、力になろうと思います。宜しくお願い致します」


 飛田が猫たちに向かい頭を下げた時だった。

 突然、キジトラ猫のマーズが立ち上がり、腰に付けていた剣をするりと抜いて飛田に向ける。


「優志! 俺たち星猫戦隊コスモレンジャーの仲間になりたいんなら、その力を俺たちに示してみろ!」

「……な!? どういうことですか!?」

「表に出ろってことだ。優志、この“たぎる熱情のソードマスター”、マーズ様と勝負だ!」


——


※ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


果たして、飛田さんは星猫戦隊コスモレンジャーの仲間入りが出来るのか⁉︎


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