4.ねずみと猫のパーティー
猫とねずみが一緒になって開かれるパーティー。その準備が始まる。
たくさんの猫たちと、9匹のねずみの家族は協力しながら、料理を作ったり、材料の調達に出かけたりしている。
もちろん
彩り豊かな料理が置かれた庭の丸いテーブルを、猫とねずみと共に、囲んで座る。
「じゃあ手を合わせて」
ねずみのお父さんが言うと、みんな揃って手を合わせる。猫たちが前脚を合わせた時に、「ぽふっ」と可愛らしい音がした。
「いただきまーーす」
パーティーが始まった。
9匹のねずみの家族は、木の実のシチューや、山芋の味噌汁など、人間でも食べられる料理も熟知していた。そのため、飛田は安心して料理を口にする。
猫たちは、川魚の刺身を夢中で口に放り込んでいる。
「ふふふ……、何だか夢みたいですよ。ねずみさんだけじゃなく、猫さんともこうして話が出来るなんて」
「優志、楽しんでるか? いっぱい食ってけよ」
ゴマが口の周りに魚の肉片をつけたまま、話しかけてきた。
改めて、ゴマに尋ねてみる。
「ゴマくん、君が、愛美さんのところの猫なんですよね?」
「ん? そうだぜ」
「愛美さん、心配してましたよ。急に消えたって言ってましたから」
既にゴマの顔は、魚汁にまみれている。
「もぐもぐ……ああ、そうだな。気が向いたら帰るつもりだ……もぐもぐ、ああ、うめえ! ねずみの母ちゃん、おかわりだ!」
「でも、何でここに……?」
質問を重ねようとするが、ゴマはお皿を持ってどこかに行ってしまった。やっぱり猫らしく、気まぐれである。
入れ替わるように、ゴマと似た白黒模様の別の猫が、話しかけてきた。
「優志さん、何か困った事があったら、私どもに言って下さいね」
その猫も、見覚えがあった。
愛美が、ゴマと一緒に可愛がっていた【ムーン】という名の猫だったのである。愛美が飼っている猫の中で、最年長の子だ。
しかし目の前にいるのは、飛田よりやや背丈が小さく二足で立つムーンの姿。しかも、紫色のローブを着てとんがり帽子をかぶっており、まるで魔法使いのような出で立ちだ。
「……あなたは、ムーンさん……ですよね?」
「はい、私は【
「……星猫……戦隊……ですか? 望月の大魔道……? さっきから勇者だとか大魔道だとか……。この猫たちは一体……?」
飛田の頭の中は、クエスチョンマークだらけだ。
しかも——。
ざっと猫たちを見れば——ゴマ、ムーンだけでなく——稲村家のガレージで、愛美が可愛がっていた猫たち全ての姿があったのだ。
しかも、みんな二足で歩き、服を着て言葉を話している。
既読放置状態になっている愛美に、このことを報告しようと飛田は思った。
だが、今は手元にスマホがなく——というよりもそもそもこの世界で電波が届くわけもなく——連絡が取れない。
(いなちゃんも愛美さんも、まさか飼っている猫がみんな服着て喋っていただなんて知ったら、どんな顔するでしょうか……)
気付けば料理もほとんど無くなり、パーティーはひと段落ついたようだ。
「みんな、静かに!」
深緑色の、西洋の神官服のようなものを身につけたグレー柄の猫が席を立ち、口を開いた。
「いまさっき、【
話を終えたグレー柄の猫が手をポフポフと鳴らすと、ねずみたちの拍手と猫たちのポフポフが混ざり、庭に響いた。
(地底の猫族? ニャガルタ? ニャンバラ? まるで、地球空洞説でよく言われる伝説の地底世界、アガルタ、シャンバラのような地名ではないですか。まさか、地底奥深くには、猫の国があるというのか? そんな夢みたいな国、実在するというのでしょうか……?)
ここは、本当に現実なのだろうか。
本当に、おかしなことばかり起きている——。
飛田は拍手しながら、ボーッと考えていた。
「我々は太陽の祝福を受けし民なのだ。これから力を合わせて、素晴らしい世界を作っていこう!」
「おーーーー!!」
額に菊の花のような模様のある別の白猫が締めの言葉を言うと、再び大きな拍手とポフポフが巻き起こる。
猫とねずみのパーティーは、締めくくられたようだ。
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