恋のキューピッドに、私はなる!

 桜のことが好きだって気づいたのは、小学生の頃。

 当時私はクラスのリーダー格の女子とケンカしたのをきっかけに、皆からハブられていたけど、桜だけは違った。


 有馬とはクラスが違っていたから、教室で私に声をかけてくるのは桜だけ。

 でも私と一緒にいたら、桜までハブられちゃうかも。

 けど心配する私に、桜はニコっと笑った。


「良いの。皆からハブられるよりも、莉子ちゃんとお話しできない方が寂しいもの」


 その笑顔はまるでお日様みたいで、気がつけば抱き締めちゃってたっけ。

 そしてその時、初めて自覚したの。桜のことが好きだって。


 女子同士なのに、おかしい? ううん、そんなことはない。

 たまたま好きになったのが、女子だってだけだもの。


 だけどこの気持ちを、桜が受け入れてくれるとは限らない。それに有馬だって桜の事が好きだって、気づいていたから。

 今の関係を壊したくなかった私は、この気持ちを胸にしまうことにした。

 告白できなくても桜が側にいてくれたら、それで十分だもの。


 だけどその桜から有馬のことが好きだって相談されて、腹をくくった。

 二人は両想いなんだから、それを応援するのは親友である私の務め。キューピッドになるって決めたのだ。


 私の恋はどうするのって? そんなのどうでも良い。二人が想い合っている以上、割って入る隙なんて無いものね。


 そうして私は桜のことを応援し、桜もたくさん頑張った。

 休みの日、三人で遊ぶ時はお洒落して可愛さをアピール。時には二人きりにしてあげたこともあった。


 二人が両想いだって知ってはいたけど、決して急かさず。ちゃんと自信を持って告白できるよう、桜に力を貸し続けた。


 そしてその甲斐あって、夏休みに入る直前。

 桜は勇気を出して有馬に告白。二人は晴れて、付き合う事になった。


「莉子ちゃーん、やったよー!」

「よしよし、よく頑張ったね」

「莉子ちゃんが応援してくれたおかげだよ。本当にありがとう!」


 暑いのも気にせず私に抱きつきながら、満面の笑みを浮かべる桜。

 一緒に報告に来た有馬もポーカーフェイスを装ってはいたけど、その顔からは嬉しさが滲み出ていた。


 やっぱり、私のしたことは間違っていなかった。

 二人がくっついてくれて、とても嬉しい。


 だからチクリとした胸の痛みは、きっと気のせい。そう思うことにした。


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