恋愛警報発令中!

「莉子ちゃん。あたし、有馬君の事が好き」


 顔を真っ赤にしながら告げてきた桜に、私は目を丸くする。


 ま、待って。まずは状況を理解させて。

 放課後、思い詰めた表情の桜に「相談したいことがあるの」って言われて。誰かに聞かれないよう体育館裏に場所を移して話を聞いたけど、そこでさっきの言葉を言われたのだ。


 桜が有馬を好き?

 実は、そうじゃないかとは思っていた。


 有馬のことを格好いいって言ってる女子は多いし、面倒見も良いから、好きになるのは分かるよ。

 けどこうやって打ち明けられたら、やっぱり驚いてしまう。


「桜が有馬をねえ」

「や、やっぱり変かな。あたしなんかが、有馬君を好きだなんて」

「変なんかじゃないって。桜と有馬、お似合いだと思うよ。それで、やっぱり告白するの?」

「それは……したいけど、もしもフラれたらって思うと怖くて。と言うか、絶対フラれるよ」


 相談してきたものの、ずいぶんネガティブなご様子。桜は昔から、自己評価低いからねえ。


「あたしも莉子ちゃんみたいに、背が高くて美人だったら良かったのに」

「何言ってるの、桜は十分可愛いでしょ」


 背はちょっと低いけど、そこもまた可愛らしい。


 だけどフォローしつつも、内心この恋を応援していいのか迷っていた。


 どうして迷うのかと言うと、答えは簡単。

 だって幼馴染みに恋をしているのは、桜だけじゃなかったから。


 桜が有馬のことを好きになったのと同じで、私も実はずっと前から恋をしていた。

 そして桜の恋が叶うと言うのは、同時に私の恋が叶わない事を意味していたのだ。


 自分の恋を諦めて、桜の事を応援するべき?

 私は、どうしたら良いんだろう……。 


「莉子ちゃん?」


 黙ってしまった私を、桜が不思議そうに覗き込んでくる。

 …………よし、決めた。


「安心して。桜の恋は絶対に上手くいく。私が保証する!」

「で、でもあたし頭悪いし、ちんちくりんだし」

「桜の良い所は、そんな所じゃないでしょ。もっと自信を持つの! 私の親友がダメなはずないもの!」

「莉子ちゃん……ありがとう。あたし、頑張ってみるよ!」


 さっきまでしょんぼりしていたのが嘘みたいに、パアッと笑顔になる。


「そうと決まれば早速、どう告白するか考えないと。有馬は人気あるから、モタモタしてたら誰かに取られちゃうよ」

「それはヤダ! けど、告白ってどうすれば良いのか分からないよー」

「それを今から考えるの。大丈夫、桜なら絶対、大丈夫だから」


 桜は不安そうにしているけど、私は大丈夫と言う確信があった。

 だって実は有馬も、桜のことが好きなのだから。


 本人から直接聞いたわけじゃないけど、ずっと近くにいるんだもの。何となく分かってた。

 って。


 私達は、小さい頃から仲の良い幼馴染み。

 だけど桜は有馬に、有馬は桜に。そして私は桜に、ずっと恋をしていたのだ。


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