第79話 リヴァイアの思い出―― この子供たちの生い立ちにくらべて、私の人生なんか。
バム君
5歳の男の子である。
私と同じく5年くらい前に、この『聖サクランボ』にやって来た……。
と言っても、実情はこの聖サクランボの玄関に、揺り籠の中に入ってスヤスヤと眠っていた……。
要するに、捨て子だったのだ。
――それは夏のある日。
その日は満月で、雲一つない夜空だったことを私ははっきり覚えている。
入口のチャイムが鳴った。
私はその日は宿直で、そのチャイムに気がついて目を覚ました。
私は玄関へと向かった。
時刻は丁度9時。
玄関に向かったらエスナータ修道士もいた。
「こんな時間に、誰なんでしょうね?」
私がエスターナ修道士に尋ねたら、
「……」
無言のままで固く表情が曇っていた。
「……?」
私がドアを開けて、キョロキョロと……。
下を見る。そしたら玄関のすぐ下の一段下がった地面のところに揺り籠があって、
「……??」
最初、私はよく分からなかったけれど、近づいて見ると……、中には赤ちゃんが入っていた!
「ああっ! 赤ちゃんですよ……。修道士! エスターナ修道士!!」
私は慌てた。
中に一切れのメモ用紙があって、拾って、私はそれに書かれていた文字を読んだ。
“男の子です。お願いします。”
これだけが書かれていた。
「?? 何これ? 何なのこれっ!」
私、動揺してしまって……。
「……」
その時、ゆっくりと歩いてきたエスナータ修道士が、私にただ一言、
「これも修道士の勤めですよ――」
――その後。
この捨て子の里親が決まった。バムという名前も決まった。
今、この子には『新しい』両親がいる。
……というよりも、『本当』の両親なのだと思う。この子にとってであるけれど。
だけど、バムは聖サクランボが実家だと信じている様子だ。
修道士見習いたち、聖サクランボの仲間たちを家族と思って日々生活しているのである。
ある時。
里親とエスナータ修道士が話をして、
「もうしばらくの間、聖サクランボで預かっていだだけませんか? 自分たちは月に数回会いに来るだけで、今はかまいませんから……」
エスナータ修道士は、里親からのその嘆願を承知する。
どうやら、バムをまだ自分の子供として受け入れる気持ちの整理がつかないらしい。
*
きーら きーら……
お空のほしーよ……
きーら きーら……
お空のほしーよ……
子供たちのお歌は、まだまだ続いてくれたのだった。
『人生なんて、思い通りにいかないのだから……』
この子供たちも、
大人たちも、
私も……。
みんな、みんな……。
自分の運命を――
「自分の人生を受け入れて、生きていくしか道なんてないんだからね」
私はお歌を披露してくれているフレカ、クアル、バム。
合唱する孤児たち全員に、私は小声で私の誕生日を祝ってくれたことへの感謝の気持ちと、
私から、この子達への応援メッセージを贈る。
――この子供たちの生い立ちにくらべて、私の人生なんか。
これから、
1000年の毒気の人生を生きていく――
私の……我の人生なんて、
我の命なんて……
結局、我にしか倒せない……ラスボス。
そして、真のラスボス――
続く
この物語はフィクションです。
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