12.種族を超えた、冒険仲間!
鎧を身につけた猫、魔法使いのような姿の猫——。個性豊かな猫たちが、虹色のワープゲートの前で待機している。
「どうした
「あ、ゴマくん。あの猫さんたち、みんなゴマくんの知り合いなんですか?」
「知り合いっつーか、一緒に戦った仲間……だな。そうだ、まだここにいるボクの仲間たちを優志に紹介してやる。まずはボクの家族からだ」
ゴマはピュウッと口笛を吹くと、何匹かの猫がゴマの方を見て手を振った。
「ゴマくん、君の家族は愛美さんから聞いてるから知ってますよ。ムーンさん、メルちゃん、じゅじゅちゃん、ユキちゃん、ポコくん、ルナくん……そして、ライムさん……ですね」
「何でボクの家族の名前みんな知ってんだ! お前、愛美姉ちゃんの知り合いなのか!」
「そうですよ。前に言ったじゃないですか、ゴマくん……。あれ、でも黒猫のポコくんがいないですね」
ゴマは顔を背ける。
「ポコは……ハハ、どこ行ったんだ、アイツ。ま、アイツは恥ずかしがり屋だからな」
「猫さんも、色んな性格の方がいるんですね」
服を着て談笑するゴマの家族を見ていると、やはり夢を見ているような不思議な感覚になる。
ゴマの家族のうちの1匹、白いワンピース姿のサビ柄猫は、ベビーカーらしきものを引いていた。
「あれ、子猫が3匹……? 新しく生まれた子ですか?」
「ああ、ポコとユキの間に生まれた子だ。ユキはボクと同世代なんだが、すっかり母ちゃんっぽくなりやがって……」
ワンピースを着たサビ柄猫の名は“ユキ”らしい。彼女が引くベビーカーの中には、スヤスヤ眠る3匹の子猫。
「ふふ、帰ったら愛美さんに報告しましょう。……あ、あそこにいる4匹の、剣や盾とか杖とかを持った猫さんたちも、ゴマくんの知り合いですか?」
騎士のような金ピカの鎧を身につけた、額に菊の花のような模様のある白猫。
真っ赤な鎧に、長い刀身の剣を腰につけたキジトラ猫。
忍び装束を身につけた、サバトラ猫。
全身を金色のローブに身を包んだ、三毛猫。
4匹は順番に、ワープゲートの中へと消えていく。
「アイツらこそ……ボクら
「その猫さんたちと一緒に、ニャガルタやねずみさんの世界を守るために戦ったんですね」
「そういうことだ。……お、チップたちがもう帰っちまうみたいだ。優志、見送りに行くぞ」
「あ、待ってください、ゴマくん!」
9匹のねずみの家族は、今まさにワープゲートに入ろうとしていたので、慌てて駆けつける。
「お、ナナ。今回は泣きべそかかねえんだな」
ゴマは、チップの妹のナナに声をかけた。
「だって、また会えるもん! ミランダさんがいるからね!」
「そうだねナッちゃん! また会えるんだ。嬉しいなー!」
チップも、笑顔のナナを見て嬉しそうに笑った。そして飛田たちの方に向き直り、両手を差し出す。
「ゴマくん! ルナ兄ちゃん! 僕らはずーーっと、1番の友達だよ!」
「チップお前、1番の友達はマサシじゃなかったのかよ」
ゴマの隣には、ゴマと同じ白黒模様の小柄な猫、“ルナ”がいた。
ルナは、「もう、兄ちゃんたら!」と言いながら、バシッとゴマの肩を叩く。ルナがゴマの弟であることを、飛田は愛美から聞かされている。
「あはは、1番がいくつあったっていいじゃないですか。難しく考えるのはやめて、楽しくいきましょうよ!」
飛田が笑いながら話に入ると、チップはこくりと頷いた。
「うん、そういう事!」
「どういう事だよ、全く」
ゴマは首を傾げながらも、チップと同じように両方の前脚を差し出す。
「ま、それならボクにとっちゃあお前らは……1番の冒険仲間さ!」
「わぁーい! 冒険仲間!」
「そうですね……。私も混ぜてください」
飛田は微笑みつつ、ゴマの右前脚とチップの左手をしっかりと握った。
「あたしもー!」
ナナも便乗して両手を差し出すと、ルナがそっとナナの手を取る。
「じゃあナッちゃんも一緒に、みんなで手つなご!」
「うん、ルナお兄ちゃん!」
ねずみの兄妹——チップ、ナナ。猫の兄弟——ゴマ、ルナ。そして飛田。それぞれの手が繋がれ、円になる。
今ここに、種族を超えた“1番の冒険仲間の絆”が、出来上がった——。
「じゃあねー! ありがとう! 猫さんたち!」
「またねー! 優志兄ちゃんも、元気でねー!」
9匹のねずみの家族は、太陽のように眩しい笑顔を見せながら、ワープゲートの中に入っていった。
飛田も、笑顔で手を振った。
ルナも片方の前脚を挙げて手を振る仕草をし、ゴマは腕組みするように胸の前で前脚を絡ませ「ニャハハ」と笑う。
また会う楽しみを胸に、9匹のねずみたちを見送った。
「優志くん、次はあなたの番よ。あなたの部屋に繋いだから、いつでも準備OKよ!」
「ありがとうございます、ミランダさん。……さあ、私もまた現実世界に戻って、元気に頑張りますよ。次会う時は、みんな一緒に冒険しましょう。ありがとうございます、ゴマくん、ルナくん。また会いましょう!」
右手を差し出すと、ルナがポフっと前脚を手に当ててくれた。
ゴマには、前脚で肩をボフッと叩かれる。
「ああ、約束だぞ優志。いつでも待ってるからな!」
「優志さん、また会いましょうね!」
ゴマとルナに軽くお辞儀をしてから、幸せいっぱいの気持ちでワープゲートの光の中に足を踏み入れる。
その時だった——。
『お前はダメだポン。幸せなんて、すぐに途切れるポン』
脳内に、またも謎の声が響き渡る。
(またです。一体何なんでしょう……?)
不審に思いながら、虹色の光の中で景色が変わるのを待つ飛田だった——。
————
※ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
またもふもふの国を訪れて、冒険するかも——?
猫さんやねずみさんたちと冒険することになるかも——?
謎の声の正体は——?
そして新型ウイルスは、今——?
続きをご期待下さると幸いです。
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