新聞係、寺野綴縷のルポルタージュ

水白 建人

月刊2‐A 6月号「宇宙人は死んだ」 寺野 綴縷

 ひっしゃしょうがくねんせいななさいである。れきふかさでくらべてみると、ひっしゃまれるずっとまえからひとびとかたられてきたというかくにんせいめいたいには、とてもかなわない。かれらのあしあとは、かぜのうわさに、ざっ、アメリカのじょうほうかんじょうほう調しらべ、あつめ、ひろめるためのしき)にすられられているぐらいである。

 そのひとつが、さいきんになって、われわれらすしろあらわれた。このたび、しんぶんがかりてっていてき調しらべをおこない、いろんなほうめんちからりて、このなぞいどんだ。ほんが、そのすべてのろくである。


 はじまりは、ひっしゃのクラスメイトであるエーくんだった。

だよぜったい! あんなでっかくてわるいの、おれたことないもん」

 しんぶんがかりとしてひっしゃエーくんをしんじ、げんかったが、そのようなものはなかった。ところが、そのちゅうじんもくげきじょうほうえていき、エーくんのちがいだとかたけられなくなっていった。

 それからしょうげんをまとめ、まだたことがないひっしゃにも、ちゅうじんとくちょうがわかってきた。


もくげきされたかんまってゆうがた

《とてもおおきい》

かたちにんげんのよう》

りょううでげるようなポーズをしている》

くびがない》

《スカートのようなものをはいている》


 じょうもくげきしゃによる、かげうえでのしょうげんになる。ざんねんながら、だれも、じっさい姿すがたていない。カメラきのでんをみんながっているだいに、ちゅうじんつかるのをおそれ、まわりにちゅうしているようである。

 さらにもういっかいしょうげんにあったゆうがたねらって、ひっしゃげん調しらなおした。ちゅうじんにはえなかったが、おどろくことに、そのあしあとさつえいできた。アスファルトがはがれたみちあるいたらしく、ぜんじつあめでやわらかくなったつちのところに、はっきりのこっていたのである。

 にんげんのようなかたちではない。つちまず(あしうらのくぼみ)がせまく、ほんあるゆびさきまえくようにつちをややけずったかんじのあしあとである。ゆびまえほんそろっておらず、にんげんおやゆびたるいっぽんは、よこについている。しゃしんをよくさつえいするひっしゃですら、こうしたろくるのもるのもはじめてだった。

 インターネットや、しょしつにあったどうぶつかん使つかっても、しょうたいはわからなかった。ほかのふたりのしんぶんがかりもおげだった。こんなとき、このがっきゅうしんぶんねっしんどくしゃしょくんなら、しんぶんがかりいちどうつぎにどうするか、わかってしまうだろう。ひっしゃ調しらべたがかりをって、たよれるじょうきゅうせいとくめいねんせい。「とくめい」とは、まえみつにしているということ)にそうだんをした。とくめいねんせいすいしたことをいちこうかいしよう。


もくげきされたかんまってゆうがた》――はっけんおそれるなら、こうがいどころかがいゆうがたではなくよるあらわれるはず。ひとどおりがまったくないとはいえない、このしょ、このかんあらわれたもくてきがあるのはちがいない。


《とてもおおきい》――もくげきしゃちゅうじんとやらのゆうかく、これらのじょうけんがそろえばかげおおきくびてえる。だれも、じっさい姿すがたていないのなら、ほかのがかりでおおきさをもとめるべき。


かたちにんげんのよう》――これだけでは、にんげんかどうかはわからない。ちなみに、げんしゅうへんいっしゃせんくるますくなく、かかし(はたけによくあるにんぎょう)がられるにわきのいえおおい。


(ここでとくめいねんせいは、ひっしゃさつえいしたあしあとについてげんきゅうしていた)

 あしあと、とのことだが、ゆびさきゆびが、あまりにはなれている。おやゆびたるゆびさきのあとからかんがえても、これはあしあとではなくがた、それもにんげんではないか。

 まえくようにつちをややけずったかんじのあとは、ただてたのではなく、ほんゆびにぐっとちかられていたことでついたのだろう。グラウンドのつちてて、にぎるようにすればさいげんできるはず(ひっしゃためしたところ、とくめいねんせいのほぼうとおりになった)。それにしてもおおきく、どものしわざとはかんがえられない。


りょううでげるようなポーズをしている》――あしあとがただったとなると、このポーズはにんげんさかちをした姿すがたおもえる。かげであれば、りょううでげているかのようにえるはず。つちがただけをのこしているので、つんばいなどのたいせいではなく、やはりさかちだったのだろう。

 あしあとはなしもどるが、おおきさのわりにはばみじかえるのも、さかちならではのとくちょうである。


くびがない》――さかちをしているとすれば、くびがないようにえるしたは、かたむねではなく、はんしんとなる。おしりにものをせていれば、くびがあるようにえたことだろう。そうしなかったゆうだが、いまあるがかりではせつめいできない。


《スカートのようなものをはいている》――おそらく、ほんとうにスカートをはいていた。さかちをして、スカートがめくれても、かげそのものにおおきなかんまれない。


 あくまで、あしあとがたかんがえたらのはなしだったようだが、いていたしんぶんがかりいちどうはわっとはくしゅをしていた。ちゅうじんんだ。ひっしゃなぞけたぞと、あしかないぶんだった。そこがひっしゃと、とくめいねんせいとのちがいでもあった。

 あしあとにんげんのものなら、やったのはだれか。しょかんたいさかちにスカート。なぞけきっていないのである。

 だからなのか、とくめいねんせいは、いやいやだったとうしょとはひとわったようにになって、このなぞしんぶんがかりいっしょ調しらべてくれるようになった。ふつがかりのおおごとだった。とくめいねんせいのおねがいをいてくれたきょうとうせんせいたすけもあり、おおごとわったてんではもう、ほとんどなぞあきらかになっていたといっていい。

 しんぶんがかりとくめいねんせいは、きょうとうせんせいにあるものをせてもらった。きょねんがくしゅうはっぴょうかいだまだった、おおきなモザイクアートのポスターである(このりて、きょうとうせんせいにもういちかんしゃもうげます)。どくしゃしょくんおぼえているだろうか。いろんなかたにつけて、どうせんせい、みんなでぺたぺたとえがいた、あののことを。

 とくめいねんせいはあのて、ひっしゃしゃしんらせ、それからちゅうじんもどきのしょうたいしんぶんがかりおしえてくれた。おおきなモザイクアートのポスターをきっかけに、とくめいねんせいはこのなぞをあっさりいてしまったのである。

 わりに、とくめいねんせいきょうりょくによってとあるろくおんされた、とくめいねんせいちゅうじんもどきのやりとりをこして、ほんをしめくくるとする。なお、ちゅうじんもどきのしょうたいったひっしゃだが、いまでも、なぞはまだのこっているとおもえてならない。しんそうやみなかである。


 ――○○せんせいほうふんだけっておねがい、いてくれてありがとうございます。せんせいのこと、おどろかせたくって。

 カーテンめるね。じゃあスクリーンをて。このりょう3Dスリーディーデータもボクがつくったんだ。すごいでしょ? なんだとおもう? これね、せんせいあしあと

 ――おいおい××、せんせいあしはこんなかたちじゃないぞ?

 ――うん、わかってる。あしあとじゃなくてがただよね。え? ちがわないよ。だってこれ、きょねん、○○せんせいがモザイクアートにつけたがたとおんなじおおきさなんだ。

 こっちの、つちについたがたふかさをて。せんせいみたいにがっちりしてておもたくないと、ここまでくっきりとはのこらない。シミュレーションではじいたら、九十二きゅうじゅうにパーセントぐらいのいっりつだったかなー。がたがついたとうじつ湿しつつちのやわらかさ、それと○○せんせいたいじゅうこまかいぶんのサイズはあくまですいていだけど。

 ――××。せんせいをからかうのはやめなさい。おまえのかしこさはもっといいことに使つかうべきだ。

 ――いいことってどんなこと? クラブかつどうえてこうしてるどうつからないしょで、スカートをはいて、さかちであるきながらどうかんさつするようなこと?

すうびょうほど、おんせいみだれていてこせなかった)

 ――いや、まったく。せんせいおどろいたよ。××があんなげんじつてきすぎることうもんだから。はは。

 ――ボクもへんなことだっておもうよ。

 ――だよな。うん、へんなことだ。けしからん。

 ――でもやったんだよね。あのげんとおってこうするどうがこのがっこうの、それもしょうすうのグループなの、せんせいはわかってるもん。

 たとえば、はんのうたいだけならどこでもいいはずなんだ。でも、ちゅうじんとやらのかげはあのつうがくでしかもくげきされなかった。どうげんとおるタイミングをせいかくあくできて、みじかかんあんぜんにことをすませられるからだよね。かげしかられてないのも、インターネットじょうでうわさになってないのも、それがゆうかな。

 ――いいげんにしなさい! さ、せんせいおどろかせてまんぞくしただろう。カーテンはもどしておくから、もうりょうかえりなさい。

 ――わないやくそくとかしなくていいの?

 ――どうしてそんなことを。せんせいがやったっていうしょうもなにもないじゃないか。

 ――けっていてきなものはたしかにないね。○○せんせいがいっぱいじょそうして、おんなじしゅひとたちといっぱいあそんだしゃしんSNSエスエヌエスうらアカウントにアップロードしてることだって、スカートとむすびつくかもしれないだけのはなしだもんね。

 ――××!? おまえ、どうしてそのことを!?

 ――オープンソースのけんさくようAIエーアイをボクなりにいじったら、まあまあ調しらべやすかったの。じゃあさようならせんせい、ボクかえるね。

 ――ってくれ××! せんせいが、せんせいがどうかしていた。このことはふたりのみつにしよう。

 ――もうしない? あのつうがくで、スカートをはいて、さかちであるいたりしないってやくそくする?

 ――もちろんだ。だから××も、このことはだれにもわないでおいてくれるな?

 ――うん、いいよ。だれにもわないし、かれてもこたえないようにするね。

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